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あなたもつらいし、父ちゃんも、つらいよ。

1週間ほど前から、養護学校中等部3年生の息子Rが、「養護学校はやめる」と言い出した。

聞くと、「高校生になって、学校で勉強する」という。

どこで知ったのか、youtubeで高校の紹介ビデオまで見せてきた。

おそらく、事の発端は夕食の時に弟(健常児、中2)の受験の話になってどこに行くかという事を家族の席で話していた事や、Rの最近の趣味の漫画で学園生活がある事から、養護学校での、クラスの様子とは全く異なり、いわゆる普通の高校生活というものに憧れを持つようになったものだと思う。

こだわり

Rは一度、こう!と決めた事にはこだわりを持つ。どれだけ私たちが説明しても、その理解ができず、考えを変える事は難しい。
 欲しいものが手に入らない時も癇癪を起こす。先日も、古い漫画が欲しくて中古の本屋や書店を回ったがなくて、キレていた。

 「養護はやめる。高校へ行く」と決めた彼にどう説明するべきか・・・
インクルーシブ教育がどこまで進んでいるか、地域の学校を調べたが、全然知的障害者を普通高校に入れるなんて事は進んでいない。せいぜい小学校だったり、高校はあっても、身体の方をサポートしてます。という内容だったりと参考になるものはなかった。

仮テストを受ける

そんな彼を説得させる為に、言葉では分からないので、入試のテストを少しさせてみた。
掛け算も難しい中で、分数や√の問題、図形など。
まず、問題で何を聞かれているかが分からない。

「教えて」と真剣な眼差しで私に助けを求めるので、「まずは掛け算をしてみようか。」と伝えるが、彼の「教えて」は勉強方法ではなく答えを教えてと言っていると気づいたのは、私が伝えた後だった。

結果として、1問も解けなかったRは寂しそうに、部屋に戻っていった。
悔しさや、自分の不甲斐なさを感じているような複雑で悲しげな表情をしていた。

私だって、普通の学校生活をしたいなら、そうさせてあげたい。
調べると海外(欧米)では、専門のケアスタッフがいて普通高校の中にも知的障害を持つ方が通うところもある。

しかし、ここは日本で、そのような仕組みはない。

悔しかった。彼も私も、自分の力ではできない事がある事に・・・

翌日

朝、起きてからは落ち着いていた。
テーブルの上に置かれたままになっていた、昨日の仮テストの答案用紙を破り捨てるかと思っていたら、そっと手を触れるだけだった。
色々考えていたのだろう。
その前に癇癪を起こす人は、普通高校は難しいと伝えた事もあった。

それを思い出していたのか・・

少し寂しげな様子で今日は学校へ行った。見送る私にバスの中から手を振りながら。

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