テロ 汚された時間

あらすじ    

都心の超高層ビルにおいて、大量殺戮に使われるの化学兵器で、ビル内にいた数千人の命は、一瞬のうちに犠牲になる。

犠牲者の中に主人公の恋人がいた。
この事件は、単なるテロ事件ではなかった。
某国と国会議員が深く関わった事件だった。
事件の真相が徐々に明らかにされていくが、関係者は次々と何者かに消されていく。

事件に隠された事実、とその影に見え隠れする大物政治家の影。
そして、大物政治家を失脚させようとする謎の組織。
事件解明に繋がる有力な情報源が入ったSDカード。
主人公は決定的な証拠をつかみ暴露するか悩む。
主人公は何度も命を狙われ、事の重大さに気づくが一人では何もできない。
そして謎の組織との接触をはかり、復讐の鬼となる。。

事件の真相は長引いていた。
事件のことをうやむやにしていこうとする圧力が国会議員全体に及んでいく

ある会合の日をきっかけに、関係者一同を皆殺しをする決行日と決める。
決行日、関係者一同を抹殺するが、主人公は瀕死の重傷を負う。しかし仲間に助けられ、逃亡する主人公。
主犯格として指名手配される。

この事件の後、テロの首謀者は主人公ということで事件の幕引きをしようとする人物。

テロ 汚された時間 登場人物

主人公    壬生   三十五歳
主人公の恋人 さとみ  二十五歳

大物代議士  志田   六十八歳
代議士秘書  志田秘書 六十四歳
志田の子分  金田   四十歳

謎の組織リーダー 越智 五十歳
謎の組織の関係者 小男

新聞記者     新聞記者  三十三歳

主人公の先輩議員 山田ともじ 三十八歳

OL       智子    二十八歳
         翔子    二十二歳
 
皮靴の男   トウメイヨウ  三十歳


テロ 汚された時間 

深夜の日本海
日本海側の深夜の商店街
静まり返った港町、閉じられたシャッター。
風でのぼりが揺れている。
火の点いたままのタバコが落ちる。
重そうな革靴でタバコをもみ消す。
ぐいぐいと踏みつける。
無残なタバコの残骸。

深夜の日本海
真っ暗な海
浜辺では、潮の満ち引き。
最初は静かな波、徐々に大きくなる。
暗闇の中でおぼろげに光が見える。
その光は動いている。
そして陸に向かって光が点滅する。
霧のまにまに見える、船体。
船はゆっくりと航行している。
陸では、光の信号が点滅している。
船のサーチライトが点滅している。
船は光の方角に向かう。
島影に隠れる。

下船する不審集団
船から浅瀬に降りて、砂浜を歩く集団。
用意されてあったトラックに乗り込む。
砂浜の足跡は消されている。

都市の風景
朝の通勤電車の中。
満員電車の中で我慢している人の顔。
カーブにさしかかり、車体は大きく揺れ、人々は倒れそうになる。
しかし手すりに必死にしがみつく人。
倒れてくる人の波に必死に耐える会社員。
対向列車がすれ違う。

新宿駅ホーム
満員電車から乗客がわんさか降りてくる。
駅員「新宿、新宿、足元にお気をつけて下り
てください。下りる人が先となっており
ますので、ドアの前を広く開けてお待ち
ください」
ホームは人であふれている。
線路に落ちている新聞紙。
見出しには期待する有望議員と題して、壬生が取り上げられている。
電車が通過して、新聞紙が裂かれる。

渋谷駅前(上から見た風景)
人々が横断歩道をぶつかりそうになりながら歩いている。

大型電子時計
8時を指している。

高層ビル
大勢の人がビルに吸い込まれていく。
朝日に照らされ輝いている高層ビル。

高層ビル内 
受付嬢が忙しく案内をしている。
受付嬢のさとみの顔。笑顔を絶やさない。

朝のオフィス エレベータ前
すでに重量オーバーの満員エレベータ。
滑り込むように、小走りで閉まりかけのエレベータに乗り込む翔子。(にんまり笑う)

朝のオフィス 
オフィスでは、電話があちこちで鳴っている。
パソコンに向かう人。
電話中の話す人。
会議をしている人達。
上司に怒られている人。

朝のオフィス 台所
タバコを吸っている翔子。
お茶が沸いている。

オフィスの時計
10時30分を指している。

小学生の社会科見学
小学生の集団が遠足の格好でビルに入る。
皆口々に「大きい」「すごい」とか言っている。

受付嬢 さとみの案内
1階ロビー受付前の小学生の集団
さとみ「このビルは地上800メートルのル
平成18年3月に建てられました。あら
ゆる災害、例えば地震とか火災に強いシ
ステムとなっております。ですから安心
してお仕事ができます。このビルのエレ
ベータは世界一を誇っています。その理
由は、例えば10円玉を立てて1階から
70階までの3分の間倒れません。それ
だけ安定しているということですね。皆
さんも是非70階に行かれまして、ご自
分のおうちを探してみてください。今日
はよく晴れていますのでもしかしたら富
士山が見えるかも知れません。どうぞ楽
しんでいってくださいね・・」

不審者達 1(高層ビル前)
1台のワゴン車がビルの前に止まる
車から数人の男女が下りてくる。
2人はスーツ姿でスーツケースを持っている。
2人はOL風の格好。
3人は作業着を着ている。手には道具箱を持っている。
分かれるようにビルの中に入っていく。

不審者達 2(高層ビル中)
スーツ姿の2人はビルに入り、警備員の数をチェックしている。
OL風はエスカレータに乗り、周りの様子を伺っている。そして携帯を取り出し、誰かに電話している。(中国語)

不審者達 (ワゴン車)1
男が電話で話している。何かを指示しているようだ。
パソコンの画面にはビルの地図。
地図上に配置した部下の光の位置が点滅している。
タバコの煙がパソコンに吹き付けられる。

不審者達(地下室)1
3人の作業員風はビルの裏手に行く。
マンフォールを空け、マンフォールに囲いをする。
2人がマンフォールに侵入する。
はしごを下りる。
懐中電灯で図面を見る。
マンフォールの中を歩く。(ボイラー音) 薄明かりが見える。

不審者達(暴行)
点検している設備員。
背後から忍び寄り、鈍器で殴り気絶させる。
図面を広げ携帯を取り出し話す。

不審者達(ワゴン車)パソコンの画面
ビルの地下の図面に点滅する部下の光の点滅。

不審者達(地下室)通路移動
移動しながら目的地を確認する不審者。

不審者達(ワゴン車)
赤く点滅する位置と青く点滅する位置。
赤い点滅に近づく青い点滅。
赤と青が一緒に重なる。

不審者達(地下室)3
袋からガスマスクを取り出す。
2人はガスマスクをする。
はしごを立て、1人は上に登り、空調ダクトのフタを開ける。

ごみ焼却場
壊れて捨てられている年代物の柱時計。
無造作に作業員によって、ベルトコンベアに乗せられる。
かすかに秒針が動いている。
粉砕機に砕かれ粉々になる柱時計。

不審者達(地下室)殺人缶
ゴーという送風音。
袋から缶を取り出し缶を開け、送風管に投げ入れる。同じように2個投げ入れる。
ころころと吸い込まれるように消えていく。
パイプのフタを閉める。

からくり時計
はと時計の針は11時を指している。

不審者達(ワゴン車)
パソコン画面の青い点滅が赤から離れていく。

高層ビル近くの公園
のどかそのもの公園。
ベンチで寝ている浮浪者。
鳩にえさをあげている人。

不審者達(高層ビル内の中央ロビー)
サラリーマン風不審者2人。

不審者達(高層ビル内の憩いスペース)
不審者OL風2人の携帯電話が鳴る。
出口に早歩きで向かう。

不審者達(逃走)
ワゴン車に乗り込む不審者達。
車は一気に走り出す。

高層ビル内(休憩所)
大きな観葉植物。
葉の上に小さな白い粉が舞い降りる。

オフィス給湯室(女子社員の会話) 
智子「ねえー今度の連休どうする?」
翔子「もう予約したから・・・」
智子「ちょっと何それー」
翔子「カレシとー沖縄行くんだー」
智子「ちょっと約束忘れたのー温泉行こうっ
て言ってたじゃん」
翔子「あれ?そうだっけ?」
智子「白々しいわね。この子はー信じらんな
い!!」
翔子「まあまあお局様、今度おいしいスウィ
ーツの店ご招待しますから・・・・」
智子「どこどこどこ」
翔子「お楽しみは後で・・・・(咳)ごほっ
ごほっ」
智子「まあそのくらいは当然よね・・・」
翔子の調子がおかしい。咳きが止まらない。
翔子が心配になる智子。
智子「ねえ大丈夫?何むせてんのよー」
翔子咳が止まらず、その場にうずくまる。
天井から白い粉が降ってくる。
智子は(上を見上げ)「なにこれ?」
智子も咳が止まらなくなる。
流しで嘔吐する智子。
苦しくてのどをかきむしり、水を飲もうとする。しかし咳はおさまらない。
智子は、長い髪の毛をつかむと毛根ごと、ごっそり抜けてしまう。
それを見た智子は叫ぶ(キャー気絶)

