江の島2019

社長さん、給料を上げましょう

労働環境の激変は、労働力の流動化を促進し、多様な働き方を押し進め、その結果としての経済成長と豊かな生活を実現しようという、政策やマインドを醸成しています。

このお正月、のんびりと郷里の江の島海岸を散歩していると、ペットを連れた何組もの熟年ご夫妻たちや、凧揚げに興じるご家族が、楽しそうに穏やかな湘南の新年を満喫していました。お聞きすると、熟年ご夫婦たちは、大企業のリタイア組で、会社の顧問などをしながら藤沢や茅ヶ崎の一軒家で悠々自適の生活。凧揚げ家族は、ご夫婦ともに大学の同級生、夫は大手商社勤務、妻は出版社勤務。普段は横浜に住み、鎌倉の実家にもちょくちょく帰っているので、「東相模湾は庭みたいなもの」と微笑みました。マリンスポーツが趣味で、2月にはオーストラリアの環礁に遊びに行くのだとか。

豊かな方々ですね。彼らの共通点は、誰もが知っているような大企業に勤務していることでした。熟年夫妻たちは、夫が元の会社の系列会社の顧問として週3回は東京に。でも子供たちはとうに独立し、資産蓄積もあってゆとりそのものの生活を送っているようでした。凧揚げ家族は、冬のボーナスも良かったので、来るべきオーストラリア旅行に当てるのだとか。

うーん。中小企業に知り合いの多い私としては、ため息が出るばかりです。でも、ひょっと年末に目にした数字を思い浮かべた。大企業の内部留保は巨額に上るのに、冒険的な投資には当てられていない、それが日本経済の革新的成長の足かせになっているのではないか、と。

ふと、デービッド・アトキンソンさんの主張を思い浮かべました。

技術革新への投資は非常に重要です。でも発想を変えて、内部留保を溜めるのはそこそこにして、社員に給料・ボーナスを大盤振る舞いしたらどうか。会社のステークホルダーといえば株主。だから、高配当をめざし、高株価のために内部留保で自社株買いを行う。それはそれで理解できますが、もう一つの大切なステークホルダーは社員です。稼いでいるのは、株主ではなくて社員なのです。

そうすれば、社員のモチベーションはもっと上がる。また。給料が増えれば消費に回る。あるいは余裕資金はリスク性資金である証券投資に回り、日本企業へのエクイティ投資が増えるかもしれない。大企業の豊富な人的物的資源がフル活用されるようになれば、日本の技術革新にはまだまだ希望が持てると思います。結果、給料アップは回り回って、経済成長に結びつくのではないか。

また、経営者は、労働の流動化という名の下に、転職を促すより、まずは自社社員に経済的分け前を増やすことが本筋ではないか。特に大企業においてです。その職場で働くことが、各社員のヤリガイになるような施策を講じ、それが難しい場合に初めて転職促進なのではないでしょうか。

そして、大企業の処遇が上がり、消費が増え、経済が活性化すれば、これらが中小企業にも均霑されるような政策を取るべきです。

ニーズがニーズを呼ぶから技術革新が生まれます。そのスピアヘッドはまずは大企業であるような気がします。

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