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連作短歌

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2024年1月の記事一覧

連作短歌「バイタリティ」

食べ放題でも腹八分目にできるこの人だって恋愛はする きらわれることをおそれてないひとがたまにいるけどあれはなんなの もし俺が典型的な性格であるならそれはそれでいいよね

連作短歌「たえられな。」

いつだれが作ったのかも判らない映画を朝の五時に観ていて 君たちもたまに迎えているはずの寂しい夜を余裕でこなす 青空とひまわり畑 ばらばらのひとりぼっちが無視しあう道

連作短歌「ノーヒント」

日曜のとぎれとぎれの話し声みたいにときどき優しくしたい 鉢植えに差し込む西日 鉢植えをくれた人から遅れて届く 足取りはおもいおもいのスリッパの音を響かせ戻る相部屋

連作短歌「わずかさ」

家にいる 昔なかよくした人はいま何をしておられるのかな このままでなんとか続く割れそうで怖いグラスと向上心と 遠くからときどき会いに来てくれるときはそういう顔でいてみる

連作短歌「切実の時代に」

ラーメンをひとりで森に光らせる神話に出てた綺麗な森で 水溜りわざと歩いて靴底がちょっぴりキレイになったらいいな 見えそうで見えないものの言い換えにミヤマカラスアゲハを思いつく

連作短歌「笹舟」

東京のひとにわざわざラインするほどではなくてそれでそれだけ 押し引きがちょうど真逆になっていてもう取り返すことも無理そう しあわせなきみに不安を負わせたくないのにブランクがありすぎる

連作短歌「端的」

コート脱ぎバッグ置きつついつぶりに会えたかすでに話しはじめて 簡単に外側だけで褒められてそのことに悩んだりしてるひと 父親に渡すと職場でラミネート加工してきてくれた押し花

連作短歌「シェアリング」

でもそれじゃ他人な意味があまりないよねって言ってなんで笑うの つるつるな生活のなかで弱点を教え合うのもエール交換 組み合わせが合っているのか不確かな蓋しかなくて泣く同居人

連作短歌「バナナボート」

思いついたことを言わない言わないぞ言わないぞもうバナナボートで 全員に会うか誰にも会わないかみんな迷って後者で落とす 何を見せられているんだよというかチャンネル変えればいいだけだけど

連作短歌「もたぐずのろじわ」

ゆっくりな時間のなかを泳いでて背中が遠く小さくなってく 髪留めという名称の見たことも触ったこともない黒いもの ある意味で羨ましいと言ったのはウソである意味これは相談

連作短歌「ときどきどきどき」

体温が低くて夢が長そうで自分のことをちゃんと好きそう 恥ずかしいときは恥ずかしそうにしてそれで逃げてくならばそれまで 本質でないニュアンスをときどきは消して以心で伝心したい

連作短歌「のーぷらんぷらん」

なんか今朝めでたい人に褒められて怖かったアイス買ってきたよ わたしには見えるわけない感情が世界に川にあなたにふえる いきなりじゃないことがこの生活にときどきあってくれたらいいね

連作短歌「よわきもよわあい」

現実がドラマみたいに簡単でいつも役割あればいいよな 違和感をそのままにして次にいく練習をさせてくれる家族 言動のひとつひとつを炭酸で割って感謝はたまにだけ言う