オフィス内 地獄 1
咳をあちこちでしている。
排気口から、白い粉が舞い落ちる。
逃げようと出入り口に殺到する。
しかし皆、断末魔を叫ぶと力尽き息絶える。
重なるように死んでいく人々。
外に出ようと窓を叩く女。

高層ビル外 窓拭き掃除人
ゴンドラに乗り外窓を洗っている。
何かを訴えかけるようにもがき苦しむ女。
掃除人の目が点になって、持っていた物をゴンドラから落とす。
オフィスの中でもんどりうっている人々。

オフィス内 地獄 2
書類を撒き散らし倒れる人。
電話を持ち相手が出る
受話器「もしもし・・・」
話そうとするが話せない。
男「あっうっ・・」机に倒れる。

オフィス内 地獄 3
口を開けたまま、目が机に落ちる。
鼻が落ちる。
手首が落ちる。
首から頭が落ちる。

不審者達 マンフォール
地下道を走る不審者達。

不審者達 マンフォールはしご下
はしごを上り、ふたの底をを叩く。

不審者達 地上
マンフォールが開き、2人は地上に出る。

オフィス内 地獄 4 体内
白い煙は口から入り、気道を通り、肺に行く。
肺が白く汚染され、肺は溶けていく。
そして、溶けていく筋肉。

オフィス内 地獄 5
頭が落ちる。
体から白い煙が上がりスーツだけになる。

不審者達 合流
止まっているワゴン車に乗り込む3人の不審者作業員。

不審者達 逃走するワゴン車
仲間と握手する。
救急車とすれ違う。
あざ笑うテロリストたち。

高層ビル前 騒然 1
警察、自衛隊、救急車が待機している。

高層ビル上空 騒然 2
数台のヘリコプターが旋回している。

臨時ニュース 新宿アルタ
番組が突然中断される。
キャスター「番組の途中ですが、ただいま入りましたニュースをお伝えします。本日11時ごろ東京都港区六本木キングスビルに起きまして、原因不明の事故が発生しました。死傷者は多数出ている模様です。詳細に関して今のところ不明です。警察からのお願いです。この近辺には一般人はもちろん一般車両も入れません。地下鉄、バス等も通行禁止です。この近辺のお出かけはしないでください。警察署からのお知らせです。どうぞお控えください」

渋滞している都内の道路 

壬生の車内
壬生は車内のテレビを見ている。
なかなか動かない状態にいらいらしている。
壬生の独り言「なんなんだくそっ」
ゆっくりと動き始めるが前方には警官が通行止めをしている。
壬生は渋滞からはずれ、警官の方へ向かう。

通行止め 1
警官は笛を激しく鳴らし制止させる。
警官「おいこらーココからは通行禁止だ。制止してんのが見えないのか!!」
黒いミラーが降りる。壬生は議員手帳を見せ付ける。
警官は唖然としている。
とっさに警官は現場責任者を呼んでくる。

通行止め 2
現場責任者(車内を覗き込むように)「すみません。ココからは大変危険ですので、通行できません」
壬生「いいから!さっさと通せ!」
現場責任者「ですから。禁止です」
壬生(怒って)「うるさい。お前の名前と所属はなんだ!!降格させられたくなかったら、さっさと通せ!!」
現場責任者はこまった顔をする。
部下に合図をしてバリケードを取り除く。
壬生の車は通行禁止を走り出す。
壬生の車には、警察と同じ緊急車両のシールが貼ってある。

高層ビル前 騒然 1
テレビレポーター(興奮気味)「大変なことが起こってしまいました。なんて事でしょう。今まさに私の目の前のキングスビルでは大惨事が発生してしまいました。未確認ではありますが、ビル内は汚染された空気で充満しているようです。外から人が大勢倒れているのが見えます」

高層ビル前 騒然 2
カメラはビルを望遠で倒れている人々を映す。
テレビレポーター「こんな、こんな、事があっていいんでしょうか・・・私は、私は
  こんな光景を目にして冷静ではいられません。どうしてどうしてこんなことになってしまったのでしょうか?実は私の息子が中にいるのです。ああなんとか生きていてほしい。うう・・・私の愛する息子が中にいるのです。助けてください助けてください。神様助けてくだい・・・うううう・・・」
泣き崩れるテレビレポーター

緊急テントの中 特殊部隊
防護服に身を包んだ特殊部隊がビル内に突入する準備をしている。

高層ビル前 騒然 3 
各社のテレビ局がビルを背景に緊急レポートしている。

壬生の車内
さとみの写真が揺れている。

高層ビルの裏口
特殊な工具でドアを破る特殊部隊。
特殊部隊10数名がビルに突入する。
非常灯が点灯している。
階段を登る特殊部隊。
白い粉にブーツの跡がつく。
階段の途中に死んでいる掃除係。

13階のフロアドア
先頭の隊員が探知機で確認して、ココだと指を指す。
カウントして一気に部屋になだれ込む。
同時に銃を構える。

オフィス受付 
受付嬢と思われる人の死体。
前進する特殊部隊。
自動ドアが開くと、なだれ込むように死体が崩れる。
電話が鳴りっぱなし状態。
オフィス内は白い煙で充満している。
煙の間から見える、累々たる死体の数々。
特殊部隊は慎重にオフィスの中を歩く。
散乱している書類。

高層ビル 内部 1階ロビー
特殊部隊が捜索している。

高層ビル 外
テレビカメラが特殊部隊向けられる。

テレビ アルタ 
特殊部隊が高層ビルの中での状況が実況中継されている。

アルタ 前
人々はテレビを見上げて、様々な想いで見ている。
信じられない様子。
唖然としている。
電話する人。

高層ビル 外
壬生は車から降りて警察の緊急中央本部に歩く。忙しく対応に追われる現場主任者。
壬生「おいここの責任は誰だ!」
いっせいに振り向く警察官達。
現場責任者「はっただいま、自衛隊特殊部隊によります、調査をしている最中です。まだ詳細につきましてははっきりとは申し上げられませんが、何か白い粉のようなものが、ビル内に充満しているようです。人々はその粉でなんらしか死傷しているようです」
壬生「それじゃ、中にいる人達は助からないのか?」
現場責任者「わかりません・・・・・」
壬生の悲痛な表情

高層ビル 近くの公園
鳩が失神している。
浮浪者が泡を吹いて死んでいる。

高層ビル 70階
望遠鏡があり、その脇にはたくさんのリュックサックと子供の死体があちこちにある。

高層ビル 70階 レストラン
フルコースの料理を前にうつぶせに倒れている死体。

高層ビル 緑の休憩所
緑の葉の上に白い粉が積もっている。
水の上にはうっすらと白い粉で多い尽くされている。

大阪の大型テレビ
首相「皆さん、本日、日本の歴史においても非常に悲惨で不幸な惨事を発生させてしまいました。犠牲者2300人という尊い命を一瞬にして奪ってしましました。これ以上の災難はあるでしょうか?なんであれ、このような事態は許しがたい行為であると同時に、このような卑劣極まりない非道な行為に対し、断固として毅然とした対処していきます。原因は今警察消防、自衛省の方で調査しています」

屋外の各テレビ画面(同時に中継される)
福岡のテレビ。
札幌テレビ。
沖縄テレビ。

高層ビル 内 夕方 1
懐中電灯に照らされる死体の数々。
オフィスのあちこちでサーチライトが照らされている。

地下室 空調菅
中和剤が使用を配管に入れる特殊部隊員。
ビル内のあちこちで勢いよく中和剤が噴射する。

高層ビル 外 夕方 2
担架で運ばれる死体の数々。
布をかぶせてある。
医師が布を取り、自衛隊のトラックを指差す。
救急車はぽつねんとしている。
自衛隊のトラックに次々に運び込まれる死体の数々。

