2/16 - また書けない

結局のところたまたま得意であったり、常識的なスケールからするととんでもなく長い紆余曲折の末最終的にいいものができるだけであって、音楽をつくるという行為に根本的には向いていない気が少し前からぼんやりとしている。帰りの会のメンバーも僕の筆が遅いことはもう何年も前から承知の上で一緒にいてくれていることと思うが、それでも締め切りが近づくとさすがにこれ以上待たせてはいけない、と思える心は僕だって持ち合わせている。のでとりあえず間に合わせで埋めた及第点みたいなアレンジが変にハマってしまい、時間もないのでデモの提出、変更案も浮かばずそのまま各楽器のレコーディング、そしてリリースと僕の遅れを取り戻すかのような怒涛の勢い(うちのメンバーは優秀なので録音が返ってくるのがとても速い。僕が遅いだけか)で進み、僕がやりたかったのこれだっけ、みたいなふわふわした感覚のまま各種ストリーミングサービスに並ぶ完成した音源を最初の数日は聴いている。まあその結果生まれたのが“アフタースクール”であったり“暮れない”の2番以降のアレンジであるし、その違和感も時間が経つにつれて完全に希釈され、やっぱおれらすげーわと今日も管を巻いているのだが。

気づいたのが、というか、ずっと前から気づいていてもう長いこと付き合ってきた感覚なのだが、僕は音楽が好きでも作曲という行為に関してはそもそもそんなに好きではない。もちろん嫌いだと言っているわけではないが、僕が好きなのはギターを弾くこと、よくわからん機材やらマイクやらを弄して楽器を録音すること、そして読書という趣味の延長で歌詞を書くことだ。音楽制作という行為のなかで一番大事といえる、音符をああだこうだと捻りあげる部分への興味や探究心が全くといっていいほど、ない。しかし曲がなければ楽器は演奏できず、メロディがなければ歌詞はただの詩だ。やりたいことをやるために必要なのでやらなければいけないこと、という認識でやっている。曲だけ人に任せろよ、という意見が10割方であると思うが、限りなく詞先に近い同時進行という書き方の都合上文字数に対してメロディを決めたいのでそういうわけにもいかないし、厄介なことに全部自分でやらないとなんだか煮え切らない。たとえばもともと出来上がっているものに対して作詞やアレンジだけ頼まれるのであれば問題はないが。そりゃ遅いわけだ、と自分でも思う。

当然、不安でもある。芸術とはよく泉に例えられ、第一線で活躍する偉大な人々や僕の友人たちは湧いてくる水が溢れないよう常に拡張工事を行い、枯れないよう水を足し続けていることと思う。僕も長いこと音楽が好きなので日頃から人並みに聴いていて、それを通して創作のための実りになるものも間違いなくあるはずだが、さらに踏み込んだ研究はほとんどせずかっこいいものをかっこいいね〜と消費するだけだ。能動的に手は加えずに、ただ20年分のログインボーナスとして溜まったなけなしの水の浸食作用で泉の容積がほんのわずかずつ勝手に増えていくのを、積み上がった文庫本を読みながら、エフェクターのツマミを回し音抜けが〜とか言いながらぼうっと見ている。いかんなあ、と思うが、いかんせん興味がない。興味がないことが一番の不安だ。帰りの会の音楽を聴いてくれる人たちからお金や時間をもらっている以上1ミリも手を抜くつもりはないが、いつか僕の書いた曲が音楽に詳しい人からするとあまりに粗末な作曲であり、手を抜いていると受け取られてしまうことも不安だ。粗末であることに気づく力を持っていないことも。あとは単純にネタ切れだったり期待を裏切ってしまうのが不安だ。

しかしまあ、周りの期待に応えられるかどうか、とかそういうことで悩めるのは周りが目に見えるところで期待してくれているからだ。ツイッターのエゴサーチがまともに成立する人がはたして人口の何パーセントいるだろう。とかなんとか考えてたらちょっとやる気出てきた。レコーディングまで1ヶ月を切ったが例によってデモの進捗は目を覆う有様である。書けないというか捏ね回しすぎて正直あんまりかっこよく聴こえなくなってきてしまい、原型の要素のほうが少ないレベルの再構築さえ考えている。しかしなんというか、身も蓋もない話だがまったくもって通常運行だし、全会一致で議決された締め切りの23:59までは文句を言われる筋合いはない。なんだかんだ今までも頭を捻りながら苦しみながら文句を言いながらうまいことやってきたし、過程はどうあれ僕は自分の曲が好きだ。5億年ボタンみたいに作ってるときの記憶は完成したら消去してくれればいいのにとか、理論とかがちゃんとわかれば楽しいんだろうなあとか、いいかげん音楽の勉強が必要かもなあとか、そういや今まで生きてきて真剣に勉強をしたことってテストの前日の深夜以外なかったかもなあとか、でも別に結局赤点だったなあとか、興味ないことの勉強って辛いうえに頭に入らないから最初からやる意味ないよなあとか、いやさすがに詭弁だわとか、なんか今になって急に数学とか物理学への興味が湧いてきて高校のころ呪文だと思ってた文字列がスッと理解できるんだよなあとか、やっぱり好きにならないと何事も始まらないねとか、いや僕音楽好きなんですけど、とか考えながら、珍しくパソコンでnoteを書いたのでこれを投稿したら今日はすぐDAW開いて曲を書くことにする。つづく

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