見出し画像

インフラと空間の快適性

いま仕事の関係で住んでいる台北の家は、ロフト付きの小さなワンルームです。5年前に引っ越してきた時、家についているエアコンに暖房機能がついていないことに南国を感じました。でも逆に5月〜10月の間は、寝る間も冷房をフル稼働していないと夜中に汗だくで起きることになります。体が冷房にあたる期間が長く続くので、明らかに8月ごろから体がだるい。そして秋になって少し涼しくなると途端に体調を崩して寝込む、という流れを毎年繰り返しています。快適な生活を提供してくれるはずの現代的なマンション。でも冷房という生命線がなければ住むこともできない環境を人間は作っていると思うとSFのディストピアだな・・・と寝込んだベッドの中で朦朧と考えていました(今年も結局10月にガクッときた)。

空間の快適性と、身体的な快適性は別モノ

都市に住むことで、その下に広がるインフラ(電気・ガス・上下水道など)に多大な恩恵を受けていると同時に、そのインフラを土台にした形でしか生活を快適にする解決策は考えられません。そうなるとどうしてもハコ的・ハード的な考え方になり、温度、湿度、音、匂いなどの環境を一定の状態に保てる空間をどう作ることができるか?という問いになります。

でも、人間が身体で感じる快適性って数字で測れるそんな単調なものではないはず。風に吹かれる心地よさに説明がいらないように、身体が感じる快適性って、もっと繊細で、揺らぎがあり、広義だと思うのです。

快適な家とは

タイニーハウスに恋をしてから、この「インフラと家の快適性」についてよく考えるようになりました。タイニーハウスは移動する可能性があるので、いわゆるオフグリッドな状態です(繋げることも可能)。オフグリッドとは、インフラと接続されていない状態のこと。私はこのオフグリッドに対して地球環境に優しいという視点よりも、インフラに繋がらないからこそ、ハード面からではなく身体面から快適な空間とは?を考えて工夫できるのが面白いと思っています。

画像2

image ©️ home sweet tiny house  タイニーハウスを建てる場所や個人の好みによって、オフグリッドとインフラの両方に対応できるようになっているシステム

もし人がインフラに頼る以外の方法で、身体的に「心地いい」と感じる快適な空間を目指したら、冷房の代わりに風を効率的に取り入れる窓を増やすだろうし、夏日を遮る高木を家の横に植えるかもしれない。冬もエアコンではなく薪ストーブ、下水に頼る代わりにコンポストトイレで肥料にしてしまうことも心地いいと感じるかもしれません。エネルギーに頼らないことが正義なのではなく、身体的な心地よさを追求する可変性があることが私にとっては魅力です。それは都市が提供してくれる効率とは正反対の解決法ですが、そんな新しい快適さをもった家を作る実験にいまとても興味があります。

画像2

image ©️ tiny house guys  オフグリッド=ローテクや原始的な生活なのではなく、効率的にエネルギーを利用するために最新のテクノロジーが使われている

揺らぎのある空間、エネルギー循環の一部になること。そこらへんの未来に興味があって、いまはタイニーハウスのエネルギーシステムがどう設計されているのか研究中。

なんだか、ナウシカが観たくなってきた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?