見出し画像

パチンコで5万勝ったけど虚しい


パチンコで5万勝った。

正確には4万5千円だけど、
四捨五入すれば5万勝った。

仕事帰りにちょっと寄ったパチンコで、
最近負け続きのパチンコで、
時給5万稼げたんだからそこそこ嬉しい。

いや、割と嬉しい。


満足して帰る頃には、
外はもうすっかり暗くなっていた。

駐車場の隅、暗闇の中で、
煙草の煙が白く立ち上っていた。

そこはおそらく喫煙スペースではなかったが、
注意をするほどの勇気は生憎持ち合わせていなかった。

重たくなった財布を片手に車へ乗り込み
小さなお菓子をつまみながら車を走らせる。


天気が良いから窓を開けよう。


間もなく田んぼ道に差し掛かると、
私以外の車はほとんど走っていなかった。

田舎の夜は早い。

小さな光二つがサイドミラーに反射した。
後方車ではない。自転車だ。

信号待ちで私を追い抜かしていく二人の高校生を
目で追いながらぼんやり考える。

こんな時間まで何してたのかな
部活かな 塾かな
部活が終わって同じ方向に帰るのに
駐輪場でなぜか話し込んじゃって
駐輪場の電気が消されるまで時間を忘れて
くだらない話してたのかな

信号が変わる。

あっという間に私の車は自転車を抜き去る。

気づけばいつからか私は高校生ではなくなっていた。
自転車に乗らずに車でどこまでも行けるようになっていた。
昔より自由なはずなのに、高校生のあの頃の方がずっと自由だったと思うのはどうしてだろう。

毎日一緒に帰る友人と、
駐輪場で話し続けたあとに帰り道でも笑い合う

そんな日々が楽しかった。

パチンコの大当たり音で脳を溶かすのも楽しいけれど、
あの頃の静かな幸せを今私は感じているだろうか。


パチンコで5万勝ったのになぜか虚しい。

高校生の私、あなたはどんな大人になりたかったですか。