NAIST合格体験記(2022年第一回受験)

はじめに

初めまして、yukinoです。合格から随分と時間が経ってしまいましたが、昨年夏の受験でNAIST情報科学領域に合格することができました。
既に多くの合格体験記があり、私も参考にすることで合格につながったことと、自分が文系からNAIST情報に挑戦したということもあり、他の文系の方の参考にもなるかと思ったので執筆することにしました。

背景

私はやや特殊な経歴を辿ってきたので、身バレしない程度に軽く自己紹介から始めようと思います。
中学までは普通の公立中学で、大学は関大系列の高校に進学しました。一応理系科目の方が得意だったので高校までは理系だったのですが、内部推薦の際には楽そうな文系学部を選択しました。
3回生になり、先輩が本格的に就職活動を始めると、コロナ禍もあってかあまり上手く就職活動が進んでいない先輩が多かったです。一方、私には大阪府立大学で6年間プログラミングを学び、いわゆるメガベンチャーと呼ばれる大手に就職した姉がいるのですが、姉は比較的容易に内定を獲得していたイメージがありました。この辺りで初めて文系と理系の就職の違いを意識しました。
自分も最初は文系の事務職か営業職としての就職を検討していましたが、3回生の後半あたりから理転に興味を持ち始めました。しかし、大学では完全に文系としての勉強してこなかった自分に理系大学院の受験問題を攻略できるのか分からなかったのでとりあえずインターネットで検索したところ一本の合格体験記と出会いました。

この方は早稲田大学の文系から挑戦されたそうです。自分よりも遥かにレベルの高い大学出身の方でしたが、やればもしかしたら自分もいけるかも!?という可能性を感じさせてくれました。

説明会・オープンキャンパスと研究室見学

まず、どんな研究室があるのかや、入試について知りたかったので2022年1月ごろのオンライン説明会に参加しました。その中で興味を持ったいくつかの研究室を訪問するために2月ごろにいつでも見学会を利用しました。
数名の先輩と連絡先を交換していただくことができ、その後も小論文の添削をしていただくことができたので、実際に現地に足を運んで見ることは重要なステップだったと思います。
その後、後述する小論文の添削や、他に本当に合う研究室があるかもしれないという確認のためにも再度オープンキャンパスで複数の研究室を訪問しました。

入試対策

書類: 50点相当

NAIST入試を決意した段階で最もどうしようもないのが書類だと思います。これは恐らくGPAが見られていると思うので、低い人は数学、TOEIC、小論にかける思いで、高い人は少し安心材料になるという程度だと思います。
自分は幸い周りの助けもあってGPAは3.0程度を取ることができていたので、この項目ではそれなりに良い点数をもらえていたと思います。

TOEIC: 30点相当

実は一番苦労したのがTOEICなのですが、一番力がついたと思ったのもTOEICでした。大学2年の時にお試しで受験した時は400点ほどしか取れなかったのでこのまま出すには絶望的なスコアでした。
大学受験をしていない分、基本的な文法や単語も覚束なかったので、NAIST入試を決めてからスタサプTOEICの文法講座を全て受講し、金フレを徹底的に暗記しました。また、その後隙間時間でもスタサプの動画を見たり、TOEIC問題集を何周もするといったオーソドックスな方法でスコアを上げました。
結果、出願前最後に受験したTOEICで745点までアップすることができました。
世の中には、パーカーさんのように私よりも短期間で800オーバーまで上げることができる方もいらっしゃるので、効率よくスコアアップを狙いたい方は以下の動画などを参考にしてください。

数学: 30点相当

次に数学です。自分は推薦だったので本格的な受験勉強はしていないものの、高校では数Ⅲまで履修していたので高校からずっと文系だった人よりは比較的楽に対策できたと思います(この体験記の趣旨とややずれてごめんなさい)。
とはいえ、3年以上まともに数式を見ていなかったので、3回生後半からネット上の合格体験記や姉のアドバイスを参考に復習と勉強を進めました。
(1)線形代数
線形代数については高校のベクトルまでしか習っていなかったのでほぼ独習と言ってよかったです。雰囲気を理解するためにいきなりストラングやマセマに取り組むのではなく、ヨビノリさんの線形代数で基本イメージを理解しました。

それから、ネット上にある過去問を確認することで問題の傾向と難易度を把握し、それからNAIST入試数学の定番であるマセマを読んで定着を図りました。高校卒業からそれなりにブランクがあったので、1周目で全て理解するのではなく、まず1周目で概念と計算のイメージをぼんやり理解し、2周目からは少しずつ定理の証明にも触れていく…という緩いやり方を貫くことで最後までやり抜くことができました。
最後に、大学図書館で借りたストラング線形代数の7章までの例題と練習問題の簡単そうなものをできるだけ取り組むことで本番を意識しました。

(2)解析学
一応高校ではそれなりに数学が好きだったので、解析学の対策は線形代数よりはかなり楽でした。まず、高校の数Ⅱ・Ⅲの教科書をサラッと復習することで三角関数や指数関数の性質から基本的な微積分までを復習し、その後ヨビノリさんの動画とマセマで慣れる、という形を取りました。その後は線形代数の時と同様、ラング解析入門の練習問題などを解いていきました。

