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子どもを保育園に預けずに在宅ワークはできるのか

私は1年半くらい、子どもを保育園に預けずに在宅リモートワークをしたことがあります。子どもが生後3カ月のときから、在宅業務で職場復帰しました。産前産後休暇だけを取り、その後の育児休暇を一切取りませんでした。

こういう話をすると、「在宅ワークできるなら、保育園はいらないじゃん」と思う人も、いるのかもしれません。そんなことはありません。在宅ワークだって、保育園は必要です。

ですが「子どもを預けなくても、在宅ワークで仕事ができるのかどうか」と聞かれたら、私なら「一応、何とかなるよ」というふうに答えます。

なぜ保育園に預けなかったのか

どうして保育園に預けず、在宅ワークという道を選んだのか。まず、「育休で、社内の席を長期間外すこと」がものすごく不安だったことが1つあります。「仕事、忘れちゃうんじゃないかなぁ……」というのと、後はうまく言葉に出来ない、何ともいえない不安でした。「じゃあ、なるべく早く保育園に預けて復帰したらよかったじゃん!」と思うでしょうが、そこで次の理由がきます。

もう1つの理由は、保育園入園の壁です。特に0歳児のセレクションは激戦とも聞いていました。0歳から預けるには、産前から動かなくてはいけません。産前は仕事がかなり忙しかったし、体調も良くなかったし、そんな中でいろいろ考えると、ちょっと面倒くさくなってしまったという感じでした。必死で動いても、落選する可能性もあったし、何とか決まっても保育園が自宅から遠くなったらしんどいなぁ……とか。

さらに当時の職場では、リモートワークの取り組みが少しずつ始まっていた時期でした。私の希望を通してくれた上司は、リモートワークの導入に肯定的な方でした。そういう環境でなければ、私自身も在宅ワークをしようとは発想しなかったのかもしれません。

何歳までなら大丈夫か

まず、私の経験から、保育施設に子どもを預けずに在宅ワークが可能なのは、「1歳の、歩けるようになるまで」が限界ではないかと思っています。「保育施設に預けず2年間」の予定でしたが、1歳5カ月でギブアップしました。子どもが成長し、活動量が増え、知恵がついてくるに伴い、だんだん仕事をさせてもらえなくなる感じですね。

赤ちゃんのうちは、寝ている間に仕事を進めました。寝静まった夜に仕事をすることもありました。授乳などでちょいちょい起きることには身体が慣れていたので、私の場合は生後半年~9カ月くらいまでは、それほど苦ではありませんでした。

子どもはだんだん、起きている間が長くなります。起きている間は、放置できません。何か作業をしていても、子どもが常に視界に入る位置にいるようにして、なるべくかまってやりました。足りなかった時間は、夜や早朝に補てんします(これも事前に、そうなるだろうと上司に話をしておきました)。

やがて歩けるようになり、意志表示するようになる頃には、仕事との両立は、精神的にも体力的にも限界になりました。それが1歳4カ月ぐらいのときで、ギブアップして、すぐに入れる保育所やベビーシッターを探し始めました。

子どもの発達面を考えても、「そろそろ家族以外の人と接する時間も必要だなぁ」と考えたことも理由でした。

どういう業務ならこなせるのか

「子どもを預けない在宅ワーク」という条件であれば、どういう業務ならこなせるのかという話だと、1つは「あまり思考しない仕事」、要は雑務や事務作業などのルーチンです。私の場合、会社の席にいるメンバーが本来思考や時間を使うべき業務に集中できるよう、付帯業務やルーチンを私が引き取るという体制にしてもらいました。もう1つは、「比較的短時間で完了する思考仕事」でした。

逆に、難しい仕事は、営業などの外出です。これは席にいるメンバーに一時的に担当を移管してしまいました。

たまに、子連れでの外出をやりましたが、毎回使える手ではありません。訪問先の理解が必要だからです。例えば古馴染の企業だと、「すみません、子どもを連れてかなくてはいけないのですが」とお伝えすると、「お子さんと会いたいから、連れておいで」と言ってくださることもありました。こういうラッキーなケースはたまにあるものの、子連れで訪問できるケースは実際、非常に限られていると思います。営業訪問は、“現状の日本”だと、まず無理だと私は思いました。

