XM Anomaly stats talk: Superposition München

来たる12/10に横浜でのEpiphany Dawnアノマリーが近づいてきたので、ということで最近のアノマリーの振り返りということで夏頃に同人誌で書いた記事を転載してみます。(明日はEpiphany Dawn Phase1の話、明後日は横浜の展望の話をやりたい所存)

XMアノマリー@ミュンヘン

去る2022年7月30日に、ドイツはミュンヘンにて、およそ3年ぶり(*1)となる「全部入り」のIngressのイベント、XMアノマリー(*2) Superposition Phase1が開催された。

(*1) 新型コロナウイルスの発生・流行によりイベント開催が長らく見送られていたため。
(*2) 位置情報ゲームIngressにおける、大規模戦闘イベントの呼称

XMアノマリー自体は今年(2022年)の1月から、以前よりはかなり運営を簡略された形で再開されてはいた。現地での集合ブース等の設置はなく、単にゲームデータ上のゾーン設定とルール運用が行われるだけのスタイルである。
簡略化の代わりに1開催日での開催地が爆発的に増加(*3)していた。また各エリア内での実際の戦闘ルール内容も、中断期間中に実装が進められていた新機能:バトルビーコン(以下BBと表記)を使った、だいぶ簡略化(*4)されたものになった。

(*3) 以前は全世界で6-15都市程度での開催だったが、今年に入ってから行われたシリーズでは(おそらくは機械的に)100エリア程度、場合によってはそれ以上を対象に選んでの開催となっていた。
(*4) 指定エリア内で運営側が発生させるBBでの勝利状況に応じて得点が入る、というルールで開催されている

エリア設定が超高密度地をやや避けたり、あるいは想定人数に比しての従来の密度感よりはやや広めにエリア設定されていたという事情も手伝って、従来のXMアノマリーよりは人が密集しにくい、言ってしまうとやや漫然としたものになりがちなゲーム設定にはなった(*5)
また、開催予告から実際の開催日までの間隔がかなり短期間化されたのも以前に比しての大きな変化で、2019年までの各シリーズでは遅くとも2-3ヶ月前にはなんらかの予告があってからの開催になっていたものが、今年の各シリーズは良くて1ヶ月前、場合によっては本予告から1-2週間程度の期間しかないという状況での開催が続いていた。
このぐらいぎりぎりの予告となると(主に飛行機のチケットの価格設定問題(*6)、あるいは単純に直前すぎて調整が付けにくいという事情により)、以前よりは遠征に行きにくい条件にはなった。
ただ遠征には行きにくいが開催地の方も爆発的に増えたため、少し脚を伸ばせばどこかの開催地にはアクセスできる可能性は高まった。また開催期間前後にはプレイヤーが自ら使用したBBもXMアノマリーのスコアに(割合は小さいながらも)算入されるルールも加わったため、「遠すぎて全く参加できない」という感覚はかなり緩和はされた。
ただ、XMアノマリーに少なからず心を奪われた(*7)人種としては「近場で行けそうなどこかに行く」という感じにはなっている。しかし月に1回近い高ペースでの開催頻度(*8)で、開催されれば日本国内で複数箇所は指定エリアが発生するという状況はプレイヤーコミュニティにとってはかなり負担の高い状況であった。

(*5)まだ新型コロナウイルスの流行が断続的に続いている状況下での実験的な再開なので、この変更自体はやむを得ないし納得できるとも思う。
(*6)1ヶ月前予告だと発表即決でまだ安いチケットにギリギリ滑り込み、1週前予告となるとだいぶお高くなってきたチケットに手を出さねば現地に行けないということになる。
(*7)実世界で数百人規模、過去最大のものでは1万人規模のプレイヤーを集めて1つの大きな戦闘ゲームを行うイベントというのは、(実際の戦争でもない限りは)人生の中ではなかなか遭遇できない類のものだろう。
(*8)2019年以前では、世界全体で平均して1.5-2月に1回程度の開催、日本国内だと半年に1回程度の開催だった。

流石にそんな不満の声が届いたのか、はたまた当初からの予定通りだったのか、「今年1年はこの形式で色々試す」と言っていた運営の方針は7-8月開催のシリーズSuperpositionから若干変化を見せた。
指定エリアでの集中的な開催(*9)については、7月は世界で1都市ミュンヘンのみでの開催、続く8月は立候補した中から世界10都市を選んでの開催ということになった。

