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『silent』と『エルピス』の最終回について。


『silent』と『エルピス』の感想記事を書いていましたが、最終回のことについて書かないと、なんか気持ち悪いなということで、まとめて書きたいと思います。

※以下ネタバレあります※

まずは『silent』。
ハッピーエンドでしたね~。冒頭の付箋に思いを書きまくるシーンは泣けました。

そして中盤の黒板のシーン。
「いや、教室て!どんだけ学生時代で止まってるねん!」とは思いましたが、学生時代の回想シーンとの重なり具合や、黒板の文字をぐりぐり手で消したりと、演出面において教室というチョイスしかなかったんでしょうね(ホワイトボードぐりぐりはなんか見てられませんもんね)。
そんなひねくれた見方もしていたので、なぜか付箋のシーンよりは個人的に感動は薄れていたのですが、一番心動かされたのは、紬が手話で言った言葉。

人それぞれ違う考え方があって
違う生き方してきたんだから
分かり合えないことは絶対ある
他人のこと可哀想に思ったり
間違ってるって否定したくもなる
それでも一緒にいたいと思う人と
一緒にいるために
言葉があるんだと思う

ここ、めっっっちゃよかったですよね。。
この思いって、ろう者と聴者とか関係なく、人と人との間に絶対起こりうるもの。
「それでも一緒にいたいと思う人と、一緒にいるために、言葉があるんだと思う」
いや、ほんまにそうなんすよ。。
言われてみたら確かにそうやねんけど、意外と見落としがち。
大切な人と一緒にいるために必要なことを、紬が教えてくれた場面でした。

ここのシーンでもあったように、最終回で改めて気づかされたのが、このドラマのテーマが「言葉」だということ。

想が学生時代に書いた作文のテーマは「言葉」について。
奈々が花を買った理由は、音はないけど「言葉」があるから。
劇中で紬が聴いた、二人の大好きなスピッツの『魔法のコトバ』。
最後に想が紬にささやいた言葉は何なのか。それは「魔法の言葉」で、「二人だけにはわかる」ものなのでしょう。

そしてヒゲダンの主題歌『Subtitle』のサビにある「言葉はまるで雪の結晶」。かすみ草が「雪の結晶みたい」ってありましたよね。
すごい。すごすぎる。。
観る者を感動させる仕掛けが存分に入っていて、最後まで「言葉」というものを大切に扱っていたドラマでしたね。

フジテレビの対談番組「ボクらの時代」で、脚本家の生方美久さんはじめ、監督とプロデューサーの製作陣の回を見たのですが、生方さんが「単なる当て馬を作りたくない」的なことをおっしゃっていたのが印象的でした。
要するに、主役二人の恋愛関係を邪魔するライバル、嚙ませ犬的存在のことですが、生方さん曰く、普通にその役割だけを担わせるのが嫌いだと。
その人にもその人なりの物語がある。だからこそ湊斗や奈々も魅力的なキャラクターとして描かれ、彼らにも感情移入させられ、いろんな角度から感動させられたのだろうなと思いました。

もう一つ興味深かったのが、全員の思い入れのある回が第5話で、実は脚本・演出的に攻めた回だったと(ハンバーグの回)。
その判断が出来たのも、1話から大ヒットしていたからだと。TVerの視聴回数の記録を打ち立てるなどの結果を出したから、お偉いさんを黙らせることが出来たといった話をされていました。
それもこれも、オリジナル脚本の地上波連ドラだから出来ること。
現在、配信サービスにより当たり前になった”ドラマ一気見”。あらかじめ完成された複数話を見ることが出来ます。
しかし今回のパターンはあくまで、オリジナルの連ドラ。一気見はできませんが毎週の楽しみになるし、制作側も世相を読み取り、リアルタイムでその都度変化する感じが、改めて地上波ドラマの面白さなのだなと感じました。



続いて『エルピス』。
こちらも割とハッピーエンドでしたね。まあ根本的な解決(大門亨の自殺問題)には至りませんでしたが、当初の目的(松本死刑囚の冤罪問題)は果たされた感じですね。

圧巻だったのは、恵那(長澤まさみ)と斎藤(鈴木亮平)のスタジオでのやりとり。
乗り込んできた斎藤の言葉がリアル。世の中の裏側全てをわかりきっているからこそのスタンス。政財界に染まれば染まるほど、”必要悪”というものと付き合っていかなくてはいけないのだなと考えさせられたので、斎藤に対してもどこか悪い人間には映らなかったです。

恵那も狙ってかどうかはわかりませんが(たぶん狙ってない)、大門副総理の闇という絶妙に効果的なカードを切りましたよね。
最後らへん2~3話は、大門がメインテーマだったので、松本さんの冤罪の方にかじを切った時は、「ああ、本題はこっちやったな」と一瞬思いました。

本城彰(永山瑛太)は最後まで出てきませんでしたね~。めちゃくちゃ友情出演でした。

このドラマは実在する複数の未解決事件をもとに作られていますが、主に「足利事件」を題材にされているそうです。調べてみたら、こんな事件だったんだと思うと同時に、『エルピス』が描きたかった、警察やメディアのずさんさを改めて知ることになりました。

ちなみに僕は先日、NHKスペシャルで特集された、「未解決事件・尼崎連続殺人事件」の再放送を観ました。
VTR自体が骨太な内容で、これを作ったスタッフの精神から、「エルピスやん。。」と感じました。
また実際に行われた警察の対応とかも、まさしく『エルピス』が斬りたかったもので、観終わった後確実にず~んってなる胸糞悪い内容ですが、実際に日本でこんなことがあったんだと衝撃を受けるので、興味のある方はぜひ。


冬ドラマ面白かったですね!
系統はだいぶ違う2本でしたが、共通して脚本が最高の良質なドラマでした。またハマったドラマについては気分で書いていこうと思います。それでは!



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