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コツコツ。


俺はコンビニで適当にお菓子を物色していた。

今日はずっと楽しみにしていたゲームの発売日。

そんなハッピーな日はお菓子も買い込んでダブルでハッピーになるのだ。

「ん?」

俺はふと目に付いたチョコレートをじっと眺める。

「これ、守屋が言ってた新作のやつか?」

守屋と言うのはクラスメイトの守屋麗奈のことだ。

席替えで近くの席になったのと、お互いお菓子が好きってことで最近よく話すようになった。


そんな守屋が、少し前の休み時間に新作のなんとかチョコっていうのが食べたい〜って言ってた気がする。

俺はそのチョコを迷わずカゴに入れると、レジへと向かった。

べ、別に守屋のためってわけじゃないんだからね!ふん!


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心の中でツンデレヒロインごっこをしながら家路についた俺は、早速ゲームの封を開けてプレイを始める。





そして…



「今日はこんなもんか。」


キリのいい所まで進めた俺はお菓子をボリボリ食べながら、買ってきたチョコに目をやった。


「…しゃーねぇ。明日守屋にやるか。」


チョコをスクールバッグに入れた俺は、風呂に沈むのであった。





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次の日


朝からやけに騒がしい気がするが、俺は普段通り着席する。


「おっはよ〜!○○くん!」


元気な声と共に守屋が席に着く。


「おっす守屋。気のせいかもしれんがなんか騒がしくないか?」


俺はさっきからの違和感を守屋にぶつけてみる。


「え?さ、さぁ。麗奈わかんなーい。」



「なんだそれ…」



何か誤魔化された気がするが、言ってくれないもんはしょうがない。



あ、そういえば、守屋に渡す物があった。



「そうだ、これ守屋にあげる。」



俺は昨日買ったチョコを守屋の机に置く。



「!?」


何故か守屋は驚いた顔をしている。



「前に言ってたやつこれだろ?」



俺は気のせいかと思い、続ける。


「こ、こ、これってもしかして逆…」



「は?」


「ご、ごめんなさい〜!!!」


耳まで真っ赤になりながら教室の外に走って出ていってしまった。



「え?え?俺なんかした?」


すると、守屋の親友である大園玲が俺の方にゆっくり近付いてきて



「…○○くん、グッジョブ。でもこんな人が多い教室でやるなんて大胆だね。」


と、肩にポンと手をやる。


「…なぁ、大園よ。俺まじでわかんないんだけど今日なんかあんの…?」



俺は半ばイライラしながら大園に問い掛ける。


「…うん、だろうなとは思ったけど。こりゃ麗奈も大変だなー。」



「えぇ…質問の答えは…?」



欲しかった答えはなかったが、何故か大園は笑っていた。



「そんなことより○○くん、麗奈のこと追いかけなくていいの?」



「は?」



「もうホームルーム始まっちゃうよ。先生には私が上手く言っとくからさ。追いかけてあげて。」



大園は有無も言わせずに誘導してくる。



「わ、わかったよ。」



「多分、屋上に行ったと思う。じゃあ頑張ってね〜」



なんのこっちゃわからん俺は、笑っている大園の言う通りに屋上へと向かった。




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屋上の扉を開けると守屋がしゃがみこんでいた。



「や、やあ。」



「あ、○○くん…」



とりあえず俺は明るく振る舞う。



「なんか、ごめんな。俺なんかしちゃったみたいで。」



「ううん、麗奈も悪かった。ビックリしちゃって。」



その後は少しの沈黙が流れ。



「○○くん。」



「ん?なんだ?」



「今日の放課後さ、麗奈に時間くれない?」



守屋は目を合わせてくれない。



「わかった。俺も仲直りしたいし。」



「ありがとう。大丈夫だよ、麗奈がちゃんと言うから。」



最後に守屋はこっちを向いて笑ってくれた。


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放課後…



俺は守屋に指定され、再び屋上へと足を運んでいた。


「来たぞー。」



すると、守屋と大園が2人で何かを話していた。


しかし、大園は守屋の背中をバシっと叩くと


「○○くん、じゃねー。」



と、屋上から出て行ってしまった。


俺が状況を把握できないでいると、守屋が近づいてきた。



「えっと、来てくれてありがとう。」


「う、うん。」



「今日、何の日かわかる?」


「えっと…」


俺が答えに詰まっていると、守屋は「あはは」と笑いながら。


「だよね〜、○○くんそういうの興味無さそうだもん。」


「う、うん?」


「はい!」


守屋は俺に何かを差し出す。


「今日はね、バレンタインだよ!」



「………」



「ねぇ〜!何か言ってよ〜!」



「…いや、女の子から初めて貰ったからどうリアクション取ればいいかわかんなくて。」



「一生懸命作ったの!受け取ってくれる?」



守屋は満面の笑みで俺の言葉を待つ。



「…ああ、もちろん!」


「あとはね…」



守屋は何かを言いたそうだ。


「いつも廊下のゴミを拾ってる所とか、皆のお願いを嫌な顔ひとつしないで引き受ける○○くんを見ててね、こんなにコツコツ頑張ってる人がいるんだ〜って思ってね、えっと、それで、そんな○○くんのことがね…」


流石の俺でも何を言いたいかは大体わかった。


それでも、もし違うことを言おうとしていたら?と思うと、俺もあと一歩が踏み出せない。



だとしても。


こうやって勇気を出して俺に伝えようとしてくれている。



「守屋、ごめんな。俺ホントにバカだから、これから先、傷つけてしまうこともあるかもしれない。でも、俺、守屋のことが…」


俺が、自分の言葉を紡いでいる途中で守屋は俺に抱きついてきた。



「お、おい!」


守屋は顔を真っ赤にしていた。



女の子特有のいい匂いが鼻をくすぐる。


「ねぇ、続きはせーので一緒に言おうよ!」



「…あぁ。」


「行くよ?」






『せーの!』










例えば、これから先の君の人生。







俺が居ても居なくても、変わらず廻り続けて行くんだろう。



でも、それでも。





何も気付かない馬鹿な俺だけど。





君と巡り会えた世界を。







2人だけの世界を築いていけたらいいな。

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