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【自由研究】ファジアーノ岡山:39・40・41節(前編)

10月以降に執り行われた、39節・金沢戦、40節・甲府戦(ここまでアウェー)、そして41節・秋田戦(ホーム最終戦)に至るまでの、3試合に関する振り返り記事です。

自動昇格の可能性を残したまま、欲を言えば自動昇格したいな!という想いがある中で、しかしそれは「1敗でもすれば極めて厳しくなる」というイバラの道。今までに味わったことのない重圧・プレッシャー、ひりひりするような感覚の中、岡山の選手・サポーターとも、勇気をもって立ち向かっていきました。
この3試合で戦った相手は、「引いて守ってカウンター」(金沢・秋田)、「ボールを持ちながら丁寧につないで攻めてくる」(甲府)という、対照的なチームカラーを持つクラブたちでした。そんな特徴も反映されて、3試合はそれぞれきわめて対照的な展開となりましたが、いずれの試合にも共通してたのは「ほんと、苦しい戦いだった」ということ。

待ち受けていたのは想像以上に厳しい展開でした。そして、いろいろな課題が浮き彫りになった3試合でもあったように思います。

では順番に振り返ります。僭越ながら、、、。


本当は、金沢戦・甲府戦までの記事は秋田戦までにアップしたかったのでありますが、諸般の事情でかなわず。くやしいです。秋田戦終わっちゃったのでもういいかな、とも思いましたが、このまま捨て置くとせっかく書いた記事が成仏できないおそれがありましたので、ここで読めるようにいたしました。長くなりますが、お読みいただけると嬉しいです。

(筆者謹啓)

39節:金沢戦(10/3):●

まずは39節・金沢戦から。
結果から申し上げておくと、岡山は1-3での敗戦。
ただスタッツを見ると、「なして1点しか取れなんだ!?」とちょっと思ってしまうような、試合結果と不釣り合いな数値が残った。

岡山が押し込めているように見えるも・・・

4バックで自陣にブロックを敷く感じな金沢。基本的には自陣の低い位置(ゴールに近い位置)に陣を敷いて、岡山の圧力を迎え撃つような構図を作っていた。
時合いをみて前に出てくることもあったけれど、そのときも基本的にはこの並びを崩していなかったと思います。

例)3:13ごろ。岡山が敵陣高い位置に浸透できているようには見えるが・・・?

金沢の守備陣が低めに陣取ったことも相まって、岡山は攻撃時、センターバック(バイス・柳)もセンターサークル付近まで出張してくるぐらい、押し込める時間は長かった。「ゴールに向かってダイレクト」志向の強いわが軍なので、行けるんならどんどん押していこうや!となるのもわかるし、押し込めてセットプレーを取れれば、コーナーキックやらロングスローやら、自慢の「戦術兵器」を繰り出してゴールを脅かす算段も成り立つ。
であるからして、積極的にボールを前に運んでいく(放り込んでいく)姿勢は見せることが出来ていた。しかし実際のところは、岡山は金沢の仕組んだギミックにはめられていたところもあったかも知れない。

例)3:13ごろのシーン(再掲)金沢の並びに補助線を追加

金沢としては、4-4-2の「4-4」のところで上図のような防衛線を作り、ゴールの前で前後左右に広がりすぎず、コンパクトにまとまることで「密」な状態を作ることができていた。そして、岡山はここを通過するのに非常に難儀した。
前線のデューク・ムーク・雄大に至るまで、果敢にブロック内に入り込んではいくものの、金沢の誰かがすぐ捕まえに来る…というような局面を頻繁に作られていた。ロングボールをデューク・ムークに当てようとするも、誰かが彼らにピッタリくっついて自由を得ることは難しくなっており、当てることができてもこぼれ球はよく回収された。
中央がダメならサイドから、ということで、徳元・佐野・河野らがサイドから仕掛けたり、輪笠がボールを散らしたりするものの、ゴール前に密集した金沢の守備陣が粘り強く跳ね返していった。

はたから見ると「岡山が金沢に防戦一方を強いている」ように見えるも、その実、岡山としては「入っていけるんだけど致命的な一撃を出せない」という時間が前半から長く続いた。

金沢の「返す刀」にやられた

「防戦一方」に見える金沢は、きちんと返り討ちの手段を仕込んでいた。下図に記載したシーンは、試合始まって間もない前半3分に見られた、返り討ちの未遂ともいえる場面。

例)3:22 河野のクロスを金沢DFが「FW杉浦選手に向かって」跳ね返す

河野のクロスを金沢の松田選手がヘディングでクリアしたという、一見それだけのシーンに見えるが、このボールはしかし確実に、前線の杉浦選手に向かっている。松田選手はおそらく杉浦選手をめがけて返している