(*9)シリーズ全体ではその他に全世界の特定週末での全バトルビーコン戦を対象とした計測と、XMアノマリー開催期間に重なる指定されたセルでの地域スコア戦についての計測のルールが加わる

ということで7月の1都市に選ばれたのがドイツのミュンヘンである。
選ばれた、とは言うが実は元々ミュンヘンでの単独開催として2020年5月に予定されていたRequiemアノマリーが(パンデミックの影響で)延期され、2年越しにシリーズ名も変わってようやく開催にこぎつけた、というものだ。おそらくは、ここからが本格的なXMアノマリーの再開、といった象徴的な役割も含んだ開催なのだろう。

これは本当に「フルスペックの」という前置きがふさわしいイベントで、単にXMアノマリー本戦だけでなく、デッドドロップ(*10)、集合写真、アフターパーティ(*11)、Operation Portal Recon Live(*12)、ミッションデイ(*13)と本当にフルパッケージでのイベントが開催された。

(*10)情報や景品などを市中に隠し、その場所をSNS投稿して探させる遊び。スパイの情報の受け渡し方(dead drop)を模したものである。
(*11)XMアノマリー本戦後に行われる、ステージショーと結果発表を合わせたイベント。結果発表の瞬間勝った側は大変に盛り上がる。
(*12)新たなポータルを生やすための審査を、エリア・参加者を限って爆速で行うようにする有料イベント。申請したポータルがその日のうちに生える、ぐらいの感覚で行われる。
(*13)所定のポータルを巡る「ミッション」という機能を、特定の都市で皆で集中的にやろう、というイベント。XMアノマリーに開催されていたほか、ミッションデイ単独でイベントとして行われることもしばしばあった。

前置きが長くなったが、これはその久々のXMアノマリーっぽいXMアノマリーについて、やはり久々に書く結果解説記事のようなものである。
とはいえ運営が簡略化されたのは結果発表にも及んでおり、以前に比べて事後に得られる結果レポート(*14)の内容もまた大幅に簡略化されてしまっている(*15)。流石にこれを元に語るには限界がある。

(*14) https://ingress.com/news/2022-superposition1-results/
(*15)特にシャード戦についてはかつては準公式的なサイトが全移動ログを残してくれていたのだが、現在では結果のみが掲示され過程は振り返れない状況となってしまった。


ということで遠隔から観戦した記憶頼りの部分も交えた話になる(*16)が、そんな記事でもお付き合い願えれば、といったところである。

(*16)しかも観戦に夢中でログやらスクリーンショットやらはほとんど残していない。

ルール

SuperpositionアノマリーPhase1は、スコア上は以下の4競技で争われる

  • (主開催地)運営BB[130]

  • (主開催地)シャード戦[130]

  • (全世界)コネクテッドセル戦[130]

  • (全世界)プレイヤーBB[130]
    ただし[]内はそれぞれの配点である。

このうちコネクテッドセル戦、プレイヤーBB戦については(ミュンヘン開催ではないので)本稿では説明を省く。

運営BB戦

おおよそ20分に1回の間隔で、運営の手によりエリア内の複数ポータルにBBが設置され、この勝敗を争う。
使用されるのはレアBB(*17)と呼ばれる種類のもので、設置13分/16分/19分後の3回の計測時点(CP=Check Point)での当該ポータルの所属陣営によってスコアがカウントされる。各回の基礎点は2/3/4点だが、これに実際に発生した戦闘の激しさによって決定される「バトルカテゴリ値(*18)」による倍率(1-1-1-2-2-3)を掛けたものがそのポータルから得られる素点となる。
また、設定されるBB対象ポータルの中にはボラタイルと呼ばれる高得点の対象も含まれ、これは倍率が(バトルカテゴリに寄らず一律で)5倍となる。

(*17)他にベリーレアBBというものがあり、計測タイミングや計測回数、各計測回の配点が異なる。
(*18)カテゴリ1-6までの数値が全計測終了後に確定する。

3時間の開催期間中にBB設定は都合9回行われ、全9回の設定回の素点の合計のうち、最大の素点が陣営スコアとして採用される。
陣営スコアは敵陣営のそれと比較され、その比に応じて130点のアノマリースコアが分配される。

