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「サルノベ!〜病院横町の殺人犯」イベント準備記録(長文)

横溝文化祭プレイベント「サルノベ!〜病院横町の殺人犯」
無事、閉幕いたしました。
ご参加くださった皆様
ご出演いただいた回路Rの演者さん・スタッフさん
そしていつもイベントを力強く支えてくださる横溝文化祭運営委員のみなさん。
ありがとうございました。


今回の「サルノベ」イベントを振り返ってみたいと思います。

横溝文化祭は当初から、「本祭」までに、3回のプレイベントを開催することを計画していました。

1回目は市川組映画編集者の長田千鶴子さんトークショー。
2回目は大阪で開催した横溝発表会&読書会。

と、それぞれ趣向を変えて開催。
ですので3回目もまったく違ったアプローチを考えていました。

ちょうどそのころ、横溝文化祭運営委員のひとり、えかてさん猿を切り口にしたブックレビューを編纂中でした。

そんな小説を総称して「サルノベ」と命名したのが、他ならぬ金田一耕助勉強家の木魚庵さん。

もちろん「サルノベ」は、横溝や乱歩の作品にも多数確認されています。

こんな時期でしたので、第3回は「サルノベ」を切り口にしたイベントにすることに決定。

さらに、イベントの芯となる部分をお願いしたのが、横溝作品を通じて御縁が出来た、ミステリー専門劇団 回路Rさん。
すでに乱歩や横溝の作品をいくつも朗読劇として上演され実績も充分。
しかも、ただ読むのではなく、いつもプラスアルファの驚きを提供してくださる劇団さんです。
その、回路Rさんに、朗読劇を打診をしたのが2022年の12月のこと。

年末ということで依頼はしっかり居酒屋で


えかてさん制作の「サルノベ」リストを持参し、この中からどれかを朗読劇にしてほしいと依頼。

こんなクセ強イベントにもかかわらず、団長の吉村さん、副団長の森本さんには、快くお引き受けいただきました。

後日、森本さんがリストから、探偵小説の最初の作品である、エドガー・アラン・ポーの『モルグ街の殺人』をチョイス。ただ、「サルノベ」=『モルグ街の殺人』と並べてしまうのは、ネタバレ的に少々あからさますぎる問題があり、森鴎外が翻訳時につけた和題『病院横町の殺人犯』を朗読劇のタイトルとすることになりました。
『病院横町』という名称は、横溝正史も自身の作品に使用しています。
二重三重の意味で、この和題での上演がふさわしいだろうと。


そして時間は流れて7月12日。
キービジュアル用の撮影。
世界初の名探偵オーギュスト・デュパン役の林正樹さん、語り手の「私」役の森本勝海さん、そして吉村団長にお集まりいただき、暑い中、スタジオをキンキンに冷やしてコスチューム撮影を実施しました。

最後に吉村団長といっしょに


さて。
以前より森本さんの脚本を書籍としてほしい、という声が届いていました。
どうせならイベント会場でシナリオ本も販売できないだろうか。
そんな打診の天丼にも、回路Rさんには快くご快諾いただきました。

かくて2023年、回路Rさんには公演の準備やお稽古でお忙しい間を縫って、
上演作品の脚本執筆
シナリオ本に併録する脚本の執筆
さらには特別収録用の座談会の実施
などなどを並行してお願いしていました。
本当にご協力ありがとうございました。


開けて2024年の1月14日。
回路Rさんのお稽古がスタート。

横溝文化祭側のスタッフはお稽古に立ち会わず、当日を楽しみに。

そして迎えた本番当日。

原作は有名作ということで、ほとんどの方は「犯人」を知っている状態。
なおかつ、シナリオ本編集関係者は、活字で今回の構成・演出まで知っています。
……犯人を知っていて、脚本を読んでいても、それでも! 更に待っていたサプライズ!

この驚きの演出こそ、“回路Rの朗読劇”の真骨頂!
会場大盛りあがりでした!


朗読劇終了後は、森本さんに再びご登壇いただき、木魚庵さんとお二人、作品に関するパネルトークを実施。

森本さんには「モルグ街」を選んだ理由や、演出上の工夫、そしてみんなが驚いた「あの演出」の裏側などをお話しいただきました。

木魚庵さんからは、ミステリーに登場する猿という切り口でお話しいただきました。

「その頃の日本文学界に『モルグ街』が与えた影響は大きい。人間が犯罪を犯すということは、“人が猿並みに堕ちてしまう”ということを、観念として植え付けのではないか」
という分析をお話しいただいただき、皆さん大きく頷く場面も。

 また横溝作品に登場する猿という点では
「横溝はコナン・ドイルのシャーロック・ホームズものの『這う男』に何かしら啓発をうけて『獣人』という作品を書いている。『獣人』を書いた時、横溝は結核で上諏訪で療養をしていた。頭では物語が作れるけれど、身体が弱いので書けないという時期。なので、強靭な肉体がほしいという気持ちが『這う男』に惹かれたのではないか。おそらくそこから、優秀な頭脳を強靭な肉体に移植すれば完璧なスーパー超人になれるという発想で、生まれたのが『怪獣男爵』ではないか」
と解説いただきました。

 人間が、猿に投影した欲望や願望にも思いを馳せることができた、パネルトークとなりました。


休憩をはさんで第二部は「古本ドラフトおもちかえり会」
施設からの寄贈や、個人からの寄付本に、新たな読者を見つける催しです。

今回は横溝関連&サルノベ関連がテーマ。
おなじみ角川文庫あり、研究雑誌あり、コミカライズあり、同人誌ありと、探究心を刺激されるラインナップ。
先ほどのパネルトークで話題に登った本も実際に並べられていました。

皆さん思い思いの本にドラフト入札をして(たまにバッティングしてじゃんけんになって)、どんどん本が無くなっていきました。
司会者や登壇者、出演者の皆さんも参加して、こちらも大盛況でした。


今回、会場装飾には横溝クラフト手芸部副部長である「おさむし工房」さんに全面バックアップを、ペーパークラフトで風々子さんにご協力をいただきました。


改めまして、ご協力、ありがとうございました。



いよいよ2024年後半は、プレイベントではなく、横溝文化祭「本祭」への準備やエントリーが始まります。
皆様、引き続きどうぞ、ご協力・ご参加をお願いいたします。

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