さとみの実家 テレビ
布をかぶせてある。救急車より自衛隊のトラックに次々に運び出している映像。
さとみの両親が泣いている。

高層ビル 外 封鎖
完全に封鎖されたビル

新橋駅前 夜
号外を配る人「号外!!号外!!号外!!号外!!」
号外に群がる人々

高級料亭 いちの
和やかに歓談する政治家達。
上座には、中国人らしき人物と志田が密談している。

テレビ局のモニター
字幕の志望者リストが発表されている。
ニュースキャスター「本田早苗さん23歳、皆川泰助さん37歳、北村裕さん34歳清水健二さん22歳、津川四郎さん58歳、吉田さとみさん21歳・・・」

壬生の部屋
かなり酔っている。
壬生「さとみ・・・・・・」
持っていたグラスを床に叩きつける。
割れたグラスの破片で腹を傷つける。
「うあー」腹から血が流れる。

中国エステ店
志田が全裸でオイルマッサージを受けている。
志田の手がエステの女の太ももをいやらしく触る。

壬生の部屋 風呂場
シャワーを浴び、泣き叫んでいる。
壬生「さとみ!!くそー!なんでだ!!」
排水口に流れる血

国会 内 首相説明
首相「昨日の事件は皆さんご存知と思いますが。昨日の段階でわかったことは、ある殺傷性の最も高い危険物であるものが使われたと判明いたしました。このような薬品を使いテロを行った首謀者に対し、私は断固として毅然として立ち向かいます。極悪非道のこの事件の早期解決解明に向け、警察に要請しております。この事件に巻き込まれ亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします」

国会 内 1 野党の追及
野党「首相、これは安全管理の責任問題なのではないでしょうか?なぜココまで被害が広がり、なぜ危険な薬物を国内に持ち込まれたのか、そういう基本的な考えに基づく安全保障が何もされていないじゃ
ないですか?そういう意味で首相の責任問題でもあると私は考えます」
首相「なにもここぞとばかりに私を批判しても、死んだ人達は生き返りません。安全管理におきましては、例え法を整備したところでテロリストはその網目をかいくぐってテロ行為をするわけです」

国会 内 2
聞いている壬生。
何気に後ろを振り向く、志田が他の議員に耳打ちをしている。
へらへら笑っている志田と議員。

国会 内 3
首相 「第二、第三のテロの可能性もないとは言えません。国民一人一人気をつけなければなりません。政府としては、この非道極まりないテロに対し徹底的に戦うことを宣言いたします」

国会 内 トイレ
顔を洗っている壬生。
顔を上げカガミを見ると、はれぼったい顔をした自分の顔がある。
ネクタイを締め直しトイレを出る。

国会 内 廊下
疲れたように歩く壬生。
こそこそとついて来る新聞記者。 
新聞記者「壬生さん、なんか調子悪そうですね」
壬生は無言。
新聞記者「何かあったんですか?」
壬生は無言。早歩きになる壬生。
ついてくる新聞記者
新聞記者「知ってますか?今回のテロ・・」
壬生は急に立ち止まり新聞記者をにらむ。
新聞記者(小声)「ただ単なるテロじゃないんですよ。これは・・戦争なんです。」
壬生の血の気が引く。

国会 内 廊下
前から志田派の数人がズカズカと歩いてくる。
壬生と新聞記者は志田の一行に道を開ける。
壬生は一礼する
何のリアクションもない志田。

国会 内 廊下
新聞記者(小声)「アジア系外国人の姿が確認されていますが、どこまで警察は関与できますかね・・」
壬生は身震いしている。
壬生(小声)「情報が正しければ、後でまたじっくり聞こう。ここではまずい」
新聞記者(小声)「まあそうですね、じゃあいずれ時間を取ってください」

料亭 いちの 剣山会会合
豪華な料理を前に会員達は歓談している。
先輩議員が後輩に何か叱っている。
後輩が先輩に会釈をしている。
真っ赤になっている議員。
中堅議員、山田は静かに飲んでいる。
上座には志田が座り、両隣には若い女性がついている。
壬生は席を立ち上座へ歩く。
志田秘書が、中国人らしき人に重そうな封筒を手渡す。
女にじゃれている志田。
志田は壬生に気づくが、かなり酔っている。
志田「なんだー」
壬生「先生。この度のテロ事件なのですが」
志田「んー」
壬生「テロ事件は警察のレベルでよろしいのでしょうか?ここは一つ政府レベルで考えないと大変なことになるのではないかと思うのですが?」
志田「ああ・・まあ飲め・・」
グラスを手渡されビールを注がれる壬生。
志田「これは事件だ。事件を扱うのは警察の仕事だ、なっそうだろ。我々は国会議員だ。警察なんざ、どうにでもできる。長官をクビにすることもな・・俺の力を持ってすれば、この事件をうやむやにすることだってできるんだ。しかし国民の批判があるからまあその攻撃の的を誰にするか・・という問題だな・・(女の胸をまさぐりながら)」
志田の隣の秘書役の男が険しい顔をしている。
女とじゃれている志田。
壬生は反論することも出来ず退散する。
壬生に抱きつきキスをするおかま議員。
それを見て爆笑する議員達。
困惑した壬生の表情。

高層ビルの地下通路 捜査
設備員がガスマスクを付けて現場検証をしている。
指を指し、ここで殴られたと動作する。
おびえている設備員。
懐中電灯で近辺を捜査する。

  壬生の事務所 
週刊誌を見ている壬生。
週刊誌に設備員が匿名で目撃者として記事にとりあげられている。
電話をする壬生。

国会 内 廊下 2
喫煙所でタバコを吸っている中堅議員。
壬生が考え事をしているような歩き方をしている。
山田の前を通り過ぎる壬生。
山田「ちょっと壬生先生いいかな?」
壬生は振り向く。
山田「今夜時間あるかな?」
壬生「えっはい・・・」
山田「俺の話に付き合ってくれないか?」
壬生「はい」
山田「じゃ後で連絡する」
山田はそう言うと壬生を追い抜いて玄関を出る。

新橋 飲み屋街 外
かなり酔っている山田は壬生にもたれかかっている。
壬生は必死に千鳥足の山田を支えている。
山田「よおく聞けよ。壬生・・・俺あ・・・真実を言ってるんだ。わかるかあー何も嘘ついてこんな大それたあ事言うわけないだろ君にはわかるだろ。組織というものがあ・・・俺はもう誰からも支援してもらえない野良犬のようなもんなんだよ。わかるか?いい大学卒業しようがこの世界じゃ関係ない。要は力関係をどう乗り切るかだけなんだよ。見方か敵かこれを読み間違うと命取りになる。いいか君はまだ若い。有望視されているこれからの人間だ。マスコミでも君の人気は高い。このまま行けば君は首相さえ夢ではない。水かなんか飲みたい・・」

飲み屋街 ガード下
壬生は山田をアスファルトに座らせて自動販売機でお茶を買う。
山田は意識が朦朧としている。
壬生「山田先生飲んでください」
山田は手渡されたお茶をぐびぐびと飲み干す。
山田「いいか・・・俺は酔ってなんかいないんだ。俺はなあ組織に欺かれた一人の人間として忠告してるんだ」
山田(壬生の襟元をつかんで)「危い・・・非常に危ない・・・・危険だ・・・」
壬生「何が危険なんですか?」
山田「このままでは、志田の思う壺だ・・・あいつの力は今が絶頂期だ。今奴に逆らったら、政界から追放されるだろう。奴がいる限り日本の政治は変わらん。奴は大陸の有力者と通じている。やばい。本当にやばい。俺はやり損ねた、ミスしてしまった・・・」
壬生「何を言っているんですか?」
山田「まあいい・・君には関係のないことだ。道ずれにはしたくない・・」
壬生「送りますよ山田先生」
山田は壬生の申し出を断る。
山田は千鳥足で壬生から遠ざかりながら
山田「いいんだよーいいんだよー俺にかまうな・・・俺は俺の力で乗り切る。しかしいいか・・・壬生・・・信じてれ・・・俺は間違ってはいない間違ってい・・・信じてくれ・・・なあ・・ばいばいー」
よろけながら歩いて行く山田。
ぽつんと取り残された壬生。
山田が落としたジッポーが転がっている。
頭上の電車が通り過ぎる。