シャード戦

シャード戦は、全部で65個発生するシャード(破片)を、陣営ごとに設定されたゴール(ターゲットポータル)に移送するという球技を模したゲームだ。

シャードは所定のレベル以上のポータル同士のリンクに沿って、基本10分間隔のターン毎に移動する。ただし、過去25分以内(*19)に居たことのある場所には戻らない。また25分間移動しなかったシャードが次の移動機会(*20)にも移動しなかった場合はランダムジャンプが発生する。

(*19)実質的には2ターンだが、追加ターン(後述)が絡むため例外となるケースがある。
(*20)同様に実質的には「3ターン続けて移動しなかった場合」だが追加ターンが絡むと例外となる。

シャードはゲーム開始時より1分、21分、61分、101分、121分の時点で各13個ずつ発生。ゴールは1分、41分、81分の各時点で陣営ごとにそれぞれ4個ずつ発生する。

ターゲットに到達したシャードは以後移動しなくなる。
到達時の得点は少し複雑で、ゲーム前半では1個1点、ゲーム後半(開始+90分以降)では1個2点となる。また、最終的に陣営ごとに12個発生するターゲットには6個までという得点化上限が設定されており、同一ターゲットへの7個目以降のゴールは得点にならない。

シャードゴールにより得られた得点の合計がそのまま陣営のアノマリースコアとなる(*21)

(*21)取りこぼしたり前半に入れたぶんの得点はそのまま失われ、どこかに加算されたりはしない

事前情報と追加シャードターン

本戦前に実施される「GORUCK Stealth Ops(*22)」「GORUCK Urban Ops(*23)」内での結果に応じて、各陣営にはいくつかの事前情報(BB戦ボラタイル発生情報、シャード戦シャード/ターゲット出現情報)が提供される。また、Stealth Opsの最終勝利陣営にはシャード戦中に1回の追加ジャンプの発生を(ゲーム本戦開始前に)指定することができる権利が与えられる。

(*22)アメリカのミリタリー系アパレルブランドGORUCK主催による、重い荷物を背負ってグリーンベレー式の軍事教練を模した行軍・訓練を行うという肉体系イベント、のうち夜間に行われる長時間でタフな方。GORUCKは元々(Ingress以前より)その種のイベントを開催していたが、なにをどうしたわけかIngressと謎の合体イベントをも開催するようになって現在に至る。
(*23)同様に、昼間に行われる比較的短時間でお手軽な方。

事前予測

BB戦自体は今年のそれまでのアノマリーシリーズでも開催されてきており、両陣営ある程度戦い方は把握している状況にある。

厄介なのはバトルカテゴリによる倍率ルールだ。戦闘規模を高めてしまうと急激に倍率が上昇してしまうスイートスポット的な倍率設定となっているため、この半年弱の経験から「負けそうなときは深追いを避けて撤退して他に回った方がいい」という経験則が既に確立されている(*24)
このこともあって、これまでのBBアノマリーでは(従来に比べ)戦闘回避的な動きを両陣営が取るようになってきており、戦闘イベントとしては若干消化不良感が残るような設定(*25)となっている。
しかし今回は倍率一定となるボラタイルが設定されたため、そこでは(久々に)戦闘が激化することが予測された。また、シャード戦に関わるポータルでも戦闘が激化することは予想され、ポータル同士の距離によってはBBが実施されていてもお互い激しくやり合うしかない、という状況が生まれかねない。そのあたりがゲーム全体にどういう効果をもたらすか、といったあたりが観戦上は注目される点だった。

(*24)ただし現場においてその判断が厳密に守れるかというと必ずしもそんなことはない。
(*25)ただしコロナ禍下であるので、過度に集まりすぎない自律を促す適切な設定だとも思われる。

シャードの得点が後半になると倍になる---というか満点を稼ぐためには前半はシャードをやらず後半になってから勝負するようにしないといけないのだが、そのへんの対応をどうするのかという選択もまた陣営を悩ませる要素だと思われた。

