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日記_29

練馬で予定があったので、帰りの池袋線は各駅停車に乗ることにした。
2つ先には大学時代に通ったキャンパスがある。

とは言ったものの、自分が通っていたのはちょうど建て替え時期のプレハブで、今の立派な建物は全く思い入れがない。
私は高校もプレハブだったので、どうやら校舎で在りし日を思い出す…という体験には縁がないらしい。

少し前に百年と一日という小説を読んで「懐かしい場所を訪れるのは自分が存在したことを確かめたいからかもなあ」などとロマンを感じていたものだから、どうしても諦めがつかなくて、自分のかけらを探しに行くことにした。


キャンパス前のファミリーマート

制作発表の時にいつも甘い物を差し入れてくれたファミリーマート。大きな体と大きな声の店長さんはもうレジにはいなかった。

入学式の時、その後とても仲良くなる女の子と来た覚えがある。芸術系の大学なら一匹狼が多いだろうと思っていたら意外とみんなグループになるのが早くて、ついていけなかった者同士。「集団行動苦手なんだよね」と強がった記憶がある。恥ずかしい。

Live in Buddy

早々に単位を取り切って暇だったので、よく他学科の授業を受けていた。ここはジャズ概論の教授のライブがあった場所。
生徒に自分の著書やチケットをバンバン売る(教科書になったり課題になったりしていた)先生だったけど、とりあえず見て感じろ!って姿勢が私は好きだった。ピアノを弾きながら授業を進めるおもしろい人だったな。

境界の踏切

南口から北口に抜ける踏切。
大学は南口にあって、私にとって北口は学科の飲み会があるエリア。
煙草の匂いと、先輩と一緒に行動する緊張と、けだるい空気が漂っていた場所。だからこの踏切は境界。リラックスバージョンの飲み会はいつも友人の家だった。

馴染みのケーキ屋さん

誰かが誕生日を迎えるたびにケーキを買いに行った洋菓子屋さん。いすみのシャトレーゼみたいな存在。当時はこの向かいに黒くて背の高いフェンスがあった。
1つ上の先輩とよくショーケースに出ていたのだけど(今では見る影もないがストリートダンスにハマっていた)、先輩が音源を忘れて、慌てて夜中にフェンスを乗り越えて校内に忍び込んだことがある。大変だった。


一人暮らしもしていなければ、純粋に授業と制作活動のためだけに通っていた街だったけど、こうやってゆっくり歩いてみるとしばらく思い出さなかったシーンが蘇ってくる。
私はここにいた、という感覚がうれしかった。
大学生の私は、確かにここで生きていた。

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