この場面では、杉浦選手の近くにいた岡山DF徳元が体を当てて進撃を止め、ファールになったものの何も起こらずに終わった。金沢は同じようなボール出しをこの後も散発しており、そのたびに岡山は何事もなく跳ね返すか、止めることが出来ていた。

しかし、前半19分ごろ、金沢のDF孫選手から杉浦選手をめがけて蹴られたこの手のボールについて、岡山はDF柳が奪取に失敗。杉浦選手に裏への突破を許してしまった。柳に次いでバイスも急いで帰陣し、身を挺して必死に進撃を止めようとするも、結果として止めることはできず。
ロングボール一本から裏を取られ、杉浦選手の独走を許し、先制ゴールを奪われてしまう・・・という一連の流れにつながっていったのであります。

最後まで壁を叩き割れなかった岡山

岡山は先制された後、あまり時間をかけず同点に追いつくことには成功した(バイス殿のPK)。しかし後半、立ち上がりにアンラッキーもあって再びリードを許す苦しい展開となってしまう。一方、金沢としては再び1点リードとなってからは「やることが定まった」というべきか、ゴール前の守りを固めつつカウンター狙いという方針が鮮明化した。

後半リードを奪った後は、ゴール前に手厚く人数をかける(金沢)

上図で後半のワンシーンを掲載してみたが、岡山がボールを持って自陣進入してきた場合も無理をせず、なるべくスペースを空けずゴール前を固めるほうに注力したというか、そんな感じである。

中央が固められた代わりにサイドが使えるようになった岡山は、積極的にそのサイドを使って攻め上がり、ドリブル・クロス・シュートを雨あられと浴びせ倒した。しかし、金沢のゴール前は人大杉状態となっており、どうやっても相手のほうが数的優位であることが多く、惜しいシーンは作り出せてもゴールネットを揺らすまでには至らない。

攻め込んでるのはこっちなのに、なぜじゃ!?」という勢いのまま、最後まで相手の壁を叩き割ることはできず、試合終了間際にカウンターを一撃食らってダメ押しされ、3対1というスコアで勝利を逃すこととなったのであります。

同節、2位・横浜FCは勝利。岡山はここに来て、自動昇格を狙うならば今後一切負けられないという状態に追い込まれた。

金沢戦は押し込んだけどカウンターにやられた。


40節:甲府戦(10/9):○

金沢での痛恨の敗戦後、1週間空けて再びアウェーとなった甲府戦。勝点3取れなければ自動昇格の可能性消滅、さらに4位チームが背後に迫るという中で、連敗は避けたい岡山。天皇杯決勝進出を果たした甲府が相手、かつ、こちらはアウェー連戦という手厳しい条件を突き付けられた中で、岡山は立ち向かったのであります。

そして、この節は金沢戦とは真逆な展開で苦戦を強いられる。端的に言えばボールを持たれて押し込まれる。前節で岡山がやったような展開を、今度は逆に甲府にやられました

スタッツもなかなか、手も足も出せてないような数値に。
しかしこの試合、岡山は勝利を挙げた。サッカーとは分からないスポーツである・・・。

泣き所を突いてくるパスの連鎖

時間経過とともに、甲府サイドがボールを持ち、岡山はそれを追い回すという図式が色濃くなったこの試合。
岡山サイドからすれば、ボールを持たなければ攻撃もゴールの可能性もない、ということで奪いに行った。これは当然のこと。しかし、そうして起こした岡山のアクションの裏にできるスペースを、甲府は余すことなく突いてきた。そういった甲府の狙い、アクションの連鎖によって、この試合は形作られたといってもよいと思う。

DAZN解説の方も言及されていて分かりやすいシーンが35分、雄大が相手ボールにプレスをかけに行ったところ。

連動した動きの中で「道」ができる

岡山側がプレスをかけにいって空いたスペースと、横パスに連動した甲府の前線の選手たちの動きによって、パスの通り道がキレイにできてしまっています。
岡山としては、こういう場面で空くスペースを誰かが補うように埋めていったり、パスの出しどころを塞いで行ったりできればよかったのだとは推測いたします(「連動したプレス」とかいう言い回しがありますよね)。
しかし、あちこちにパスの通り道を作ってくるだけに、どうしても手が回らないところがどこかしら出てきてしまい、そこを甲府に狙われる・・・を繰り返されてしまっていました。
常に道を作る甲府に対し、岡山は追い回すけど奪えない、奪ってもなかなか前に運べない、、、という時間帯が長く続き、結果として甲府に圧倒的なポゼッションを与え、苦戦することとなりました。

いや~なショートコーナー連発

もうひとつ、甲府が仕掛けてきた特徴的な攻撃が、ショートコーナーでした。
岡山の守備はきれいな分かりやすい崩しにはかなり強い。一方で、ごちゃごちゃの混戦であったり、めっちゃ深い位置からのクロスであったり、綺麗でない崩しには脆さが見える傾向がある。これは今季通じての傾向でもある(と私は勝手に思ってる)が、それを知ってか知らずか、甲府はとにかく短く繋ぐコーナーキックを選んできた。徹底的に

