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連作短歌

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2023年4月の記事一覧

連作短歌「なしくずし」

苦労してきたのねという字幕すぐ消えてしまって続くロマンス 黒の似合うひとがヤ行が音としてかわいいってこと聴かせてくれる しなければならないことがなさすぎるなんて歌ってみる四月尽

連作短歌「ソロ」

迷惑をかけないようにしていると迷惑をかけられなくもなる 11時に起きてすっかり早起きな気分で髪をまっすぐ梳かす 僕にすらなれるんだから誰にでも優しくなれるあなたでいてね

連作短歌「セパレート」

君のために使いはじめたSpotifyが今はもう下のほうにある 卒業をするべきもののようにこの曲を忘れろなんて言うなよ おじいちゃんになるころ返信してくれてそれを読みたい春のあけぼの

連作短歌「わかったわかった大丈夫」

順番が大切なのね。本心を話したことを責められている あのときは笑ってしまったけれどまた真面目な顔を見させてほしい 百人のともだちいればそれぞれに九十九人ともだちがいる

連作短歌「つよくてよわい」

634メートルにしようって知らないとこで誰かが決めた こんなにもドラマチックな消去法を見せられていて憧れている はずかしいのなら口にはしなくてもいいけど擬似家族的な未来

連作短歌「損切り」

あれは桜じゃ、なくて梅だよ。かんたんなつもりが実はひとりなんです 源氏名をもらう 自分で決められる機会はいつも逃してしまう ものさしを失くしてわざわざ買い直すほどでもなくて令和も五年

連作短歌「ぬるい世界」

用意するモノ:人生でうぬぼれたことが一度もないと言う人 利他性が必要ですね。最近は遠くのひととラインするだけ 夢があってそれに向かって進んでるっていうことを君に伝えたかった

連作短歌「ラグーン」

言い訳やんあとづけやんと言われてるときのわたしはちょっと嬉しそう 十年来の〈来〉の部分が好きなのであなたの十年来になりたい 観客の一人としてはこれ以上ないほどとてもがんばっていた