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連作短歌

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2023年7月の記事一覧

連作短歌「壁」

対幻想にはダサいとか恥ずいとか、無いんだなって見せつけられて 涙腺が緩んできたという話題をあっけらかんのテンポで笑う 対幻想にもダサいとか恥ずいとか、有るんだなってあとから知って

連作短歌「ホッピー」

おもいでに成増駅で見た月と海と繫がっている眼圧 迷ってる顔を見てるとエメラルドグリーンを選ぶのはわかってた カーナビのとおりでどこへも行けるのになんでも教えてくる男の子

連作短歌「それもいいね」

あのなんか理由わからないんだけどここに居てっていわれたきりで レンタカー返してそのまま別れます、最短距離をつらぬく小道 見たいもの、行きたい場所がありそうな顔を見せつけてくる、後輩

連作短歌「檸檬」

前日の喧嘩のこともしっかりと残ってしまう交換日記 あとすこし柔らかくても硬くても蒸発されたソファのうえで そのあいだ黙っているしかなくてもう長靴のこと盲信してた

連作短歌「わらわれた」

乾かない洗濯物が給食を思い出させて最悪な初夏 しゃらしゃらと音のきこえてくるような約束はまだ有効ですか 何もかもを言ったりはしない 芍薬をはじめて買ったそのいい香り

連作短歌「他人の不機嫌」

ジャングルに梅雨はないから手のひらにオンリーワンな血をめぐらせる ネグられて逃げてきてから今ここで幸せそうな顔できるまで よくしゃべる人が好きって言われてる夜のほのかに涼しいきもち

連作短歌「邪推」

どうしても弱さが足りないような気がしてしまうとき撫でる三毛猫 ホッピーの白か黒かで迷ったり前髪を褒められたりした日 朝焼けのような反射が目に入る角度の席は残してほしい

連作短歌「半袖」

最近は脱力できていて悪くないと思えた今日の明け方 数えるまえは沢山だって思えてたのに数えたら九つだった 会うたびに返事できないちいささでこぼしてくれる見下し言葉

連作短歌「敗因の原因」

詰められるまえからたぶん言い訳を考えているひとりの時間 柿ピーをパウチに入れて持っていくうちに幻滅される天才 判定をくつがえされた塁審のような心地で座る長椅子