壬生の部屋 深夜 パソコン画面
裸のままパソコンに向かう壬生。
検索画面に志田工作と打つ。
志田工作の履歴が多数出てくる。
志田のホームページを開く。
志田工作のこれまでの輝かしい業績が並べある。
1986年 東京大学卒業
1986年 外務省
1989年 外務省勤務 アジア地区担当
1995年 外務省主任に任命
1996年 政治活動 
1998年 中国主席と対談
2002年 国連会議出席
2004年 外務大臣に就任
感謝状の数々
日中友好のメダルと感謝状
北京市の名誉市民賞
共産党との写真
寄付と感謝状の手紙
中国からの感謝状
韓国からの感謝状
韓国大統領との写真

薬と水を飲む壬生。

パソコン画面 
志田の動画をクリックする。

志田の動画
志田「はじめまして私は志田と申します。現在外務大臣として日々多忙な毎日を過ごしております。さて現在の日本における現実はいかがなものでしょうか?国民の所得格差は広がり、就職もままならないニート問題。青少年によるいじめ問題。
  そうした国内の問題も山積しております。さて外交の方はというとこれまた欧米化よりの関係が強く、何でもアメリカよりの考え方でございます。日本は地理的に歴史的に見ても大陸からの影響をうけて日本の文化が形成されました。この恩恵を日本人は感じておりません。さらに戦争における侵略行為は我が日本人の同胞としての罪の意識を感じざるを得ません。中国は人口数、経済成長を見ても世界一であります。これからどんどん成長していく中国に私は強い関心があります。人的な交流。経済交流を経て活発な動きをしていきたいと思います。そういった意味でも、私は日本と中国との架け橋であり、この関係を強化することが、今後の日本の発展につながるものだと信じて止みません。私は中国、韓国、北朝鮮では有名人らしいのです。私も知りませんでしたが、私の写真が中央日報に大々的に取り上げられた経緯があります。ですから私の名前は日本より中国人のほうが知っているかも知れません。まあそれは冗談としまして、日本と中国の関係失くして未来はありません。皆さんこれからアジアの国々との関係を強化しましょう」

壬生の部屋 朝 1
猫が壬生の顔を舐める。
ベットから起きる壬生。
台所でキャットフードを皿に入れる。
跳んで来る猫。
猫を持ち上げ頬ずりする壬生。

壬生の部屋 朝 2
ソファに座りテレビをつける。

壬生の部屋 朝 テレビ
ニュースキャスター「昨日、お台場埠頭に落ちた車両の中から男性の死体が発見されました・・男性は持ち物などから国会議員の山田議員と判明しました。体内から多量のアルコール反応があることから過って落ちた事故、なんらかのトラブルに巻き込まれた事故との両面からの事故原因を調査しております」
呆然とする壬生。
ジッポーがテーブルに置かれてある。
ジッポーを開け火をつけようとするが点かない。何度やっても点かない。
芯を持ち上げる。
すると一枚のSDカードが出てくる。
不思議に思いSDカードをパソコンに入れる
それを見た壬生は驚愕する

パソコンの画面
大物政治家と中国要人の密会。密入国の写真。
等極秘文書。
壬生「これは・・・なんなんだ・・どうしてここに・・・」

国会 内 警察署長の答弁
警察署長「懸命に犯人逮捕に向けて動いております。一刻も早く犯人逮捕に向けての努力を警察は一丸となって取り組んでいる次第でございます」
野党議員「署長、あれだけの事件を真剣に捉えているとは言いがたいですね。一体いつになったら事件は解明されるのでか?もう1ヶ月も経っているのに何一つ証拠らしいものが発見されていないじゃないですか?警察は遊んでいるんですか?この事件を迷宮入りにしたいのですか?どうなんですか?署長・・・」

志田のこわばった表情

警察署長「ですから・・・全力で取り組んでいますゆえに(ざわめきと罵声)警察と致しましても綿密な調査をした上でないと、発表しかねます」
野党議員「この際はっきりさせましょうよ。後2ヶ月待ちます。もしこの期間に事件が解明されなければ、あなたの監督責任を追及します。いいですか?もう言い逃れはできませんからね・・・」
壬生「署長。昨日の事件をご存知ですか?山田代議士の事故でありますが、警察はどういう動き、どのような見解を示しているのですか?」
警察署長「昨日の山田代議の事故は大変に残念でした。警察では、この事件を自殺、他殺両面の側面において調査している最中でございます。捜査が終わり次第改めて発表したいと思います」
壬生「あなたの答弁を聞いていると、釈然としないばかりか煙に巻かれるようです。
  責任転嫁のような印象ですね・・・被害者なのに加害者扱いをする。事故処理の保険屋と同じ口調ですね。まるで的を得ていない・・・・」
警察署長は顔を上げ何気に志田に助けを求めるような視線。

志田は憮然としている。

夜中の海
タグボートから上陸する密入国者
トラックに乗り込む密入国者

喫茶店 内
喫茶店で資料を読んでいる壬生。
新聞記者が背後に来て覗き込むように書類を見る。
それに気づき、とっさに隠す壬生。
新聞記者「水臭いじゃないですか壬生さん」
壬生「お前、いつからココに」
新聞記者「まあ機密事項というか・・壬生さんが心配でね・・」
壬生「ばかいうな、なんでおまえに心配されなくちゃいけないんだ」
新聞記者「なんですか?その資料は?」
壬生は資料を隠すようにかばんに入れる。
新聞記者「さては・・やばいものですか?」
壬生「おまえには関係ない・・」
新聞記者「そうですか・・・しかし残念でした・・・山田さん・・・」
壬生の顔が険しくなる。
新聞記者は壬生の表情を覗き込むように
新聞記者「なんか顔色悪いですよ・・・どうしたんですか?」
壬生「いいや別に・・・・」
新聞記者「あの事故は連中の仕業」
壬生唖然としている。
新聞記者「(周りを気にしながら)ハメられたんです」
壬生「誰?」
新聞記者「断定はできませんがね・・(耳元でその名をいう)志田」
壬生の表情は一段と険しくなり、真正面を見つめる。
新聞記者「じゃこれで・・・またお会いしましょう」
言い残すと店を出る。
壬生の表情は険しい。

高層ビル 外 昼前
大惨事後のビルはロープが張られてある。
警官が数人立っている。
もぬけの殻のオフィス。
白いほこりをかぶった書類が散乱してある。
枯れた植物。
真っ暗なゴースト化したビル。

高層ビル 外 昼前 壬生
壬生は高層ビルの正面に立ち尽くしている。

山田の事務所 内
家捜しをしている壬生。
引き出しを開けるが文房具類があるのみ
2段目の引き出しを開ける。ノートが出てくる。ノートを開くが何もない。
机に潜り込み、何か手がかりはないかと徹底的にあるものを探す。
どかっと椅子に座り本棚を見渡す。
コンコンと音がする。
壬生「あっはい」
山田の秘書「よろしいでしょうか?」
壬生「ああ もちろん」
コーヒーを持ってきた秘書
秘書「何かありました? 先生、何をお探しですの?」
壬生「会議の資料だよ。どうしてもあれがないと進行できないからね・・・君もう帰っていいよ。僕が閉めておくから・・」
秘書「そうですか」
壬生は本棚から本をめくっている。
本の間からハーブの栞がある。
栞の匂いを嗅ぐ壬生。
壬生「へえー山田さんもなかなか洒落た趣味してるよな・・・」
秘書は出口あたりで立ち止まり、
秘書「いつもハーブティを飲んでいましたし、かなり先生は凝ってらっしゃいました」
壬生「へーそうなんだ・・・」
秘書(鉢を指差し)「あれ先生が栽培してたんですよ。ハーブってなかなか育てるのが難しいですよね」

主人のいなくなったハーブ

壬生は興味なさそうに他の本をぺらぺらめくっている。
秘書「失礼します」ドアを閉める
壬生は片っ端から本をめくり探している。
窓の外はすでに暗くなっている。

山田事務所 外
外から見る壬生の姿。うろうろしている。
黒い人影が壬生を見ている。
タバコを半分くらいで捨て、ギュウギュウとタバコが原型がなくなるくらい革靴で踏みつける。

山田事務所 内
冷めたコーヒーを夜景を見ながら飲む
突然電話が鳴る。
驚いて振り向く。
数回で鳴り止む。
ふとハーブの鉢に目が行く。
ハーブに鼻を近づける。
すると眠くなった意識が劇的に目覚める。
とっさに本棚にあるハーブの図鑑を手に取る
図鑑をめくると1枚のチラシが入っている。
兵庫県神戸市の布引ハーブ園のパンフ。
壬生は思い出す(フラッシュバック)
山田のSDメモリに入っていた画像に、確かハーブ園のような景色。
壬生「あっ」と叫ぶ。
とっさにスーツを着て部屋を出る。

