飛行機の中で読んだ本の感想

シドニーを往復する長い長い飛行機の旅の中で読んだ本の感想と主観的な点(1~5)を書いておく。

カズオ・イシグロ「わたしたちが孤児だったころ」:4
さすがノーベル賞作家というか、淡々としながらも一気に話が盛り上がって、夢中になって読めます。毎回思うけど、この人の作品は主題が何なのか読んでいる間はさっぱりよく分からなくて、読み終わってからああこれはこういう話だったんだなと分かるようになっているみたいです。「日の名残り」「わたしを離さないで」は、本を持っている手が震えるほど感動したのだけど、今回はそれほどでもなかったかな。あれだけ色々とイベントがあるわりに、話の終わりがずいぶんあっさりしていて拍子抜けしたせいかもしれないです。

奥田英朗「町長選挙 ドクター伊良部」:3
安定のギャグ小説です。まるで土曜日夜8時くらいにやっているエンターテイメント番組を見ているかのような安心のユーモア小説でハズレがないです。この人の作品はたまにやりすぎてしまい、下品というか、ちょっと引いちゃう話もあるのですが、ドクター伊良部シリーズはそんなこともなく誰でも楽しめそうです。しかしシリーズも3作目になるとだんだんパターン化してきてネタが尽きてきた感じが否めないのも事実。この人のユーモア作品では「向田理髪店」なんかが好きです。

辻村深月「傲慢と善良」:2
作者のことも内容も全く知らずになんとなくぽちっと買ってしまった本。読んでみたら婚活に関わる男女の心の機微というのがテーマでした。みなさん繊細なんですね。そんな微妙な心の動きを描き切った名作というか、きっと婚活をされている方が読んだら深く感じ入るものがあるんじゃないかなと思います。ぼくはズボラなせいか、そこまで人間の心の機微に詳しくならなくてもいいやと思ってしまいましたが。

高瀬志保「二月の勝者」:5
マンガです。ぼくは中学受験をしたことがないので、「これ、火星の話ですか?」とか思いながら読みました。しかし、中学受験ってスポーツみたいですね。この漫画も勉強の漫画というより、スラムダンクを読んでいるみたいな気になります。登場する生徒が御三家に挑戦するシーンなんか桜木君がジャンプ・シュートをしているのを見ているような感動があります。登場する子供はみんなスーパーマンみたいですね。ぼくには中一・小五の娘がいるけど、こりゃ日本に住んでなくてラッキーだったのかな?と思いました。だってこんな戦いについていけるわけがないものね。

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