小論文

いつでも見学会の際に先生方や先輩方からどんなテーマが現状その分野で考えられるのか、と言ったことや読むべき書籍や論文を教えていただきました。
そう言った文献を読んでいく中で、自分が修士の2年間で取り組んでみたいテーマが見つかりました。しかし、そのテーマは本当に研究する価値のあるものなのか、また、自分が専門外であるから知らないだけで誰かが既に解決している問題だったんじゃないか、という不安がありました。絶対に論外な小論文を書いて不合格になるのだけは避けたかったので、連絡先を交換していた研究室の先輩に問い合わせ、それが小論文にふさわしいテーマであると教えていただきました。それからは、そのテーマに関する論文や文献を30本ほど漁り、その分野の常識や雰囲気を抑えるとともに、どこまでが解決された問題で、自分がどこを解決しないといけないのかということを明確にするように努めました。
オープンキャンパスの段階で一度目の添削をしていただき、出願までにもう一度添削をしていただきました。
こう言ったことを希望研究室の先輩に質問できたことは私にとって大きなアドバンテージだったので、特に私のように文系から理転する人は必ず現地に足を運んでみるべきだと思います。
また、小論を書く際にはWordよりもTeXで書く方が良いと姉にアドバイスをもらいました。いきなり文系の学生がTeXを自力で1からセットアップするのは難しかったので、Twitterで見つけた先輩のフォーマットを参考にしました。

https://github.com/mlieynua/naist_essay

また、上のGitHubの入試に関するTipsは非常に参考になりました。自然言語処理学研究室はNAISTでも最も権威のある研究室の一つだと伺ったので、きっと相当優秀な方なんだと思います。同じ文系からの理転組として尊敬しています。

入試本番

入試はオンライン形式で行われました。実家から受験したのですが、自分以外の家族は仕事で出ていたので、一人時間が来るのを待つのがとても心細かったのを鮮明に覚えています。

数学

10分間で解析学と線形代数を1問ずつ解く形式でした。PCの前でスケッチブックとペンを持ち、先生に説明しながら解いていく形式です。
(1)線形代数
以下の変換で線形でないものはどれか?入力は$${v=(v_1,v_2)}$$である。
(a) $${T(v)=(v_2, v_1)}$$
(b)$${T(v)=(v_1,v_2)}$$
(c)$${T(v)=(0, v_1)}$$
(d)$${T(v)=(0,1)}$$
(e)$${T(v)=v_1-v_2}$$
(f)$${T(v)=v_1v_2}$$
(2)解析学
$${\int_0^{\pi/2}\frac{\cos x}{1+\sin^2 x}dx}$$の値を求めよ。
いずれも指定教科書の練習問題に同じ問題がありました。
やはり公式や定理などの基本的な力が身に付いたら指定教科書の演習問題をやるのが一番手っ取り早く点数を取れるようになると思いました。

面接

面接では、1分間で軽く自分の研究の背景から提案手法に関する説明を行い、その後に質疑応答が始まる形式でした。
提案手法以外の質問内容としては、

  • どうして文系から理転したいと思ったの?

  • 博士課程に興味はある?

  • IT系に就職したいの?

  • プログラミングはどれくらいできる?一番長いのでどれくらい書いた?

  • 統計学とか、今回の入試範囲以外の数学ってどれくらい知ってる?

という程度のもので、特に過去に上がっている合格体験記と比べて突飛なものが来たという印象はありませんでした。
研究に関する質問は、事前に研究室の先輩の方に模擬面接をしていただいたり、質問集を一緒に考えていただいたりしていたので特に詰まりませんでした。

結果

7月19日に合格発表がありました。高校受験以来、実に7年ぶりの受験だったので合格発表は緊張しました。
自分としては、GPAはそこそこいいから書類点はそこそこのはずだし、TOEICも昨年の合格者平均より高いし、数学もどっちも満点(?)だし、面接も大きく転けたわけじゃないからきっと受かってるだろう、これで無理だったら仕方ない、というくらいの気持ちでした。
NAISTの先生方や先輩のアドバイスのおかげで合格に必要な理系としての素養が身についたと思います。ありがとうございました。
そして最後に、お姉ちゃん、いつも初めての挑戦が成功するか不安で精神が不安定になった私を元気づけてくれてありがとう。

最後に

4月からは晴れて念願の情報系の大学院生になることができます。自分はまだまだプログラミングスキルや数学のスキルも低いので、春休みの間にプログラミングや情報系で学ぶ科目の基本あたりを復習することができればと思います。
夏にはインターンシップなどの就職活動も始まるので、それに合格できるように何らかのスキルを身につけたいと思っています。
また、本当は学部時代に英語圏に留学したかったのですが、コロナで結局行けずじまいでした。大学院で留学するとなると基本は研究留学になると思うのですが、先日ある先輩にDMで理転でも頑張れば関係ないということを教えていただいたので、先生に許可をいただけるように1回生の間にある程度研究も進めたいと思います。
同期の皆さん、4月から仲良くしてください。また、後輩の方、特に文系の方で私から何らかのアドバイスが欲しい人は是非TwitterのDMなどで連絡してください!私にできることであれば絶対に相談に乗ります!

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