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【自由研究】2023/2/18:第1節  磐田×岡山

~あらすじ~
魔境!戦国!野望渦巻くJ2リーグ界。昨シーズン、J1昇格へあと1歩及ばなかったわれらの勇者ファジアーノ岡山は、「10.30」の悔しさを胸に刻み付け、新たな目標・新たな仲間を得て今年こその「大願成就」に挑む。
新シーズン、記念すべきその船出はアウェイゲーム。「昨季J1」の名門・ジュビロ磐田が、自らの居城を伝統のサックスブルーに染め上げ、われらファジアーノ岡山を手ぐすね引いて待ち構えるのであった…。
令和蹴球戦記ファジアーノ2023
 第1話『待望の新シーズン!
立ちはだかるサックスブルーの名門』より
(※なんらかのぱろでぃです)

新シーズンが始まりました。ということで、今シーズンも時間と体力が許せばnote書いていきたいと思います。あけましておめでとうございます。

今年も、ゲームを見ていて興味がわいた・気になった点を中心に掻いつまんで取り上げるスタイルで行こうと思います。他のレビュアーさんの記事と併せてお読みいただけると、ファジアーノ岡山への理解が深まって良いかなと思います

※今年の姿勢:3低(低コスト、低姿勢、低カロリー)

試合結果に関すること


既報通り、この試合は3対2でファジアーノ岡山の勝利。フクダ電子アリーナなみに勝ち試合を見られていなかった小鬼門・ヤマハスタジアムでクラブ史上初の勝利を挙げることが出来た。

昨年の積み上げ、新しい力、若い力、ベテランの力、いろんなものが上手く嚙み合っての快勝でありました。(試合終盤のことを思い出そうとすると謎の頭痛が)

レポート(FAGIGATE無料記事)

ハイライト

スタッツ・データ等


いいね(1)ヨシタケ・ロール


この試合で目を引いたプレーや、「いいな」と思ったプレーを振り返ってみます。

まずは「ヨシタケロール」を取り上げます。新加入の#43鈴木喜丈が見せた「偽サイドバック」と呼ばれる動きです。

どんな動き?

少し図を用いて説明します。(※以下ほとんど筆者の見解です。)

▲まずは定位置の確認。4バックの左SBであることから、通常配置では図の黄色い四角部分が定位置エリアになる。

▲機を見て#43鈴木が1列上がり、中のレーンに立ち位置を変える。#6輪笠との2ボランチ気味になる。サイドバックにあってサイドバックにあらず、これ「偽サイドバック」也。というわけであります。

海外サッカーで使われる場合、個人名を冠して「○○ロール」などという名前付けをされていたりします。

今回は鈴木選手なので「ヨシタケ・ロール」にしてみましたが、他の選手がこの役割を担うこともあるだろうなと思ってます。

この動きにどんな効果が?ということですが、筆者が実際に試合を見て感じたのは「スペースも埋めるし、スムーズな攻撃構築(ビルドアップ)にもつながる」といったあたりです(個人的見解)。

いいこと①:スペースを埋め、攻撃構築もスムーズに

※以下、相手に押し込まれておらず、岡山が攻撃を仕掛けていきたい、という局面を想定しての話になります。

▲岡山は今季から中盤の4人がダイヤモンド型になる配置を採用しています。
基本配置だと中央のMFは4人いるわけですが、そのうち#22佐野と#14雄大と#8ムークは知っての通り、どちらかというと攻撃に特化したい選手。必然的に、守備的にふるまう担当は一番底の#6輪笠ということになります(これが「アンカー」というわけですな)。

▲ムークも佐野も雄大も、前線やサイドに張って仕事をする。こうなるとアンカー#6輪笠が面倒を見る必要のある空間も必然的に増えてくる(たとえば上図の黄色で示したエリアなど)が、当然ながら輪笠はひとりしかいない。そのため、もし何かあった場合に輪笠がケアできるのは、上図における黄色エリアのうち、左右いずれかの二者択一ということになる。

ここで、#43鈴木が左SBから出張してくる…と、こんな感じになる。輪笠がひとりで見なければいけないリスクのあったスペースも、ふたりならあらかたカバーができるということに。鈴木が出た後の左のスペースはバイスがケアする。

