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英語の思考方法から出発する

高校から大学の物理の勉強に良いと評判の、前野昌弘『よくわかる初等力学』(東京図書、2013年)の冒頭に、こんな話が書いてある。

<相撲取りと小学生が相撲をとったとする。このとき、相撲取りが小学生に及ぼす力のほうが、当然大きい>

こう考えるのは、物理学的な理解としては間違っているのだが、どこが間違っているか、自信をもって答えられる学生は少ないという。

著者はいう。

「例えばあなたが『物理の大学入試問題は楽勝で解ける』という状態であっても、上の問いに自信をもって答えられないとしたら、それは『根本はわかっていないけど計算はできる』だけで、まったく物理的思考方法が身についていないのである。

こういう大事な部分をほっぽり出したままで力学の勉強をすることは無意味である」(Iv 頁。太字は引用者)

賛成だ。おおいに賛成だ。

ここで著者が問題にしているのは、「作用・反作用」という物理法則。作用と反作用は原因と結果の関係でもなければ、主と従の関係でもなく、二つの物体に逆向きに、同じ大きさで、「同時に発生し、なくなるときは同時になくなる」という、力の普遍的なあり方のことである。15頁

もちろん、人間の素朴な日常感覚からは、これはすぐには理解しにくい。しかし、だからこそ、作用・反作用の概念は物理「学」なのであり、「これを身につけて、更に高いところへ」到達できる思考方法なのである。iv 頁

上記の文にある、「根本はわかっていないけど計算はできる」という状態は、学校で頻繁に起こっていると思う。

数学の計算はできるけど根本はわかっていない学生。歴史の名前は暗記したけど根本はわかっていない生徒。

これは動物の調教と同じである。調教された動物は、ある刺激に対して決まった行動をする。なにかが出来たようにみえるが、「根本はわかっていない」。

これは生徒が悪いのではない。教える側がそうしたのである。

事情は、英語でも同じである。

英語には英語の思考方法がある。それは日本語の思考方法とはちがうから、すぐには理解しにくい。だからこそ、英語は外国語なのであり、その思考方法を身につければ、日本語とはちがう世界が広がるのである。

だが現状は、英語の思考方法がわかる教え方になっていない。

トランス・グラマーは、私が考える英語の思考方法をまとめたもの。

https://note.mu/ymiura/m/m692d6f6108f1


トランス・グラマーは、はじめはわかりにくいかもしれないが、わかりにくい根本的理由は、日本語の日常感覚から離脱しなければならないからである。日本語の感覚から離脱しないで、英語の思考方法をたどることはできない。

英語の「根本がわかるから自然に話せるようになる」。これが本来の手順のはずである。


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