山林の中の身元不明者の死体。

地下駐車場
壬生は車に乗る。
助手席にハーブの図鑑を置く。
車を走らせる。
自動シャッターが開く。
壬生の車は突進するように外に飛び出す。

高速道路 深夜
走馬灯が通り過ぎる。
バックミラーには、さとみと一緒の写真が挟んである。

壬生の回想1 ブランド店 混雑
買い物をしている壬生とさとみ。
品定めをしているさとみ。
忙しそうに携帯で話している壬生。
さとみ「(服を持って)ねえあなた。この色どうかしら?」
壬生はめんどくさそうにうなずく。
さとみ「ねえっちゃんと見て」
壬生身振りでオッケーとやる。
さとみは怒って店を出る。

インターチェンジ
コーヒーを飲んでいる壬生

壬生の回想 2 コーヒー屋前  
壬生はさとみの後を追うが、また携帯を手にしている。
さとみは振り向いて、
さとみ「仕事と私どっちが大事なの?」
壬生はさとみを指さす。
さとみにこにこして近づき、おもむろに携帯を床にたたきつける。
壬生は動転している。
壬生は携帯を持ち下からさとみを見上げる。
さとみは平然そのもの。
しぶしぶ立ち上がる壬生。
さとみ「せっかくのデート中に携帯なんか持ってこないでよ・・・」
壬生「無言・・・」
壬生はポケットから黒い箱を取り出す。
壬生はさとみに手渡す。
箱を開けるとダイヤモンドの指輪がある。
さとみの目から大粒の涙があふれ出る。

壬生車内
壬生の大粒の涙が膝に落ちる。
壬生「(独り言)ごめんさとみ・・・一人にしてごめんよ・・・・俺が悪かったんだ俺がなんとか幸せにしてあげれば・・・・ごめんさとみ・・・」

神戸インターチェンジ
インターチェンジをくぐる壬生の車
黒い乗用車がインターをくぐる。

壬生車内
カーナビで布引ハーブ園に向かっている。

布引ハーブ園 ケーブルカー前 夜
車を降りて背伸びをする。
神戸の夜景が見える。
壬生「ここか・・・・」
壬生は車に乗り込み、車を走らせる。

立体駐車場
壬生の車は立体駐車場に入る。
車を止め、ドアを閉める。
ヘッドライトが壬生を照らす。
壬生はまぶしくて目を覆う。
急発進する黒い車が壬生に向かってくる。
とっさに壬生は車との間に身を隠し、難を逃れる。
車から数人の男が下りる。
ばら撒かれた壬生の荷物をかき集める。
一人の男が壬生を見つけ、仲間にココだと合図をする。壬生は立ち上がり数人の男と立ち向かう。
男の一人が拳銃を胸から取り出し壬生に向ける。
青ざめる壬生。
酔っているサラリーマンの集団が歩いてくる。男たちは足早に車に乗り込み車を走らせる。
酔った集団が壬生の前を通り過ぎる。
壬生(息が荒い)「くそー」
ズボンを手で払い散乱した物を拾い集める。
ハーブの図鑑だけは盗まれずにすんだ。

飛田新地 1 夜
通りを歩いている壬生。
おばちゃんが声をかける。
おばちゃん 1 (京都弁)「ねえーにーさんこっち来てみてよ。いい子よーサービス満点の子だよ・・」
女は壬生にこくりと挨拶をする。
壬生はちらりと見ると歩き出す。

飛田新地 2 桂店 夜
おばちゃん 2(関西弁)「さあ迷ってないでねーもうここに決めてねーねえ見てよ
  こんなかわいい子めったにいないよ」
女は微動だにしない。
壬生は歩きながらちらりと見る。
壬生の足は止まる。
それはまるでさとみとよく似ていた。
壬生は引き寄せられる。
まじまじと女を見る壬生。
女はニコニコしている。
おばちゃん 2「さあまいどーおーきにー上がってねー靴はおばちゃんが見てるさかいにねー」

飛田新地 桂店 階段 夜
女は先に急な階段を登る。
壬生は靴を脱ぎ、階段を登る。
女の赤のワンピースから見えるパンティ。

飛田新地 桂店 部屋 夜
部屋に案内されて座布団に座る壬生。
お茶を注ぐ女。
女(京都弁)「どこからきはったんでか?」
壬生「えっ東京から・・・」
女「お仕事ですか・・・・」
壬生「そうだね・・・君はどこ?」
女「京都です・・・」
壬生「そうか・・・」
壬生はスーツを脱ぐ。
服を脱ぐとボリュームのある体。

飛田新地 桂店 部屋 ふとん 
赤電球の下、全裸になった女を抱き寄せる。
女の体をもてあそぶ壬生。

さとみのプレビュー
女とさとみが交差する。
さとみの光悦。
今抱いている女の光悦。

高層ビル 回想
外人のお客に説明しているさとみ。
白い粉が降って来る。
1階フロアーいる人達が次々と倒れていく。
さとみの悶絶。

飛田新地 桂店 部屋 ベット 2
激しく腰を振る壬生。
力尽きる壬生。
女「ごくろうさんどす」
壬生は布団に横たわったまま動かない。
揺れる電球を見ている。

布引ハーブ園 ケーブルカー入り口 朝
ケーブルカーに乗る壬生。
神戸の風景が見える。
徐々に上に登っいくケーブルカー。
ハーブ園の頂上に到着する。
壬生はSDカードの風景を思い出す。
携帯の写真で確認する。

布引ハーブ園 朝
ハーブ園内を歩く壬生。
植物園に入る。
様々な植物を興味深げに見ている。
植物園を出て展望台に出る。
眼下に広がる神戸の町。
掃除をしている人がいる。
壬生(掃除している人を捕まえて)「すいません。ここの場所にいきたいのですが」
カメラの画像を見せる。
掃除人「あーあどれどれああ、そこかな?そこを下に下りるとラベンダーのハーブがあるからたぶんそこだな・・・」
壬生「そうですか・・・ありがとう」
壬生はお礼を言うと下に園内を歩き出す。

布引ハーブ園写真の場所
写真と同じ風景の場所に着く。
壬生(独り言)「確かにこの風景だ。しかし何も変わったことはない。自然な風景だ。俺の思い過ごしだったのか?」

奥の方から作業服を着た小柄な男が見ている。
小男は壬生の背後から近づくと
小男(壬生に向かって声をかける)「ハーブ好きかい?」
壬生「えっ・・・」思わず振り向くが誰もいない。よく下を見ると男がいる。
小男「探し物かい?」
壬生「そう・亡くなった友人の見た風景を見たくてね」
小男「へー・・友人って誰?」
壬生「誰って・・」
子男「山田かい・・」
壬生(驚いて)「知っているのか・・」
小男は自慢げだ。
壬生「山田はここで一体何をしていた?」
突然、小男は壬生から逃げる。
壬生「おい・・・待て・・・」
小男を追う壬生。

茂みの中 転落
小男は、茂みの中に隠れる。
茂みに入っていく壬生。
うっそうとした茂みを歩く。
茂みを歩くと谷底が見える。
体のバランスを崩し傾斜に落ちる。
転がり、木にぶつかり意識を失う。

ある部屋
目を覚ます壬生
越智「目が覚めましたか?駄目ですよ・・壬
生さん・・あんなとこで遊んじゃ・・地元の子供でも遊びませんよ・・」
壬生「誰なんだ・・あんた・・」
越智「山田さんの友人とでも言いましょうか
・・」
壬生「山田さんを知っているのか?」
越智「もちろん・・・彼はいい人でした。惜しい人を亡くしました。正義感にあふれ愛情の深い方でした。私は彼を尊敬しております。私たちのミスで彼を死なせることになってしまった。とても残念です
・・」
壬生「何を言ってるんだ・・」
越智「これは戦争なのです。我々と売国奴による。売国奴たちはあらゆる職業に就いています。政治家、自衛官、警察、消防、外務省、裁判所、こうした国の機関に潜伏しているのです。日夜日本の安全を脅かす他国に対し、情報を無償で提供しているのです。こんなことがあっていいのでしょうか?日本のある地方都市では、無防備都市と宣言していますが、もし占領されたら占領国の奴隷となり、占領された国の統治下で苦しい生活をしなくてはいけなくなる。今の平和な日本では想像もできないことです。馬鹿げた思想を持つ人種が、各界にのさばっているのです。これは危機的状況なのです」
壬生「じゃあやはり・・殺されたのか?」
越智はコクリとうなずく。
越智「今はとにかく休んでください・・ここは名湯有馬温泉です。傷もすぐに治るでしょう・・明日また来ます・・」
越智は部屋を出る。
壬生はゆっくりと体を上げると、痛そうに腰を押さえる。