こちらが攻撃に出ている局面なので、最終ラインにバイス・柳を置いて最低限を保ちつつ、鈴木はボランチの位置に移動して、スペースのケアとパスの授受・ドリブルなどによって攻撃構築に参加しようとしているわけであります。

▲そして、鈴木が1列上がることで最終ライン除く人数(上図の黄色い枠内の人数)を+1することができる。攻撃時、上図の黄色い枠がそのまま相手陣内に入っていくようなイメージであるとすれば、基本フォーメーション時よりひとり多い状態で敵陣に入っていくことができるようになります(図では右SBの#16河野を上げていないが、河野も上げれば+2になる)。

ひとり増えればパスの選択肢も増えます。ということで、たとえば相手ゴールに近い位置でのパス回しにおいて、相手からプレッシャーを受けたときにも、ボールを逃がす選択肢を多くすることができるでしょう。
⇒となると、相手陣内でのボール回しの時間も長くすることが出来る可能性があります。
⇒そうなれば、昨季から木山監督が掲げている「相手コートでサッカーをする」という理想にもつなげて行けるように思います。

いいこと②:相手に選択を突き付ける

この「偽サイドバック」「ヨシタケ・ロール」の動きには、ほかにもいいことがあるように思います。それは、鈴木に付いてくる相手選手に「ついていったほうがいいのか、行かないほうがいいのか」の逡巡の時間を与えるといった効果です。

▲ロール時の図を再掲しましたが、この試合で鈴木のマークを担当した相手選手は#18ジャーメイン選手のようでした。で、ジャーメイン選手は、鈴木の動きに対してけっこう右往左往させられていたようにも思います。

▲18:30ごろのシーン。バイスからのパスを、自陣まで下りてきていた岡山#48坂本がフリーの鈴木に折り返して…という場面です。ここで、そもそも鈴木のところに誰もついていなくて、フリーになっています。

このとき鈴木のマークであったであろうジャーメイン選手は、鈴木についていく選択肢もあったであろうと思いますが、ボールに向けて走る選択をしていました。ついていくべきだったのかどうか、一概には言えませんが、ともあれ鈴木は自由を得ていたことになります。

鈴木は守備的にポジショニングしている選手なので、マークに付いてくる対戦相手選手は攻撃的ポジショニングの選手ということになります。鈴木の動きには、相手の攻撃的選手に守備の選択を考えさせるという、心理的効果も少なからずあるだろうな、と思っています。

いいこと③:中盤の守備タスクを分散⇒のびのびプレー

いいこと①の話に戻りますが、中央に2人立つことで、スペースのケアがより手厚くできるようになります。そうなることによって、ムーク、佐野、雄大らの攻撃に出ている選手の「なんかあったら走って戻らないと」みたいな心配ごとを低減することにもつながるのではないかな、と思っています。守備に置く意識を減らして余裕を持たせ、攻撃的にプレーすることができるようになるのではないかと。

実際、ムーク、佐野、雄大らは相手コートで伸び伸びとプレーし、攻撃に厚みを持たせ、歴史に残る勝利を呼び込むのに一役買っています。

その中でも特に自由に、ピッチ内を全力で駆け回り、ボールを刈り取る動きで貢献していたのがムークでした。


いいね(2)ステファン ムークの献身


この試合、#8ステファン ムークの動きはまさに出色のできばえでありました。同じ攻撃型の中盤である佐野と雄大が両サイドに張り出して攻撃演出するのに対し、ムークは固定の位置にとらわれず敵陣寄りであったりサイドであったり、縦横無尽にピッチを駆け回りました。そして、即座にチャンスとなりうる位置でのボール奪取が秀逸でした。

▲前半10分には右サイドでのプレッシング。左右の幅を使いたがる相手攻撃陣に取り残されずついて回り、左から右へ全力で追いかけ、相手の背後からプレスをかけてパスミスを誘いました。こぼれたパスを#14雄大が回収して、これまた相手の背後のスペースへ駆け出す。相手に大きな脅威を与えたシーンでした。

▲後半、3点目につながるシーン。岡山が相手のプレスに臆せず丹念に繋いできたボール…一瞬、相手に渡りそうになったところへ、駆けつけてくれたのがムーク。背後からプレスして相手のミスを誘い、こぼれたボールを#22佐野が回収して一気呵成に敵陣突撃。

