そらる『嘘つき魔女と灰色の虹』覚書②
『嘘つき魔女と灰色の虹』第二回
(ダ・ヴィンチ 2020年10月号)
第二章
1
八年前の回想シーンの続き
(ルーマが森でイルマとアズリーに出会ったあと)
[イリアとアズリーの暮らし]
自給自足の生活
「全てを自分たちで賄って生活をしている」
[ルドルデニアの暮らし]
「ルーマは毎日の食事が用意されることを当たり前のように感じていたことが、少し恥ずかしくなった」
【ルーマの家】
「花に囲まれた、レンガの模様が美しい古びた家」
「明かりが入った無数の水晶の球」
「壁には見たことのない数字のようなものが書かれた時計が掛かっており、七本の針が不規則に行ったり来たりしている」
「まるで日常と非日常が同居したような部屋」
ーアズリーの話ー
・戦争でルーマの両親が亡くなり
魔法使いの暮らす村との交流があまりなくなってしまった
2
ーその夜の食事ー
「夢見がちで魔女と友達になることに憧れたルーマと、森の外への憧れを胸に募らせていたイリア」
イリアの魔法使いたちの村の話や森での動物たちとの過ごし方、簡単な魔法を使えるようになるまでの話から始まり、ルーマの、急速に成長していく都市ルドルデニアの話や技師としての話、そしてお互いの生活や家族の話など、イリアにとってルーマの当たり前の話はとても斬新で、その逆もまた然りだった。
まるで絵本で読んだ話の謎の答え合わせをしていくような、足りないものを埋め合っていく心地よい浮遊感を感じながらお互いの話を楽しんでいた。
ー今の今まで忘れていた"イロ"の話ー
「アズリーやイリア、色が見える魔女にとって、それは生まれながらにそばにあるもので、例えばそれは味覚のように、空気のように、時間のように、ないことなんて想像もつかないものだった」
【装飾の美しい扉のある部屋】
ルーマとイリアが実際に足を踏み入れると、そこには何も存在しないのにぬるま湯のような、温かい薄い膜に包まれているかのような感覚がある。
それと同時に、目に見えないものに触れられているような、語り掛けられているような、そんな確信めいた感覚があり、それはまるで神様に近くから凝視されているかのようだった。
ある意味不気味で、恐ろしいはずのそれは、しかし決して不快ではなく、むしろ謎の心地よさのようなものを感じた。
・巨大な水晶の球体に、小さな宇宙が閉じ込められている
「二人は二つの小さな手を球体に当てる」
「小さな部屋からはじけ飛んだ色の濁流はルーマの世界、そしてルーマ自身を問答無用に彩っていた」
「これからもイリアに触れている間だけ、色が見えるようになるはずよ」
3
ー帰りの馬車を見つけるまでの数日間ー
「外へ出かけるときはもちろん、食事中も、寝るときまでもほとんど手を放すことなく過ごした」
ールーマが街に戻る日ー
「ゼンマイで動く機械仕掛けの猫の人形」(脚の部分にイリアの名前)をイリアに渡す
「イリアは、自分の髪を結わえていたリボンをほどき、ルーマに渡す」
「視界から色は失われていく中、温かな思い出がルーマの中に残っていた」
二章について
・お互いの好奇心がすごく満たされる充実した時間
何もかもがワクワクする、楽しい濃密な時間を送ったことが伝わる
・イリアの色の経験
イリアが魔女に会いに来た第一の目的だったはずが、結果的にはそれ以上のものを得ているように思う
次回は、回想シーンが終わって、現代に戻るのだろうと思う
イリアとのかけがえのない思い出が、今後どう交叉していくのか、気になるところ。
AY
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