紫陽花の間 内 1
寝ている壬生。
ピンポンと呼び出しベルが鳴る。
起きるが痛そうに腰を押さえる。
よろけて玄関に行く。
玄関を開けると小男が立っている。
小男は壬生に携帯と折りたたまれたスーツを渡すとさっと走り去る。
携帯を見つめている。

紫陽花の間 内 2
テレビを見ながらスーツを着る。
携帯が鳴る。
携帯を見るとメールが来ている。

携帯画面
神戸埠頭の55号倉庫に来てください。お待ちしております。

旅館を出る壬生
自分の車が玄関前にある。
車に乗り込む壬生。
旅館の従業員 「おーきに、またお待ちしてます」
一礼して走り出す。

55号倉庫前
数台の高級車が止まっている。
車を降りる。
あたりを警戒しながら歩く。
倉庫に近寄ると、重く錆び付いたドアが開く。
薄暗い中にぼんやりと大男が立っている。
笑いながら壬生に近寄る小男。
暗闇から小男が壬生のスーツを引っ張り、こっちだと言わんばかりに暗い中を行く。
奥のほうで明るい電灯がついている。
明かりに徐々に近づいて行く。
明かりに近寄ると円卓を囲うように男たちが無言で座っている。

5号倉庫内 薄暗い 円卓の男たち  
壬生(壬生は驚いて)「あなたは経済学者の若林さん、あなたは東大教授の三木さん、あなたは防衛省の入江さん、あなたは新聞社の近藤さん・・あなたも、あなたも知っている・・」
越智「驚かれたでしょう。この会は有志方々です。我々は日本の弱体化を憂いでいます。日本国内でテロ及び反日活動している団体を密か監視しています。亡くなられた山田さんもメンバーでした」
越智はくるりと向きを変える。
越智「山田さんのご冥福を祈りましょう」
皆、一斉に黙祷をする。
壬生はその奇妙な風景を見ている。
越智「はい・・顔を上げてください。それではこれからはじめます。三木教授、高層ビル事件で使われたガスの成分はわかりましたか?」
三木教授「あれはねー某国が使用したものと共通しています。(写真の数々をテーブルに置きながら)あの白い粉はかつて冷戦時代のときアフガニスタンで始めて確認されています。そういうのも事件にもならない隠蔽された事件ですが。ある村の住民が忽然として姿を消しました。その理由はわかりませんが、ただ残されていたものは白い粉だったのです。間違って捜査班がそれを舐めたところ、その場に倒れ急死してしまいました。その遺体の損傷の凄まじさは見ていた者が身震いするほど驚嘆した。なにせ筋肉は溶け、骨だけが残るほどすさまじいほどの最新化学兵器なのです。それからまた時を経て、某国では秘密裏に反体制に対し、その政府は潜伏していた村にこの粉を使用しました。その結果、無関係な子供から老人まで姿を消すように消滅した。まだまだ隠された事件はあると思いますが、この恐ろしい粉は簡単に入手できる恐ろしい科学兵器なのです。いつ何時今回の高層ビルで使われたような恐ろしい出来事は明日にも起こりうるのです」
皆、押し黙ったまま
越智「この非道な事件は私の脳裏から一生離れることはありません。第2、第3のテロを防ぐためにも、我々は一致団結しなければなりません・・テロの首謀者を確認しました」

壬生は宙を見つめて急に越智を見る
越智「中国です・・中国の特殊部隊の工作員です・・」
壬生「バカを言うな・・・何を根拠に・・」
越智「これは私たちのミスで起きてしまった事件なのです・・・事前に防げなかった我々の責任にあるのです」
壬生「何を言ってるんだ・・」
越智「壬生さん・・我々に力を貸していただけませんか?山田さん亡き後、政界には協力者がいないのです。あなたが協力してもらえれば日本を救うことができるのです」
壬生「わからん・・あなたたちがこうして一同に集まり話し合うのは勝手だが根拠なき事実に対し、まるで真実のように語るのは危ない橋を渡るようなものだ。警察はまだ未発表だ。しかしここに集まっている方々は、この事実を受け止めているのですか?」
数人がコクリとうなずく。
壬生「では彼が言うように今回の事件は某国が犯人だという事実もですか?」
数人がコクリとうなずく。
越智「警察は知ってます。警察は貴方の所属する党派の志田が牛耳っているのです。
このテロの事件も志田は知っていました。彼はこの事件の首謀者の一人なのです。
彼を生かしておいたらまたとんでもない事件が起きます。そうする前に我々有志が止めを刺すのです。壬生さん」
壬生「あなたが言う有志とは反政府組織ということか?」
越智「いいえ、表ざたに困るのですが、日本国の裏組織とお考えください。身勝手な暴走を止めるためにするのです。警察は事実とは違う判断をするでしょうね。志田に言われるがままに事実に反した報道をするでしょう」
壬生は無言

高速道路 不審者の車内 深夜
160キロのメーターを指している。

高速道路 追い越し
大きなカーブを曲がる不審者の車。
壬生の車を不審者の車が追い越す。
壬生の前に来て、速度を落とす不審者の車。
壬生も速度を落とす。
トレーラーが壬生の車に横付けする。

高速道路 壬生の車内
メーターは80キロ。
1台のトレーラーが平行して走る。
もう一台のトレーラーが壬生の車を挟むように並行して走る。
前は黒のセダン。
トレーラーは徐々に壬生の車に接近して挟み込む。
壬生の焦った表情。
トレーラーは壬生の車のボディにぶつかってくる。
たまらずハンドルを取られる。
反対からトレーラーがぶつかる。

  高速道路 攻撃
壬生の車は左、右に蛇行しながら運転している。
速度を落とすとトレーラーから離れるが、後ろから壬生の車を押すトレーラー。

  高速道路 壬生の車内 横転
押された弾みでハンドル操作を誤り、壬生の車はガードにぶつかり横転する。
逆さまになった壬生の車

高速道路 救出 
猛スピードで一台の車が止まる。
現場に駆けつけた越智と新聞記者が壬生を車から引きずり出す。
車が炎上する。(ドカーン)
記者「大丈夫ですか・・・」
壬生(意識がもうろうとしている)「なんでおまえが・・」
記者「怪我はないですか?」
第2弾のドカンと炎上する。

記者の車内
記者「こうなった以上一人では無理ですよ。いくら壬生さん一人がんばったところで山田さんみたいになってしまいますよ」
壬生「少し黙ってくれ・・」
というと目を閉じる。

埠頭 朝
花束がたくさん置いてある。
波が穏やか。
ハイヒールがアスファルトを歩く。
ハイヒールが止まる。
包帯姿の壬生が振り向く。
花束を持った、山田の秘書。
秘書「山田さんは、あなたのことをいつも気にかけてました。・・・党内で貴方が追い詰められた時、裏で動いたのは山田でした。あなたは偶然と思われますが。そんな何も特にもならないことをする不思議な人でした。(花を置く)そういう意味で私も山田に救われた一人です」
そういい残すと秘書はその場を立ち去る。
一人取り残される壬生。

壬生の回想
壬生独り言「確か入党した当時、志田の派閥に入った」(志田に頭を下げる壬生)
壬生独り言「1年先輩の金田は俺のことをかなり嫌っていた。なぜだかわからんが、こいつとは気が合わなかった」(志田の横にいる金田)
壬生独り言「俺はコイツに気を使いながら活動していた」

議員会館内
志田の後ろを金魚のふんのように歩く志田派
数人と壬生の顔

埠頭 さざ波
壬生独り言「ある小さいミスから俺を追放しようと画策したのはコイツだ。それを静かに見ていたのは山田さんだった。何のアドバイスもなければただニコニコして「がんばれよ」と励ましてくれた・・なぜなんだ山田さん・・何をしてくれたんだ?」(山田の後ろ姿)

自宅マンション 夜 
電話をしている壬生
壬生「わかった・・」
思いつめた顔。
パソコンにSDを入れ越智にメールする。

会議場 1 前
志田派定例会議の看板
続々と志田派の政治家が会館に入る。
入り口で、受付に名前を書く代議士。
スーツから白い封筒を差し出す。
金額を書き込む女性。

別の会議場 前 1
壬生の車が駐車場に入る。
腕に包帯をした壬生が玄関へ歩く。
壬生の表情。なにかおかしい?
玄関の看板もなければ何の用意もされていない。
玄関より中に入る。

