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俳句03:「水泡に帰す」30句



クラス替えひとりがふたり浮いている

春の風悲しみ連れていってくれ

春の闇、憂鬱、明日がもう今日に

誰だって春が好きだと思うなよ

春時雨 震える瞼に光るラメ

桜花迷いも全部酔いに消え

楽しいの対義語は夏嫌いな日

すぐに死ぬ蝉ですら泣く死にたいと

逃げ惑う金魚を笑ういじめっ子

生きるのは下手でもラムネ開けられる

感情を殺すためにある生ビール

射的屋で嫌いなあいつ浮かべ撃つ

月兎、餅を捨て行く労基へと

秋あわれ真夜中なにもかもつらい

彼岸花こころちぎれる傷の跡

夜長人甘えることを許してよ

落下して踏まれて栗がなにをした?

秋がまだ迷い込んでる美術室

寒いねと言える相手もいない帰路

雪だるま死ぬ瞬間を誰も見ず

なにもない街で死選ぶ白鳥よ

みんなして死んだ目してる雪なのに

白息にため息混ざる登下校

諦めて孤独と過ごすクリスマス

ほらごらんこころがしんでいくさまを

傘がない孤独を守る術がない

閉ざされた心に鍵は見当たらず

希死念慮抱えて生きる箱庭で

逃げ出した足跡だけが前を向く

永遠に目の前表示する海辺

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