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日記_11

このご時世に珍しく、改造した原チャで大きな音を出しながら爆走する若者を見かけた。
しっかり顔は見えなかったけど、多分ティーンエイジャー。

彼らは何のためにお金をかけて大きな音を出すんだろう、とぼんやり考えていたタイミングで、「風を通すレッスン」という本に出会った。

書かれていることは平野啓一郎さんの「私とは何か」で語られる分人主義と近い。
自己は唯一ではなく、いくつもの矛盾する自分がいることを受け入れる、という考え方だ。
この本の中でエジプトのザールという儀式が紹介されている。

キリスト教的な考え方だと、いわゆる勧善懲悪のストーリーが王道。悪は元々自分の外側にある異分子で、排除される対象として描かれる。
しかしザールが行われる地域において、よからぬ行動は、自分の中に住んでいる悪霊が不満を抱いている(意訳)ように考えるそうだ。

歌ったり、リズムを刻んだりしながら、子供をあやすように悪霊のご機嫌をとる。
誰しもが悪霊を持ち、うまく付き合っていくものとして存在しているのだ。

この儀式を知った後、もう一度爆走ティーンエイジャーたちに思いを馳せた。

彼らはもしかしたら学校でうまく行っていないのかもしれない。親とソリが合わないのかもしれない。なんだかわからないけどモヤモヤしたものを抱えているのかもしれない。

不満を抱えて大きくなった悪霊らしきものに飲み込まれる前に、原チャを改造し、仲間たちと夜な夜な繰り出していると考えれば、あれは彼らなりの儀式に見えてくるような気もする。

ただ蛇行運転は後続車も危ないし、あなたも死んじゃうかもしれないから、改善の余地がありそうだね。

そうだなあ、もし「悪いことしてる」「スッキリ感」が大事だとしたら何ができるだろう。

私には「悪いことしちゃった」のバリエーションが深夜にラーメンを食べに行くぐらいしかないので、爆走の何にテンションが上がるのか、どこに魅力があるのか聞いてみたい。
とりあえず元暴走族の友達を探すところからはじめてみようかな。

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