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2022年のドイツ政治展望

 2022年に限ったことではないですが、今後1年の展望とか、難しいしいです。2021年のはじめに誰がメルケル首相の後任がSPDのショルツ蔵相になると予想できたでしょうか。私はCDUの党首か緑の党の首相候補(そして2021年の1月だとどちらもまだ人が決定されてすらいなかったわけですが)のどちらかが首相になる可能性が高く、おそらくはCDUを中心にした3党連立内閣になるであろうと考えていました。
 春になると急速に緑の党が勢いを増し、ベアボック共同党首が緑の党の首相候補になると、緑の党を中心としてCDUがこれを支える連立の可能性もあるかと思いました。
 その後、緑の党も勢いを失い、CDUはラシェット・ノルトラインヴェストファーレン州首相を首相候補としてそこそこうまくいくと思ったものの、大洪水の被災現場での不適切な振る舞いからあっという間に低落傾向となってしまいました。
 シュレーダー政権末期から、ずっと低迷していた(2017年春にシュルツ元欧州議会議長を首相候補として一時的に党勢を盛り返した時期もあったのですが)SPDがまさかの党勢回復により、緑の党とFDPとの3党連立(それぞれの政党のシンボルカラーを会わせて信号連立とよばれることも多い)を12月に入って成立させました。
 2022年にはドイツでは国政選挙がないので、連立内部の争いから政権崩壊ということもおそらくなさそうなので、今年はショルツ政権が仕事を着実に続けるということは間違いなさそうです。
 2月13日には連邦集会が開かれ、大統領が選出されますが、これは選挙権を持った市民が代表を選ぶという普通の選挙ではありません。連邦議会議員と、同数の連邦参議院の代表者(連邦参議院は州政府の代表者が参加しているので、それぞれの州議会内の勢力比で各政党が代表者を指名します。そのため、いろいろな人が選挙人になることができます)が連邦大統領を選出します。
 現職のシュタインマイヤー大統領が再選をめざしており、SPDとFDPは既に支持を表明しているので、おそらく波乱はないでしょう。
 政局に影響を与えるのは、3月27日のザールラント州議会選挙、5月8日のシュレースヴィヒホルシュタイン州議会選挙、5月15日のノルトラインヴェストファーレン州議会選挙、そして10月9日のニーダーザクセン州議会選挙です。それぞれの州で政権交代となっても、直ちに連邦の政局に大きな影響を与える可能性はあまりありません。
 しかし、ザールラント州のハンス首相もシュレースヴィヒホルシュタイン州のダニエル・ギュンター首相、就任して間もないヴューストNRW首相もCDUの次の支える若手の首相です。この人たちが政権を失うと、CDUの存在感が薄まり、党の求心力も失われ、CDUはますます混迷が続いていく可能性が高くなるでしょう。
 2022年のドイツ政治の最大の注目点はしかし、選挙ではなく、ショルツ政権が実際にどのくらいよい政策をしっかり展開できるかです。エネルギーの逼迫がありながらも、イノベーションに基づく再生可能エネルギーへの転換をさらに着実に進められるのか、緊張感の高まる国際環境でドイツ外交が期待される役割を果たせるか、注目したいと思います。

P.S. 最初に公開した版ではノルトラインヴェストファーレン州議会選挙のことが抜けていました。ドイツ最大の人口を抱える大州を抜かしてしまって、申し訳ありません。

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