会議場 内 1
がやがやしている会議室。
志田の秘書の電話。
携帯画面。壬生からの着信が入る。
秘書は志田に見せる。
反応がない。
電話に出ない秘書。

別の会議場 受付 
壬生(受付に尋ねる)「今日はココじゃないのか?」
受付(手を休め)「いえ本日のご予定はございませんが」

別の会議場 前 2
いらいらしている壬生。電話をする。

会議場 会場
志田が演説をしている。
志田秘書が耳打ちする。
何か秘書に言う志田。
志田秘書は廊下に出る

会議場 廊下
志田秘書「もしもし」

別の会議場 前 玄関
壬生「壬生です。今日は定例会議のはずですが・・」
志田秘書「もう始まってますよ・・」
壬生「馬鹿な・・ここだろ・・」
志田秘書「遅刻ですよ。前回の会議場に至急来てください」ガチャッ切られる。
壬生「やられた・・」

会議場 到着した壬生
玄関に向かい、歩く壬生。
会館の玄関の中に入る。
廊下では警備の人間が立っている。

会議室 前
ドアを開ける。
一斉にドアの方向に向く議員たち。
室内はシーンとしている。
志田「おい・・壬生遅刻だな・・」
壬生は空いている席を探す。
志田「おい壬生、こっちへ来い・・」
志田の方へ壇上に上がる壬生。
志田「壬生先生にちょっとお聞きしたいことがあるんだか・・」
壬生はあっけに捉えている。

金田が立ち上がり文書を読む。
金田「壬生代議士に関しましての背信行為を述べさせていただきます。1に日本国の情報を他国に漏洩しております。2に他国から賄賂をもらいました。3にオーバースティの不法外国人の協力」

壬生は瞳孔が開いている。

志田は壬生を見てしてやったりの顔をしている。
志田「ずいぶん派手にやってるんだな・・」
壬生「志田先生誤解です・・まったくのでたらめです・・」
志田「おい金田。これは嘘なのか?事実なのか?」
金田「根拠があっての報告です」
志田「おい壬生。もう言い逃れは出来んぞ」
壬生「待ってください。私にも、答弁させてください」
志田「その必要はない・・もういい・・若くて優秀なお前に期待していたが・・あっけなく裏切られたもんだな・・破門を言い渡す。これでおまえは終わりだ・・連れてけ!」
警備員が駆けつける。
壬生「待ってください。待て、話がある」
暴れる壬生を押さえつける警備員。
壬生「話があるんだ」
警備員が壬生の脇をつかみ暴れる壬生を強引に部屋から追い出す。
廊下に転がる壬生。
包帯で巻いてある腕の傷口が薄っすらと赤みを帯びる。

和風会館 玄関前 
足を引きずった壬生が玄関から出る。
新聞記者が壬生に近寄る。
新聞記者「壬生さんどうしたんですか?会議はまだ終わっちゃいないでしょ」
壬生「俺ははめられた・・もう終わりだ」
記者「とうとう正体を現しましたね・・・壬生さん・・山田さんの資料は見つかりましたか?」
壬生「なんだその資料というのは?」
記者「山田さんが苦労して証拠集めをしていたようです。その資料がどこにも見当たらないのです。その資料は確実にヤバイ代物です。扱い方を間違うと命に関わります」
壬生はポケットからSDカードを出す
壬生「これのことか・・」
記者は驚いたように、
記者「どこにこれが・・」
壬生「肌身離さず持っていたのさ・・これは山田さんの形見だからな・・」
記者「中身は確認したんですか?」
壬生「まあな・・連中はこれを探しているんだろ。この存在を知っているんだろ」
記者「これはすごい・・これで志田派を破滅させるには充分すぎるほどだ。さっそく越智に連絡しないと・・」
壬生「ちょっと待て・・俺から連絡する」
記者「そうですか・・まあいいですが・・」
車に乗り込む壬生。

記者の前を走る壬生の車。 

壬生の事務所 内
秘書が壬生を見て、
秘書「先生どうしたんですか?その包帯は?どこいらしてたんですか?
電話とかメールとかたくさん来てますよ」
壬生「ごめんごめん、あまり質問攻めにしないでくれ・・傷が痛む・・」
秘書「もう大変いろいろ大変だっんですよ」
壬生は机の引き出しを開ける。
壬生はメモ帳に何かを書く。
それを秘書に見せる。
紙には、(この部屋は盗聴されている)とある。
秘書は思わず押し黙る。
秘書は身振り手振りで何かを説明している。
SDカードを山田のハーブの本に隠し、本棚にしまう。
わかったわかったという動作をする壬生。
システム手帳を持ち部屋を出る。

スーツ売り場 1
壬生はスーツを選んでいる。
店員の動きを観察しながらスーツを選んでいる。
遠くから見ている男。

スーツ売り場 2
壬生は着替え室に入る。
壬生は着替えていると隣の着替え室から越智
の声が聞こえる
越智「壬生さん・・また尾行されてますね。少しは用心してください」
壬生「やれるものならやってみろ」
越智「まあそうヤケにならないでくださいよ、SDですが・・確かに受け取りました。これさえあれば我々の勝ちです。公にされて困るのは奴らですからね」
壬生「相手は手ごわいぞ」
越智「わかっています。こいつらを始末してもまだ生き残った意思を引き継ぐ連中がいますからね・・・皆殺しですよ」
越智はおもむろに拳銃を壬生に手渡す。
越智「とりあえずお持ちください。あなたは危険な状態にあるのです。気をつけてください。1ヵ月後にまた定例会議が開かれます。その後、料亭に一同が集まります。それがチャンスです」
壬生はスーツを着替えている。
越智「我々はここで奴らを全員抹殺します」
顔色を変えない壬生。
越智「壬生さん・・危険な仕事ですが・・」
壬生(壬生は大きくため息をつくと)「わかった(小さな声で)」
カーテンを開けズボンの丈を調整している店員。
不審な男を見る壬生。
とっさに身を隠す男

地下室
記者の顔は青く腫れ上がり胸には刺し傷があり裸にされている。
足の爪から血が流れている。
息が絶え絶え。
黒尽くめの男が、ペンチで固定されている記者の爪をはがす。
記者は叫ぶ「アーッ」
気を失う記者。
水をかける他の男。
部屋の片隅でマージャンをしている。
女はどんぶり飯を食べている。

見晴らしいのいい丘 晴天
墓地にひとりたたずむ壬生。
さとみの墓があり、花束とお線香がある。
手をあわせている壬生。
墓を見上げて、
壬生「さとみ・・幸せにできなかったこの俺  を許してくれ・・ごめんさとみ・・さと  み、お前を殺した奴を復讐してやる・・
(手を握り締める)俺たちの幸せを踏み潰したあいつらに目に物みせてやるからな・・今に見ていろよ・・志田・・」
ポケットからハーブを取り出し大きく匂いを吸い込むと空中にばら撒く。
風で舞い上がるハーブ。
壬生(叫ぶ)「山田!」

国会 内
壬生の席は欠席。
警察署長(汗を拭きながら)「現在も調査中ですが、なにぶん事が重大なだけであって慎重に捜査しています」
志田のところに金田が来て耳打ち。
野党議員の声「署長約束の期限を過ぎましたので解任を要求します」
金田(小声)「先生奴は今行方不明です。事務所にも自宅にも戻って来ていないようです」
警察署長はしどろもどろ
志田(警察署長を見て)「あの野郎まだ見つからんのか?何の情報もないな。いいか奴の持っている資料は俺を破滅陥するくらいの代物だ・・なんとかしろ・・わかったな・・お前の将来がかかっていることを忘れるなよ」
金田「はい・・必ず始末します」

警察署長「はい引き続き全力を尽くします」

林の中
壬生は拳銃を構えている。
前方には缶がある。
その脇には練習の玉跡が残されている。
空き缶が無数に転がっている。
狙いを定めて撃つ(バーン)
缶がはじき飛ぶ。
腕の傷を気にする。
林の中で走ったり、転がったりしながら拳銃を構える。

中国 香港
接待されている志田とその仲間たち
中国人と志田派の連中は和やかに時には笑い話している。
志田は中国人におべっかを使っているようだ。
志田の隣には中国美人が座り接待をしている。
ご満悦の志田。