このときムークもすぐにターンして、今度は相手ゴールへ全力疾走。結果的にムーク、佐野、坂本、ソロモンが相手ゴール前に並び立つという瞬間を作り出し、最終的にゴールを決めた佐野を間接的にアシストした。

優秀かつ勇敢な、番犬のような働き。陰のMVPとして、彼を推す向きも非常に多いですが、筆者も大いに同感です。そして、彼のプレッシングの向きや、他の選手の距離感も非常に良かった。

これはキャンプだけで仕込むことは出来ない貴重な財産であると思っています。すなわち、昨季の主力メンバーが大多数残ったファジアーノ岡山ならではの、「昨年からの積み上げ」という大きなアドバンテージであろうと思います。

中盤ダイヤモンドの先頭に位置し、トップ下としての攻撃参加や相手ゴールに迫る働きが期待されるムークでありますが、彼には「狩り取る者」としての役割もあるんだな、と実感させられました。


いいね(3)降りてくる坂本(イサ・ロール)


もうひとつ、ファジアーノ岡山の順調な攻撃に大きく貢献していたのが、#48坂本 一彩でした。

彼自身はFWとして、この試合チーム2点目のゴールを挙げ、勝利に大きく貢献しました。そういったストライカーとしての動きもさることながら、筆者が「いいね」と思ったのが、チーム全体の攻撃を活性化させる「ポジショニング」です。具体的には最前線から降りてくる動きです。

▲ヨシタケロール解説時の図を再掲。鈴木に至るパスを中継してるのが坂本くん。見ての通り、センターラインを超えて自陣まで下がってボールを受けている。

▲37分ごろのシーン。柳→河野(ワンタッチ)→坂本。これも自陣で受けている。このあと坂本がターンしてムーク、佐野と連動していく。

ちなみにこのシーンは筆者のお気に入りでもあり、
・ヨシタケロール
・ワンタッチによるリズムの良さ(河野)
・雄大の動き(#磐田77大津選手を引きつける)
・下りてくる坂本
・前4枚での分厚い攻勢
・右から左へ広くピッチを使った攻撃

などなど、色んな良いとこが凝縮されております。

彼を始め、チーム全体でこうした動きは見られました。この試合の岡山は個々が連動して立ち位置を変えることによって、パスをなめらかに・テンポよく循環することができていました。

坂本くんはボールの受け方が上手、ターンがキレイ、シュートも鋭い…などなど、19歳にして大いなるポテンシャルを秘めているなと感じました。岡山でたくさん試合に出てたくさん学び、成長してって欲しいと思います。


まとめ


非常におもしろい2023シーズン開幕戦となりました。「おれたちはこんな感じで戦っていくんだぞ」という所信を随所に見せながら、今後への楽しみを膨らませてくれる試合でした。

従来よりさらに洗練された伝統のハードワークを下敷きに、昨年からの「継続」によって磨かれた選手個々の連携を活かしつつ、新しく加入した選手たちのポテンシャルを遺憾無く発揮できるような、そんな魅力的な戦術に映りました。色んなものがうまく融合し、開幕戦ながらチームとして自信満々の振る舞い、実に頼もしいったらありゃしません。

またこの試合では、スタメン、ベンチメンバーの大半を若手選手が占め、成果も課題もあれど生き生きとしたプレーを見せていました。この試合での彼らの活躍を見れば、ベンチ入りできなかったメンバーたちも黙っちゃいないでしょう。

次節はいよいよホーム開幕戦。佐野航大と坂本一彩が世代別日本代表に参加のため不在ですが、成り変わらんとしてここに入ってくるのは一体、どの選手か!楽しみは尽きません。

【次回予告】
敵地で見事な初陣を飾った、我らの勇者ファジアーノ岡山。本拠地シティライトスタジアムに戻り、いよいよホーム開幕戦を迎える。
チケット完売、盛り上がりを見せる街の雰囲気、M-1王者の凱旋、、、満を持して迎え撃つ相手は「天上界の成り立ちから知る者」清水エスパルス。強大な戦力を誇る、伝統と格式のオレンジ軍団に、我らのファジアーノはどう挑むのか?!

次回、「ホーム開幕!オレンジ軍団襲来

来週もまた(ファジアーノの試合を)見てくださいね〜

(了)

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