ボールを入れるタイミングをずらすことで、内部構造が変わる

ショートコーナーにすることで「PA内にボールを入れるタイミングが普通のコーナーよりずれる」という現象が起こる。それは連動して「PA内の内部構造が変わる」ということにつながってゆく。
上記のシーン(55分ごろ)、コーナーを蹴る前はバイス・柳・デューク・永井らによるパワーフォーメーションがゴール前に出来上がっているものの、甲府がPA外でボールを回してる間に中の選手たちも微細に動きを起こしており、状態がちょっとずつ変わっていく。

最終的に甲府は長谷川選手がクロスを上げたのだが、そのとき岡山のバイスは甲府の関根選手についていく形となっており、一瞬、ゴール前にスペースができた。そこを使って野澤選手にシュートを放たれたが、岡山は同選手に田中雄大がつくこととなり、高さの面で不利が生じることになってしまった。

岡山にはバイス・柳をはじめとして、ミッチェルデューク等の高身長プレーヤが揃っている。かれらのパワー・高さをもって跳ね返す、実に勇敢で頼りがいのあるディフェンスが魅力なわけだが、それは迎撃体制が整っているからこそ出来ることなんだろうなと思う。体制が整ってない、もしくは意図的に体制を崩された形になると、こうしたピンチを招きがちになるのだろう。じっさい、72分の甲府の同点ゴールシーンも、須貝選手はデュークの前でボールを合わせている。

今節の甲府をはじめ、こういう攻め方をどこのチームもしてくるようになっており、岡山は簡単に勝たせてもらえなくなっている。パワーを上回る戦術、先鋭化する戦略。このようにしてJ2リーグのレベルは上がっていくのだろう。
大河ドラマの鎌倉なみに恐ろしいところだ、J2は。

でも、勝ちました。

苦しんだ岡山であったが、しかし!2対1で勝利した。あんだけボールを持たれて追い回させられたが、1つのカウンター、1つのロングスローをきっちりゴールに結びつけた。

永井龍の先制ゴールと、ハンイグォンの勝ち越しゴール。この2得点で甲府の1得点を上回ったことにより、岡山が勝利。勝ち越し後も、試合終了まで甲府の猛反撃にさらされることにはなったが、チーム全体でどうにか辛抱して守り切り、結末は2対1で岡山の勝ちと相成りました。

1点目(先制点):永井龍

サポーターも、そして永井さん自身も待望の移籍後初ゴールであったと思う。献身的に走り、囲まれてもあきらめないで奪いとった、値千金の先制弾。今後待ち構える可能性の高いプレーオフに向けて、永井さん自身のゴール量産態勢の口火が切られたような、そんな予感もいたしました。

永井さんにパスを出す1手前、甲府のスペースの間隙を突いてチャンスを演出した成瀬くんにも「あっぱれ」をあげたい。この日左サイドで躍動し、「チャンスができるなら左しかなさそうやな」とも思えるくらい、攻守に渡り効いていた成瀬くん。そんな彼にもうれしい移籍後初アシストがついた。永井さんがゴールを決めた後のガッツポーズを見れば、ここまで成瀬くんが抱えていた万感の思いが感じられるというものであります。
そして、その成瀬くんのアクションをしっかり見て、ボールを送り出した徳さんも影の立役者といえるでしょう。

2点目(勝ち越し点):ハン イグォン

ロングスローに対する相手守備のこぼれ球をぶっ叩いた佐野きゅんのシュートの、さらにそのこぼれ球を押し込んだ、ハン イグォンの勝ち越しゴール。「ゴールを奪うことこそが自分の仕事」という、イグォン殿の矜持が伝わってくるような一撃。コンマ数秒の出来事ではあるが、しっかりキーパーのいないところに蹴り込んでいる。

72分に同点にされ、反撃を期す岡山の切り札として投入されたイグォン。積極的に持ち味のドリブルで相手ゴールに迫り、甲府守備陣にプレッシャーを与えると同時に、岡山が失っていた陣地の回復にもつなげ、味方選手もサポーターも勇気づけた。本ゴールのきっかけとなったロングスローも、イグォンが左サイドを駆け上がってゴリゴリ圧力をかけて得たものでした。

ウイイレだったら「監督の采配に見事応えました!投入直後のゴールです!」って間違いなくジョンカビラ殿に言われてるだろうな。

甲府戦はめちゃくちゃ押し込まれたが、永井とイグォンのゴールで1得点上回った岡山の勝ち。


同節、横浜FCは大分に競り負け。2位との勝ち点差はこの時点で再び5差に。岡山は自動昇格の可能性をわずかに手中にしたまま、今季ホーム最終戦の秋田戦に臨むこととなりました。

後半に続きます。

(この稿、了)




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