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連作短歌

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ふだんの短歌です
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2023年8月の記事一覧

連作短歌「狭い個室」

秋雨に濡らされすぎているという理由で彼は非難してくる 歩くのがはやいかわりにそのほかのことはおそいという物語 点描のように経験値がたまる はじめて舐めた冬の赤坂

連作短歌「強迫」

数分で終わる用事を何年も何年も待つ 埼玉県で 日時までぜったい決める人柄を君に見つけて流産のあと 鹿こわい深海こわい死のあとの永遠こわい ふさがっている

連作短歌「同じ夜」

確認をしたくて送りあっている写真ぶれぶれほとんどオバケ 円グラフ描いて説明したげたい、占有率をあなたのぼくの 低気圧の話をずうっとしてくれて無償の愛のことを思った

連作短歌「ノケモノ」

その痣がずっとのやつか訊きたくてうずうずうずうずうずうずしてる 知らぬまにみーんな使い慣れているエアドロはAirDropのこと トロントの友にも届けるため遠く離れて話すトークイベント

連作短歌「なにしてた」

ぽろぽろとこぼれる関西弁のこと触れないでいた海辺の時間 お笑いの人がコントでガラケーを自然な感じにパカっと開ける あたりまえみたいに出征してみたくなってただろう産まれていたら

連作短歌「あずかりしらない」

居酒屋に先に入って待っている友だちが僕にいる移動中 第三のビールのように全身をめぐる緊張と緩和と個人 古畑を観るには夜中すぎるよと言わず隣りで目を閉じていた