また当時の社内の打ち合わせは、「子どもの声が気になるとクレームが来た」といわれて、やらなくなりました。ブースの中での打ち合わせで、かつ1時間ほどの滞在だったのですが……。ギャーギャー騒いでいたわけでもありません。気になる人にはすごく気になるのでしょうね。

後は、関わる人たちが多く、締め切りがどうしても厳しくなる「お客さま仕事」は、難しいかと思います。常に子どもと一緒だと、日々の状況が読めません。私個人の事情のために、お客さまや関係者に大きな迷惑をかけるわけにはいきません。

「子どもを預けない在宅ワーク」に向いた業務をまとめると、以下になると思います。

・社外の人とのかかわりがなるべく少ない
・お客さまのかかわりからなるべく遠いところ
・外出をしなくて済む
・締め切りが緩め
・思考をあまり使わないルーチンワーク
・思考や知識を使うけれど、短時間で完了する仕事
・自分の頭の中の知識と手元の資料、ソフトウェアでできる業務
・機密性が低めな仕事

こう考えると、自分が提供できる労働の価値や単価は、通常よりやや落ちてしまうのでしょう。この環境の業務の中で、自分の経験や専門性をできるだけ生かし、かつこの状況を生かして「社内の席にいるメンバーをどれだけ助けられるか」を常に考えていくことが大事だと思いました。在宅業務を切り出すときにも、そこをうまく自分からプレゼンする必要があると思います。

勤怠管理をどうしていたか

この期間は、出退勤の打刻はなく、成果(工数)で管理してもらいました。毎日、業務内容と工数を上司にメールで報告しました。その内容に対して「効率が悪い」「さぼってたナ」など詰問やお叱りを受けることは全くありませんでした。でも、頼まれていた仕事をうっかり忘れてしまったり、作業ミスをしてしまったりしたときは、当たり前ですが、「もー、気を付けてよ!」と注意されました。そりゃそうだ。

席にいた時より、業務や工数が可視化されていた分、労働時間当たりの集中力や生産性は高かったのではと思います。席にいたときは、外出先で、雑談が盛り上がってしまって滞在がずるずると長引いたり、スケジュールも緩く組みすぎたり、ぼけーっとネットで調べものを延々としてしまったりしたこともよくあったので……。

自分が、自分に与えられた労働時間の間で、どれだけの作業をし、どれだけの成果を出したか。これを自ら意識して可視化することは、お仕事の集中力アップにつながります。逆に、サボり方……、もとい休憩の仕方も分かるようになります。

朝の定刻にに社内の席に座り、夕方の定刻に帰っていく、通常のサラリーマン勤務であると、こういうことはあまり考えないのではないでしょうか。私自身はそうでした。そうせざるを得ない環境におかれることで考えるようになったと思います。

この期間の体験からの学びは、席に戻った後も、そしてリモートワークがメインとなった今も生きていて、そして進化しています。

やって正解だったのか?

今回紹介したのは、「子どもを預けずに在宅ワークをする」という、少し限定的な環境での取り組みでした。「やってよかったのか?」と聞かれたら、迷わず「よかった」と答えます。なんだかんだ、赤ちゃんから幼児になりゆく激変の日々を間近でずっと見守れたことはとてもよかったと思います。それに、自分の仕事について、とても深く考えるよい機会にもなりました。

職場側はといえば、やはり1年どっかり私に席を外されるよりは、いくらか気が楽だったようです。席への復帰も比較的スムーズでしたしね。これは私のおかげかどうかは不明ですが、その後、社内でも私の他に子育て中の人が在宅ワークをすることが増えました。

保育園が運悪く決まらなかった人も、ちゃんと決まるかどうかが心配な人も、こんな道があることも1つ、頭に入れておいてもいいのではと思います。大変だし、壁もたくさんあるとは思いますが……、頑張った分だけ、自分の可能性が広がるのではと私は思います。

※補足:家事をどうしていたか

読み返していて思ったので、念のため補足。「家事をどこまで頑張っていたかどうか」です。家事は頑張っていません、本当に最低限です。あと、夫がもともと「自分のことは自分でやる」タイプです。「家にいるなら、家事を真面目にやれよ!」とか言われてしまうような夫婦関係ですと、今回のような預けない在宅ワークは厳しいのかもしれません。そのあたりはよくお話合いをするしかないのだと思います。

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