また、ドイツは(何故か)IngressにおいてはRES陣営が数的優位を誇っている地域であり、今回のXMアノマリーでもRESが数の優位でもってENLを圧倒するおームを行い、それに対してENLが(数的不利でも戦略面の工夫での挽回が比較的容易な)シャード戦を中心にどう対抗するか、という点が勝敗の鍵となるだろう、と目していた。

観戦

前哨戦

XMアノマリー自体は現地時刻14:30から開始されるが、実質的な戦いはその1時間ほど前から始まった。
開始時刻-60分頃に、ENLによる全面免疫(*26)が実行され、インパクトゾーン(*27)内が一面青色(*28)に変化した。
続く動きはそこから30分ほど後、真っ青な盤面を利用する形で(*29)、RESがエリア中心部の市庁舎内と思しきポータル(*30)を使ってエリア全域を支配するノヴァ(*31)を作成しはじめた。
対してENLは北側エリア外の公園の池?の中洲にある(*32)Japanese Teahouse(茶室)ポータルからエリア内に向かって対抗するような形でノヴァの作成を試みるも、あまり有効な一手にはならず、対抗しきれるような形までは育たなかった。

(*26)あるポータルに反転アイテムJarvis Virus(青→緑)もしくはADA Refactor(緑→青)を使うと、その後60分間は反転アイテムの使用が拒否される(使用しても効果を発揮しない)状態になる。そのときのメッセージにimmuned(免疫済)という言葉が含まれることから、このルールを利用して反転禁止時間や再反転可能時刻を調整したりする行為がプレイヤー用語で「免疫」と呼ばれるようになった。
(*27)事前の予告点灯にて今回のアノマリーの実施範囲と定められたエリアのこと。この範囲内でBB/シャード/ターゲットは発生することになる。
(*28)ENL(緑)陣営が構築できるのは緑ポータルなので、そこから反転を仕掛けると青にならざるを得ない
(*29)ポータル間を結ぶ「リンク」は自陣営色のポータル同士しか結べない。従って、一面青となった状況では必然的にRESしかリンクを引けない状態になる。
(*30)地下鉄駅からインレンジする場所にあるため、移動中に触ることができるような場所を選択したのではないか、とのこと。
(*31)1個のポータルから周辺の複数のポータルに対してリンクが放射状に伸びた状態を指すプレイヤー用語。Starburstとも呼ばれる。
(*32)橋のあるところまで回り込まないと辿り着けないと思われる位置で、破壊しようとする敵に若干の時間ロスを強要する狙いで選定したポータルだと思われる。

結果的に、ENLはBB戦に対して、RESはシャード戦に対しての備えをした形で本戦開始時刻が到来することになった。

開戦〜前半戦

開戦し、まずは最初のBBが点灯、続いて初回のターゲット各陣営4個ずつが発生する。その配置はエリア西側に南北に直列して交互に8個が並ぶ、一直線のような配置だった。あんまりにも雑な、と一見思うかもしれないが、これはこれで公平な配置である。どこか1箇所のターゲットが周囲にリンクを伸ばしていくと、自然と他のターゲットの邪魔をしていくような形になることが予想されるため、ゲーム展開としても面白くなりやすそうだ。以前アメリカはニューオーリンズだったかで前例のあった配置である。ニューオーリンズの場合は(確か)川沿いのポータルが選定されていたが、今回は本当に街のド真ん中、メインストリートらしきものに比較的沿った形の設定だった。雑は雑だがそう悪い設定ではない。

と、このへんで(結果発表データをまとめ直して)時系列順のスコアの動きを表にしたので掲示しておこう(表1)。

表1 Superposition Phase1 スコア推移

少し表の内容について補足しておく。
「時刻」欄はゲーム開始からの経過時間を分で表記したものだ。
「素点比」欄は公式の数字ではないが、その計測におけるENLとRESのBB素点の比を ENLの素点 ÷ RESの素点 で計算したもので、そのBB計測回における戦況の目安となる。
「BBスコア」欄はそこまでのBB計測最大値(採用予定の素点)同士を比較してその時点でBB配点の130点を分配したときの数字となる。

