本当に全く芸術への答えが出ない。
芸術表現とは、実に紙一重である。まぁ私は、その表の意見も裏の意見もなければ芸術の意味があるのかと思ってしまうタイプなんだけど。それぞれの意見があって初めて存在するのが『芸術』だと思っている。
1993年野島伸司さん脚本『高校教師』。教師と生徒の愛という禁断のテーマの物語。また、複雑な親子関係等の社会問題が題材になっている。主演は真田広之さんと桜井幸子さん。また、野島伸司さんがTBSで初めて連続ドラマの脚本を手掛けたとし、最終回に33%という高視聴率を記録した。
この作品で京本政樹さんが嫌な役で出てるんだけど。数々の生徒を暴行し、その様子をビデオで撮影をし、ビデオを弱みに漬け込みゆすり続けるっていう何とも極悪非道な役だった。それを観て以来、ずっと怖くて怖くて、最近まで嫌いだった。今でも少し怖い、、、。役者からしたら上手く表現できてたという事だから正解だけど。
このドラマ、今の規制が厳しいテレビ業界だと放映できないと思う。放映しても、ド深夜番組になるか配信限定になると思う。その証拠に近年、野島伸司さんの作品を再放送しているのを観ない。代表作の中の一つの『聖者の行進』では、暴力シーンが非常に多く視聴者からクレームが多かった。また、親からは『子どもに見せたくないドラマ』のワーストランキングに入ることも多かったが、視聴率はいつも20%を上まわっていたという。しかし、クレームが多かった為、スポンサーに降りられてしまった時もあったそうだ。実に悲惨である。
でも、作品に対してクレームを言うという事は、逆に好きなんじゃないかと思っている。クレームをいれられる程作品を熟知しているんだから。野島さんの脚本は、毎回ぶれず、社会問題に切り込んでいるし暴力シーンや目を逸らしたくなるような物語ばかりだ。だから、批判する言葉も分からなくもない。でも、クレームを言いながらも見続けていたという事は、作品に対し何かしらに共感し、キャラクターに自分を重ねて世界観に引き込まれていたって事だと思う。『見ちゃいけない興味なんてないんだ』と思えば思うほど気になってしまうものだ。それが社会的なものであればあるほど。日本人は特に、誰かが良いと言う方に乗っかり、悪いと言う方に乗っかりやすい。それを、野島伸司さんの作品は実に分かりやすく数字で示してくれていたなと思う。
でも、書いてて思った。その当時批判されながらも、少なからず同じ様な作風が日本にはあった。しかも、ゴールデンタイムの時間帯で放映してた。だけど近年はあまりない様に感じる。昔は今ほど規制が、厳しくなかった時代だったから作れた作風だったとは思うけど。近年、日本で切り込んで攻めているなと思った作品は何だろうか。
2014年公開の映画『私の男』。原作は桜庭一樹さんの小説である。この作品、映画になる前から物議を醸し出していた。内容が『父と娘の愛』又、其れが故の殺人が起きてしまうという作品である。つまり、近親相姦である。桜庭一樹さんが、この作品で直木賞を受賞している。
その時の批評で、ある方は『薄汚い父娘。嫌悪感しかわかない』と語った。芸術に対して薄汚いと言うのもどうかとも思うけど。いち感想だから言うなとも言えない。また、一部の感想では純愛だという感想もある。この意見には一つ言いたい。これは決して純愛ではない。子どもの頃から父親と関係を持ち大人になっても続いている事に対して純愛なの?それは違うな。作品の意味を履き違えてる様に思える。
映画版の『私の男』は、モスクワ国際映画祭コンペディション部門、最優秀男優賞や数々の賞を受賞している。その映画祭の時に、近親相姦の被害にあった女性から『この様なテーマを題材にして、近親相姦を美化されてしまうと』と言われたという。監督も作者の桜庭一樹さんも美化しているつもりはないと答えている。
そもそも『私の男』という小説が生々しいのだ。それに、映画も多少の変更はあれど、小説に忠実に描かれている。同時に、俳優人が実力派なので目に写りこんでくる映像が余計に生々しいのだ。作品の中で一番思ったのが、娘が、『被害者なはずなのに被害者と思えなくなっている』という事に対して怖さを感じた。被害を受けていた方からすると、昔の嫌なトラウマを思い出してしまうかもしれない。この女性に対し、主演の浅野忠信さんは『辛いことを思い出させてしまったとしたら申し訳ない』と女性に言ったそうだ。でも、これしか言えないと思う。分かってあげることも出来ないし。聞いてあげることも出来ない。
人それぞれ芸術には感じ方があるので、一概に『純愛なんかじゃない』と言ってしまってはダメなのかも知れないけれど、桜庭一樹さんと映画製作側は、純愛としては作ってないんじゃないかと思う。それぞれの愛をテーマにしているのは確かだと思うけど。『私の男』に関しては答えが全然出ない。だから、読んだことある方や映画を観た人達と意見交換をしてみたい。色んな意見を聞きたい。
ある海外の映画プロデューサーが『日本人は優しすぎる。作品やその人に愛があるならプラスの部分もマイナスの部分も言ってあげるべきだ』だと。近年、炎上や規制の厳しい時代になった。それに伴い、デリケートな題材を好きと言いずらくなってきている。言いずらいと思ったり言いたくないのであれば言わなくていいと思う。でも、私は、物議を醸し出す芸術は好きだ。日本にも、海外の著名人の様に世界に出せる芸術が沢山あるし、活躍されている方もいる。私は『好き』を言いたい人なのだ。だから、配慮は考えなくてはいけないと思うけど。そして、芸術に対して答えが出なくても議論していきたい。
ありがとうございました!
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