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連作短歌

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2023年6月の記事一覧

連作短歌「メッキ」

叶わない掛け声だった、すこしずつ、もしかしてとも思えなくなる ともだちが、つくってくれた広告を飛ばして早くあなたに会えた 若いから怒っていてもかわいくて白黒つけろ!とか言って、くる、

連作短歌「グラススキー」

たくさんのことを思ってそのうちのどれかがなつかしい音になる もう「うん」と答えるだけでよくなってから何年も経って再会 その夜の気分によって帰り道ひとりで選ぶ大人はいいね

連作短歌「社交」

すずしくてあかるい部屋でいつまでも人と話していたいだけです バランスが崩されてゆく距離感のはじまりそして緑の毛布 応援と宣伝のとき人が空みたいになってそれが良かった

連作短歌「恩恵」

10代で終わらせておくべきだったことのすべてのなかに今いる なんらかの防衛機制なのだろう そんなにテンション下げているのは 順番を待たないとだめだと思い素直に待っていたらこれだよ

連作短歌「なになの」

いつまでが満開だったのかは萎れはじめてからしか判らないもの 何してもおんなじような感情に落ち着くというパワポができた 現実が今も流れて屋外にいる人々を支配している

連作短歌「歯が浮く」

ひとつずつ謝っていく夕方をトロイメライと訳してあげる 貝殻のボタンに引っ掛かってしまうネックレス指でほどいてくれた 砂時計さかさまにして正しさの極まる夜にひとりキレてる

連作短歌「バック・ラッシュ」

半分になったビールのぬるさすら共有したい水曜の雨 本名をやっと教えてくれた ってミステリアスにもほどがあるだろ コインランドリーのにおい 池田晶子『リマーク』を最後まで読み切る

連作短歌「近距離にCity」

ニュアンスがわたしを包む夕暮に踊りたくない光りたくない 背の順で並んでみても八月を中心にして廻って混じる 空間の使い方を褒められたいなあでも近道は時間の無駄よ

連作短歌「ぶきみ」

ばれていた、のが嬉しくて多産多死、いもうと、おとうと、夢に、おわった 思い出に期限があってぎりぎりの秋にもきみに会いたくならない 交換のつもりで通り過ぎながら環状線のことを思った

連作短歌「ハイライト」

寿命から逆算しなね。キラキラの琵琶湖は沈みながらキラキラ 健康がうらやましいやカフェラテを買いまちがえて君に会いたい 地下室の感じで軽く、広告のうるおい再現しようとしてた、

連作短歌「リー・ステイシー・リー!」

休憩の時間のなかを泳ぐのを見る側としての意見をあげる ほんとうの行けたら行くねであってくれ紫陽花こんなにおおきいまひる 恣意的に無視されているお願いを二人の狭い常識とする

連作短歌「タノシスギテナキソウ」

狙ってるみたいにいつもこの袋小路でできることだけしてる 海じゃなく湖だって教えたい教えられたいどっちも大事 こうやって薄れていくということがとってもわかる夏の夜だわ

連作短歌「進路を取れ!」

多数派のようにあきらめ少数派のように君を誘ってしまう ぎゅってしたら二年くらいと言わないでほしくて今日はじめてぎゅってした しかたなく靴を履くけどドンドコドン毎回たのしいとは限らない