開幕前後のログから概算した参加人数比ではおおよそENL500人、RES700人といった規模。だいたいRESの方が人数で1.4倍ほど多い模様だった。
BB戦では数の差なりにRESが圧倒気味の展開になる。色々細かいルールはあるが、BB戦は結局のところは単純なポータルを奪い合いゲームである。傾向としては、戦力の2乗比に近い結果が出る傾向にあるので、人数が1.4倍ならスコアでは1:1.96前後の値となることが期待される。実際のBB1回目のスコア515:1315は1:2.55なので人数比よりはややRES有利で、そのぶんENLはシャード戦に力を振り分けている可能性が見て取れた。

一方シャード戦についてはENLだけがまともにやろうとはしているが、RESはほぼ手を付けてない状態となっていた。ただしRESは(開幕前の)市庁舎ノヴァがそのまま継続して盤上に鎮座している状態をまだ維持していた。その存在がエリア全体からリンクを張る余地を大きく奪うため、シャード戦は全体的に機能不全に陥っていた。この頃になるとRES側の戦略がだいぶ見えてきて、前半はこのノヴァを維持してシャード戦はやらない、後半得点が倍になってから挽回するという意図なのだろうと察することができるようになってきた。
+30分頃にRESはノヴァを張り替え(*33)。市庁舎内の別のポータルに起点を移す。これの免疫が切れるのは+90分頃で、ちょうど(シャードの得点が高くなる)後半戦には反転破壊処理できるようになる計算だ。
+41分にターゲットが各陣営に4つ追加で発生。先程の縦列の東側、エリア中央付近に縦に同様に1列である。これは+81分のももう1列増える形になるのだろうな、と流石に察しがつく。

(*33)-30分に開始したので、このへんで免疫が切れる。そこで敵に反転破壊されてしまう前に自ら反転破壊し、タイミングを合わせて別のポータルを中心に新しいノヴァに張り替える動きで、「スイッチノヴァ」などと呼ぶこともある。

こうなってくるとENLの勝機は「前半にどこまでシャード戦を有利に運ぶか」に掛かってくることになると思われた。

ということをおそらく現地でも意図したのだろう。状況が動いたのは+50分ターン頃からだった。その直前頃にRES市庁舎ノヴァが一度破壊されたようで、再構築時に北半分にENLが割って入るようにリンクを引く形となった(*34)。これによりなんとかシャードが動けるスペースが発生し、以後数ターン続けてENLが一方的にゴールを重ねていき、前半のうちに12個がゴールに至った。しかしその代償(ノヴァ破壊のために戦力集中した結果?)としてBB戦の展開はRESにどんどん傾いていく。それを示すように素点比がどんどんRES有利になっている。+49分には(ゲーム中最大となる)素点比4.53/RES素点1522を記録する。

(*34)ここでまたJapanese Teahouseが登場し、以後ターゲットでもないのにENLのリンク網の中で目立つ場所に組み込まれ続けることになる。

+81分に3度目の(最後の)ターゲット発生。やはり更に東に縦に1列。8 x 3の格子、と言い切るにはやや歪んでいるが、そんな形を意図した配置になった。

前半スコア終了(+89分)時点では形式上は168-92でENLリード。しかしこれはRESがまったくシャードを入れていないことによるもので、後半になってから急速に挽回してくることが明らかな状況である。
戦いそのものはBB戦を中心に戦うRES、シャード戦で対抗を試みるENLという戦前の予想通りの図式にはなっていた。しかしENLのシャードスコアは後半を耐えきれるほどには伸びておらず、盤上にはゴールさせられなかった(これから得点が倍になる)シャードがまだ大量に残っている。また、開幕前のENLの全面免疫戦も開幕時点のBBスコアにあまり関与できておらず、むしろRESの盤上制圧ノヴァを(全面を青化することで)手助けする格好になってしまっていたことがわかってきた。

