マガジンのカバー画像

連作短歌

894
ふだんの短歌です
運営しているクリエイター

2023年10月の記事一覧

連作短歌「不遇な友達」

お願いがある夜にだけ光らせてくれてうれしい古い携帯 桃鉄の話をずっとされている わたしはこんなに泣きそうなのに 思い出し笑いにももう飽きてきて一方通行的な愛着

連作短歌「コキア」

飲み物がこの世にあって嬉しいね いちいち思い出されて困る また緑色を買おうとしてるよと友だちに言う友だちの揺れ ジージャンのジャンを一緒に考えて考えてすべてが想起説

連作短歌「夜長」

削除した動画を復活させたくて無駄にするほど長い暗闇 同じ日に再放送を観ていたのかもしれないと途中でよぎる 男性の声は女性の声優が吹き込んでいた十月十日

連作短歌「破天荒」

目覚ましをかけないほうが目覚ましをかける日よりも早く起きれる 二時二十二分を君に見せたくて暖簾を殴る暖簾を殴る テーブルに見覚えのないサボテンがあった気がしてはじける昼寝

連作短歌「確信犯」

「裏で何か見えない力が働いていると考えるのが自然だ」 染み込んで生きていきたいのに息を吐いたり意見を言うと際立つ 外気を入れたくなくて震える この部屋に悪魔と棲んでいて犯される