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『silent』第6話の感想。このドラマの凄いところ。


※ネタバレが含まれます。お気をつけください。



TVerの見逃し配信で、記録的な視聴者数を獲得しているドラマ『silent』。
何やらTVerのサービスが始まって以来、史上最高視聴者数まで上り詰めたそうで、間違いなく2022年を代表する巨大コンテンツです。

毎週木曜夜、日本中がもうメメに首ったけです。「メリーに首ったけ」みたいに言いました。
いや首ったけてなんやねん。「メリーに首ったけ」でしか使ったことないわ。

そんな僕もハマっている一人。この『silent』の感想を度々書いてきました。
最新回6話の感想を、4~5話の流れもちょいちょい含めながら書いていきたいと思います。




6話の冒頭では、想(目黒連)の大学時代、耳が聞こえなくなったあたりの様子が回顧されていきます。

補聴器を付けながらの生活。
イヤホンをしていると注意されたり、同級生に必要以上に大声で喋られたりと、完全に聞こえていた時の生活とのギャップに毎日苦しんでいる想。
そんなある日、ろう者向けの就活セミナー(ということは大学3年か4年)で初めて桃野奈々(夏帆)と出会います。

来ましたね、夏帆さん。
この回は夏帆さんの魅力が出まくっている回です。

筆談で優しく想の悩みを聞くなどして、そこから奈々は、想にとって、ろう者になってから初めて出来た理解者、友達になります。

でもただの友達なんかで終わるわけないやん。
だって想、かっこよすぎるもん。
奈々も思ったでしょうね。
「え!?バリイケメンが悩んでるやん!助けてあげよう!」と。
たぶんセミナーで出会った想がそんなに男前じゃなかったら、声かけてなかったかも。性格悪い考えですみません。


いやそらメロメロになるでしょう。

6話の最後、また想と奈々の学生時代のシーンに戻ります。
手話を覚えたての想に、「まだ全然下手だけどね」とからかう奈々。
そんな奈々に想。
「奈々にだけ伝わればいいから。」

、、、、、凍り付いた心には太陽を~♪

ギューーーーーーン!!!!!めめーーーーー!!!!
そんなん言わんといてーーーーーー!!!!!

です。
これからキュンとした時は、このBGMが頭の中で流れますよね。


でもですよ?でもですよ?
想にとって奈々は「大切な存在」止まりなんですよね。

想と湊斗(鈴鹿央士)の焼肉屋のシーン(いや別れたてで、恋敵とメシ行くってどんな神経してるねん!ええやつ過ぎて逆に怖いわ!友情が上回りすぎやろ!別にええけど!)で、紬(川口春奈)と奈々が、それぞれどんな人か、湊斗が想に聞きます。
答えた想に対して湊斗が、
「好きな人は好きなところ、普通な人には立場とかプロフィールのみを説明するんだよ」的なことを言います。
前者は紬、後者は奈々。

想はん。そらあまりに殺生でっせ。言うてはりましたやないの。
「奈々にだけ伝わればいいから。」って。
そら真に受けるって。好きになるって。

顔がタイプじゃないんかな。
わかる、わかるよ想くんその感じ。なんとなく、同じ男としてその感じ。
まあでも僕は夏帆やけどな。


その後、最近想が、聴者の女の子(イヤホンの女の子、紬のこと)と仲良くしているんじゃないかと不安になる奈々。
ショーウインドウに映るハンドバッグを眺めたり、想と電話で待ち合わせや、手をつないでデートする光景をイメージしてみたり。
「手話」という、ろう者にとって必要不可欠なツールによって出来ない数々のこと。

もし想が好きになったライバルが、自分と同じろう者だったら。
もし想にかつて聴者だった時期がなければ。
奈々はこんなにも聴者の生活に憧れ、嫉妬し、苦しむことはなかったと思います。