後半戦〜決着

そして+90分に後半開始。ここでいきなり、しかし当然ながらRESがトータルで逆転を果たす。シャード得点が倍になった途端の3ゴール6点でシャードからの最終スコアを0点から39点に一挙に挽回したのだ。
以後はおおむね単調にゲームは進行した。互いのリンクがゴールへの道筋を阻害する中、少ないルートを通して双方少しずつゴールを重ねる。ただ、ペースでは若干RESが上回っており、ゴール数の比は一貫して2:3-3:5ほどのペースで進んだ。ENLは同時に盤面上のゴールルートを減らすために妨害リンクを打つ動きも見せていたが、その妨害リンクは同時に自分たちのゴールの可能性も減らすような動きとなってしまう。
最終的に、後半に限ったシャード素点は32:52(ゴール数だと16:26)となった。シャード戦のスコアはE44-52Rで終戦。実は(前半と足し合わせた)単純な総ゴール数だと28:26とENLが上回っており、RESがシャード戦を後半勝負と決めてかかった(そのための適切な阻害作成も展開した)のは正しかったということになる。
他の終盤の動きとしてはBB8回目-9回目にかけてENLが突如BB戦への集中を行った(もしくはRESがシャード戦にかまけたか勝利ムードで手を抜いた)ようで、そこまで38-92で落ち着いていたアノマリースコアを48-82まで挽回させたのが最後の動きらしい動きとなった。なお、ここまでのENLのBB戦はどちらかといえばボラタイルに主眼を置いたスコアで、概ね非ボラタイル:ボラタイルのスコアが1:1に近い比率が並んでいたが、最終9回では非ボラタイルからの点数が大きく伸びており、最後に少しやり方か状況かが変わった可能性が見て取れる。

以上にて、ミュンヘンアノマリーはトータルスコアE92-134Rにて決着した。

戦評

ドイツ南部あたりでの過去のアノマリーの例や過去のミュンヘンにおける戦績からも、RESが数的に優位になること自体は予想の範疇ではあった。なので数よりは質が効いてくるシャード戦をENLがどう戦うか、というあたりが元々勝敗を分けるポイントではあった。
ただ実際に当日観測できた1.4倍という数差を跳ね返すのは並大抵のことではない。優位側(RES)の失点をENLが上手く突くか、あるいは挽回の手となりうる作戦を決めるかと言った要素を2-3個重ねることができればENLはなんとか勝利できるかもしれない、という程度の展望のゲームではあった。
果たして、RESは数差を活かして勝ちに行く動きを主体としながら、序盤は(そのままだとENLが比較的有利と見られる)シャードゲームを膠着させることで自らのゲームプランで戦いを進めることに成功した。

この点については、ENLの側に大きな失敗があった、と見ている。ENLは開幕前の全面青化免疫戦という策と、開幕後のシャード集中という形が噛み合っていない、ちくはぐな動きをしてしまった。シャードを重視するなら開幕前に全面を青化するのは逆効果で、それよりは全面を緑化し(*35)自ら盤面制圧ノヴァを仕掛けていく方が作戦全体としては噛み合っていたと思う(*36)
この結果、ENLが勝利を手繰り寄せるのに必要な敵失数を1つ増やしてしまうような格好になった。ENLは前半でのシャード回収率を十分に高められなかったあたりからゲームプランが崩れていった。それにより、後半のRESにシャード戦での得点の余地を十分残してしまった。その原因となったのは、開幕前の全面免疫方法であり、全体を通してみるとそこが決定的な敗着だったのでは、と考えられる。

(*35)免疫をつける反転の実施後に、青色になったポータルを破壊して再構築すればENLでも免疫付き緑色ポータルを作れる。
(*36)とはいえ人数差が大きいため、仮に盤面制圧ノヴァを仕掛けたとしても開幕まで維持できず途中で破壊されてしまっていた可能性は(もちろん)高い

ただ人数差の割には最終スコアはそれほど開いていない。最終的なBBスコア比は1.69で、これは人数差1.4倍から期待できる比の1.96に比べるといくぶん少なめの数値となる。
シャードの点数比はそれよりもっと小さい1.18。こちらは戦略・戦術面の選択次第で数の劣位を覆しやすい数字となるが、だとしてもENLはかなり互角に近い勝負を演じている。1.4倍の人数差があるともっと一方的な展開になったとしても何ら不思議ではない。
総じて順当と言うよりはややRESが弱いという印象の数字なので「ENLは劣勢の中良く戦ったが、それでも人数差を挽回するほどの結果には至らなかった」あるいは「RESにはもっと大勝するチャンスも十分あったが人数さを活かした無難な勝ちで良しとした」というのが全体的な戦評ということにになるだろう。

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