地下室 2
ロープが外され、一人取り残された記者。
身動き一つしない。
椅子から転げ落ちる。
血の海の中に倒れる。

壬生の別荘
ランプの光を見つめている壬生。
あたりはシーンと静かだ。
突然ガチャというノブを回す音が聞こえる。
とっさにランプを消す。
機械音(ピッキング)がしてドアが開く。
重い足取りの革靴(タバコ踏んだ靴)の音が響く。
懐中電灯があちこちを照らしている。
壬生の方に来る。
とっさに壬生は男の背後にまわり押し倒す。
腕を後ろに回し身動きできない男。
壬生「おい・・誰に頼まれた・・」
男は何も言わない。
壬生「言え!」
男は身を入れ替え壬生を倒し、もみ合う。
馬乗りになり男は拳銃を取り出す。
それを阻止する壬生。
男の弾(バン)が壬生の脇をかすめる。
壬生は巴投げをして男を投げる。
拳銃が床に落ちる。
壬生「お前・・あの事件の実行犯だな・・トウメイヨウ・・」
男は壬生にタックルする。
壬生は壁に押し付けられる。
壬生は男の首を絞める。
男は苦しくて暴れるが、徐々に力を失う。
ぐったり倒れる男。
壬生は男の服の中を探るが何もない。
息の荒い壬生は、男の死体を見つめている。

料亭 いちの 1 夜
盛り上がっている宴会場。
芸者が踊っている。
酔って芸者と踊っている議員。
次々と運ばれる豪華料理の数々。
志田は上機嫌。

料亭 いちの 2 玄関前
物々しい警備員の数。
そこへ一台の車が突進してくる。
料亭の玄関でぴたりと止まる。
緊張する現場の警備員。
運転席から壬生が下りてくる。
警備員1「壬生先生・・困ります・・」

壬生は玄関から中に入ろうとする。
警備員に止められる壬生。
警備員1「申し訳ありませんが、先生は招待者リストにはありません。招待者ではないと中には入れません」
壬生「おい俺をなんだと思ってるんだ・・国会議員の壬生だ!」
警備員「存じ上げております・・」
壬生「わかってるんならさっさとどけ!」
警備員1(困り果てて)「少々お待ちを」
警備員1が玄関に入っていく。

仁王立ちをしている壬生。

料亭 いちの 宴会場の中
金田が携帯を持ち話している。
志田の席に金田が行く。
志田の耳元で話す。
志田「なに・・壬生が・・あいつ、のこのこと来たのか・・飛んでいる火に入る夏の虫だな・・今度こそ捕まえろよ・・うまくいったら金田、おまえにワシの娘をくれてやってもいいんだぞ。わかったなここで手柄をあげろ、よっ、なっ」
金田は深々と頭を下げる。

料亭 いちの 玄関前 3
警備員1が壬生に駆け寄る。
警備員「確認が取れました。どうぞお入りください」
警備員たちは道を開ける。
壬生のボディチェックをする警備員。

料亭 いちの 廊下
配膳係の男がすれ違う。
拳銃を受け取る壬生。
廊下で酔った議員。
フラフラになりながら壬生を見つける。
議員「おまえなんだー壬生じゃねーか?お前なんでここにいるんだあーおまえの行くとこなんてもうどこにもねーんだよわかってるのかよ・・売国奴のくず野郎」
壬生は無視して通りすぎる。
議員「こらー志田派をなめんなよ・・」

料亭 いちの 宴会場 前
警備員が2名立っている。
壬生「壬生です・・」
静かになる宴会場。
志田の声「入れ」
障子を開けると壬生を見つめる議員達。
志田はにんまりしている手招きをしている。
壬生は志田に近寄る。
警戒する志田の周囲。志田秘書と金田。
壬生「志田先生・・どうか私に汚名挽回の機会を与えてくださいませんか?」
志田「なんだあーやぶからぼうに・・お前になにが出来るっていうんだ。俺のあら捜しか?」
周りの人間は冷笑する。
壬生「いえ違います・・」
志田「なあ壬生よく考えろ・・裏切った人間がまた頭下げてお願いしますだ?どこの世界にこんな裏切り者を信じるお人よし
  はいるか?キリストみたいにユダの裏切りで俺が磔にされるのか?馬鹿馬鹿しいふざけるのもいい加減にしろ馬鹿が!」
壬生「違います。、金田が報告したものは全て捏造であり、つくられたものです。私は誠実に政治活動をしています。理解してください」
金田「おい見苦しいぞ、この場に及んでまだ嘘をつくのか?」
壬生「金田、おまえは俺にことあるごとに嫌がらせをしてきたな・・・山田さんをやったのはお前なんだろ・・俺を襲った奴らもお前が仕組んだ・・舐めるなよ。金田、そしてテロ事件の首謀者は志田!お前だって事はもうばれてるんだぞ!俺はお前らを許さん!」
志田「とうとう本性を現したな青二才が」
大爆笑する志田のバカ笑い。
つられて笑う宴会場の議員。

殺戮 スローモーション
壬生は懐から拳銃を取り出し、
志田の頭に一発ぶち込む(バン)
血しぶきが飛び散る。
金田に向けて撃つ(バン)
金田は障子に倒れる。
配膳係の仲間たちが次々と代議士に向けて発砲する。
次々と凶弾に倒れる代議士たち。
逃げ惑う芸者。
{スローモーション 終わり}

警備員が駆けつける。
壬生が撃たれる。
警備員と仲間の撃ち合い。
仲間が次々と警備員を撃ち殺す。
仲間が壬生を担ぎ上げる。

料亭 いちの 廊下 3
キャーという悲鳴で逃げ惑う芸者。

料亭 いちの 裏口
おかみが裏口を開ける。
担がれた壬生と仲間を逃がす。

料亭 いちの 宴会場
警備員が宴会場に入る。
累々たる死体の数々。
志田の死体。
金田はうめいている。

ニュース
キャスター「緊急ニュースです。本日夜間未明料亭いちのにおきまして国会議員の志田代議士及び志田派の幹部数名と中国人と見られる数名が何者かによって殺害された模様です。なお全員の死亡が確認されています。尚犯人は逃走中ということです」

地下室 (暗い)1 
暗い部屋のソファに座っている男。
無言でテレビを見ている。

高層ビル 朝
朝日がオフィスに入る。
忙しく働く活気ある職場の人達。
先生に連れられた小学生の遠足。
噴水広場にたたずむ人達。
レストランでおしゃべりしている主婦たち。
生き生きとした植物。
1階案内カウンターのさとみは忙しそうにお客の対応をしている。

地下室(暗い)2 テレビ画面
大画面に金田がテレビに出ている(無音)
金田とその他の出演者が話している。
金田は包帯を巻きつけ、その姿は同情されるには十分なほど痛々しい。
壬生の指名手配の顔写真のアップ。

某雑誌社 編集長室
編集長が手紙を読んでいる。
読み終えてSDカードを手にしてしばらく見つめる。
部屋の金庫にこのカードを入れる。

 高層ビル 崩壊
徐々に砂煙をあげ崩壊していく高層ビル。

終わり

テロ 汚された時間 作成 谷中正典

近末来の出来事!?
もし、都市にサリン以上に強力な化学兵器による事件が起こったら・・・
愛する人を悲惨な事故で失ったら・・・

なんの変哲もない、ごく普通の日の出来事
都心の超高層ビルにおいて、サリンのような化学兵器で、ビル内にいた数千人の命一瞬のうちに犠牲になる。

犠牲者の中に主人公の恋人がいた。
この事件は、単なるテロ事件ではなかった。
某国と国会議員が深く関わった事件だった。
事件の解明がなかなか進まない。
事件の真相が徐々に明らかにされていくが、邪魔者は消されていく。
大物政治家を失脚させようとする謎の集団。
事件解明に繋がる有力な情報源が入ったSDカード。
主人公は何度も命を狙われ、事の重大さに気づき復習の鬼となる。

主人公は決定的な証拠をつかみ暴露するか悩む。

事件の真相は長引いていた。
事件のことをうやむやにしていこうとする圧力が国会議員全体に及んでいく

とある日を皆殺しをする決戦日と決め、関係者一同を抹殺する。瀕死の重傷を負いながら逃亡する主人公。
この事件後、テロの首謀者は主人公ということで、主犯格として指名手配される。

登場人物

主人公 壬生   三十五歳
主人公の恋人 さとみ 二十五歳

大物代議士 志田  六十八歳
代議士秘書 志田秘書 六十四歳
志田の子分 金田   四十歳

謎の組織リーダー 越智 五十歳

新聞記者  新聞記者  三十三歳

主人公の先輩議員 山田ともじ 三十八歳

OL 智子 二十八歳
   翔子 二十二歳
 
黒靴の男    三十歳
 
謎の組織の関係者 小男 


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