少しドライな言い方ですが、ここがこのドラマの、絶妙にいい設定なんだと今回思いました。

想が生まれつきではなく、中途失聴のろう者。
聞こえていた時期があるからこその、絶望や葛藤。
想曰く、「聴者からも、ろう者からも距離を置いてしまう。」

そして、周りの人たちも、想の“聞こえていた時期”に翻弄されます。
でもそれぞれが、“聞こえなくなった今”に真摯に向き合います。

この部分が、このドラマの切なさを最大限に引き出しているのではないかと思います。



あと脚本もいいですよね。刺さるセリフや言い回しが多いです。

さっき書いた焼肉屋での湊斗のハッとさせられる発言や、バイト先での紬の、「主成分優しさにフラれました」とか。


そして、この回最大のパンチラインは、奈々が紬を呼び出してカフェで想の事を問い詰めるシーンで、「手話を想に教えてもらっている」と言った紬に対して奈々が放った、

「プレゼント使い回された気持ち。好きな人にあげたプレゼント、包み直して他人に渡された感じ」

ちょっとイカツすぎひん、、?(笑)
いや気持ちも分かるけど。自分が一から想に教えたからな。
でも、紬だって想の事が好きで、好きな人のためなら寄り添いたいし理解したいやん。教えてほしいやん。奈々、刺しすぎやって。

にしても二人をこんな状態にさせてしまう想、罪な男やで。

あと、想とのやり取りからも察するに、奈々だいぶ気強いですよね。ズバズバ言うやん。リュックのチャックとかも。見ために反してしたたかな女です。


脚本の生方美久さんは、群馬県出身の29歳。(と、年下!)
去年、フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞し、今回が初の連続ドラマ。
最も尊敬している脚本家が坂元裕二さんだそう。

めちゃくちゃ納得です。
最近でいえば『大豆田とわ子と三人の元夫』や『初恋の悪魔』を書かれた方。
セリフの言葉選びが最高で、一つ一つ大切に聞きたくなる感じ。
『東京ラブストーリー』の「カンチ、セックスしよ!」とかすごいですね。後世に語り継がれるパンチライン。



この回のラストで、奈々がスマホを耳に当て号泣するシーン。
夏帆さんの演技も相まって鳥肌さえ覚えるこのシーンに、みなさん感動したと思います。

改めてこのドラマのすごいところって、

「いろんな人物に泣かされる」

ところだと思います。泣かせるパターンがたくさんある。
見る人によって感じ方は違うし、泣けるタイミングはそれぞれだと思いますが、登場人物一人一人のスポットライトの当て方、感情移入のさせ方がめちゃくちゃうまいと思います。

前回の第5話。
4話のラスト、同級生フットサル大会で突然紬を振った湊斗。
そこから、紬曰く「これって別れてるの?」など、ぬるっと別れる感じ(あの感じがリアルで切なかったですよね。紬の変に明るい感じとか。いやでも急に「青羽」って苗字呼びする湊斗キモいですよね。自分だけ勝手にこれ見よがしな「切り替えましたアピール」すんなよ)になり、落ち込む姿を見てか、紬の親友の真子が湊斗を呼び出します。
ここで普段、女友達にしか見せない紬の様子を湊斗に伝えます。

「紬は普段から好き好きって感じじゃないけど、ふとした時、例えば、美味しいごはんを食べたとき、『これ湊斗にも食べさせてあげたいな』とか、常に湊斗のこと考えてたよ」的な事を言います。

僕、ここで泣きました。(笑)

2人きり、1対1って、相手の想いを全て受け取れそうやけど、それが本当の事かどうかって実際分からないこともあると思います。

実は、第三者から聞いた意見や情報の方がある種、信ぴょう性が高かったりするじゃないですか。
面と向かって本人には言いづらい、照れ臭いことでも、気心知れた友達には本音を言えたりしますよね。
ここが、個人的にジーンと来ました。

そこから”電話ハンバーグ”のシーンに向かうのです。
後押しなのかどうかは置いといて、真子の言葉を聞いて未練が炸裂する湊斗。
あの電話のやり取りも良かったですよね。(いやスピーカーフォン!?弟おるて!はずいやろ!)



想に泣かされ、紬に泣かされ、湊斗にも奈々にも泣かされる。
全員が寄ってたかって、一致団結して我々を泣かしにかかってきます。

これからどんな形で我々の涙腺を攻撃してくるのでしょうか。
続きも楽しみですね。それでは。


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