無口なライオン。 #2
聖来「頼もう〜!」
さくら「ちょっと!道場破りじゃないんだから…」
?『ハァ?』
部室に入るとめちゃくちゃ背の高い先生がこっちを向いて近付いてきた。
?『自分ら誰や。』
聖来「今日の部活発表会で演劇部に興味があったので来ました!早川聖来と言います!オナシャス!」
?『入部希望者?ホンマか?』
聖来「ほんまです!」
?「というか自分、関西出身か?」
聖来「はい!しかし今日からはバリバリの東京人です!」
?「ふーん。俺は演劇部顧問の小藪や。まぁ、顧問でおるのももう少しやろけどな。」
聖来「それも聞きましたよ!でももう安心してください!この黄金ルーキーが演劇部を救ってみせます!」
小藪「黄金ルーキーか決めるのはお前じゃないやろ。で?その後ろのお嬢ちゃんも入部希望か?」
小藪先生がいきなり私の方を向いて尋ねてきた。
さくら「え…え〜っと…私はその…見学っていうか…聖来ちゃんに着いてきただけっていうか…」
小藪「声ちっちゃいな。もっと腹から声出さんかい。」
さくら「す、すいません…遠藤さくらです…よろしくお願いします…。」
聖来「ところで、今日歌ってた生田部長は?」
小藪「生田ならまだ来てへんな。そろそろ来るとは思うけど。」
聖来「そうなんですか。ていうか私たちしかいませんね、新入生。」
小藪「そらそうやろ。知ってるとは思うけどウチは運動部に力入れとる学校やからな。わざわざ演劇部になんて入るやつはおらんやろ。」
さくら「そうなんですか?」
小藪「文化部っつっても結局吹奏楽部とかに流れるしな。というか運動部以外の生徒はだいたい帰宅部や。」
聖来「えー、勿体ないですね。あんなに素敵な歌声の部長がいるのに。」
小藪「まぁ、生田は天才やからな。」
先生と話をしていると、突然部室のドアが大きな音を立てて開いた。
絵梨花「遅くなりました!違うんです聞いてください!飛鳥とね!いちごミルクの話してたらね!こんな時間に!あれ?」
生田先輩だ。めっちゃ可愛いけどめっちゃ喋ってる。
小藪「おい生田、部室のドアはもっと静かに開けろって言うてるやろ。何回業者呼んだと思ってんねん。まぁええわ、とりあえず座れ。」
絵梨花「えぇ〜!入部希望者が2人も!?イヤッフゥ〜〜!!!」
生田先輩は、おしとやかなステージの印象とは程遠い、ハイテンションな人だった。
小藪「いやまだ正式には入ってへんからな。あと、廃部を免れたいんやったら最低でも5人はいるぞ。」
絵梨花「ですよね〜…でも、一人でも来てくれたら嬉しいなぁって思ってたから二人も来てくれたのに感動しちゃって!」
小藪「まぁ、俺は正直一人も来んって思ってたからビビってるわ。とんだ暇人もおったもんやで。」
聖来「まぁまぁ、さくちゃんはともかく私はもう入部する気満々ですから安心してください。まずは部員集めからですよね?」
小藪「なんや遠藤は入らへんのか?」
さくら「う、う〜ん。来たのはいいんですけど私、人前に立つとか苦手で…」
小藪「なんやそんな理由かいな。それやったら何とかなるから安心せい。それ以外の理由が無いなら入部しなさい。以上、あざした。」
さくら「え〜…」
聖来「いいじゃん。別に入りたい部もなかったんでしょ?最悪裏方とかでもいいじゃん。」
さくら「そ、そうだね。じゃあ入部します。」
ほとんどその場のノリだったが入部することになってしまった。
まぁでも小藪先生も口調は厳しいけど悪い人ではなさそうだし、聖来ちゃんもいるし、生田先輩は可愛いし、いいかな。
絵梨花「それじゃあ、早速部員集め行くど〜ん!」
生田先輩が大きな声で号令を掛けた。
なんだか賑やかで楽しそうな部活だった。
聖来「で、部員集めって言ったって具体的には何をするんです?」
絵梨花「え、う〜ん…路上ライブ?」
小藪「何を言うてんねん。バンドちゃうねんぞ。」
さくら「他の部の人を拉致るとか?」
小藪「他の部から引き抜くのは最後の手段や。とりあえず何処にも属してない新入生を狙わんかい。」
聖来「となると、チラシ配りとかですかね?今から作って印刷しても間に合いますかね?」
小藪「印刷は俺がやったるけど作るのは誰がやるんや?言っとくけど文字書いてるだけじゃインパクトないし簡単なイラストでも載せんと無理やぞ?」
絵梨花「今流行りのアニメキャラをコピペする!」
小藪「アホか、こういうのんにもちゃんと著作権っちゅうのは適用されんねん。キャラ使うにしても誰かが模写せんとあかんぞ。」
全員がう〜ん…と頭を悩ませていると…
さくら「かっきー!」
突然頭に出てきた名前に私は思わず叫んでいた。
絵梨花「わっ!びっくりした!なになに?」
さくら「私の親友にすっごく絵が上手い子がいて、その子に頼むんです!多分まだ学校にいるはずなんで探してきます!」
そう言うと私は部室の扉を勢いよく開けると走り出していた。
小藪「おい遠藤!ドアはもっとデリケートに扱わんかい!」
小藪先生の怒号なんて気にならないくらい、私は夢中になって駆け出した。
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遥香「失礼しましたー。」
一方その頃遥香は美術部の部室を出てため息をついていた。
遥香「なんか思ってたのと違うなー…」
もっと真剣にデッサンとかやってるのかと思ったら、部員達で駄弁ってワイワイしているだけだった。
一応、コンクールなどに提出する絵は描いているらしいが、基本的には部室で喋っているだけと先輩達は言っていた。
遥香「んー…楽しそうではあったんだけど…」
とりあえず今日はもう帰ろうと思った矢先のことだった
さくら「あ!いた!かっきー!」
遥香「あれ?さくちゃん。どうしたの?そんなに慌てて。」
さくら「お願い!演劇部を助けて!」
遥香「演劇部?」
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