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連作短歌

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2023年1月の記事一覧

連作短歌「ピロティ」

春雨がふりふりワンピースのネット広告をにじませるディスプレイ ふるさとの名前のお漬け物を食べながら浮かべてみる異性愛 寝ていたら夢でふるポテふる自分自身の姿が俯瞰で見えた

連作短歌「アンロック」

この人はいろんなところで優しさをもらってそうだと思って離す 消えるみたいにいなくなるからぬいぐるみ治してあげている夜も雨 文字情報など重要なデザインは上記サイズに収まるように。

連作短歌「あわだち」

焦燥が性愛になる惑星で短い夜を駆け抜けてやる 最近は涙もろくて再会の準備のように軽い足取り みんな好きだろうと思うことで自分の好きを相対化してしまう

連作短歌「思ったんだった。」

片足で立ってる大道芸人が川の向こうで拍手を浴びて 絶対に僕はジェンガはしないから帰るね別に怒ってないよ ほんとうはことばのちからなどだれもしんじられないのかもしれない

連作短歌「遅効性」

絶対に向いているのに「辞めようと思っている」と言われて黙る 影響を与えることに慣れている人の言葉が浮かぶ貯水池 食べさしのものが入っていることを思えば安心してねむれない

連作短歌「見返し」

舞う雪のなかをひとりでマンモスの絵の半袖の白Tでゆく これはもうほとんどふれられてるような部屋だ会話だ劣等感だ 反応をしてしまったら白日の夢だったことが私にばれる

連作短歌「草葉の陰から」(10首)

面白いことを返さなくてももういいみたい東口バス広場 クリスマスツリーの星を夜中じゅう触ってて手がラメラメになる 金色の文字で書き表すような感情じゃない君の口癖 あかぎれを隠してその場しのぎから逃れられない告知を浴びる 誰にでも個展があって来てくれた人との霧吹きみたいな会話 一生に一回きりの飛行機に隣りの君がくしゃみする音 言及の先の語りを見てみたい知ってる人が報われてゆく 離れてるあいだもおばあちゃんの家に届き続けた京都新聞 日常の真面目な顔で僕たちは遠さにつ

連作短歌「親しい親族」(10首)

冷たいのはどちらでしょうか脇役によくいるハッピーさを手に入れて 銭湯のビールのよさを雑談に組み込むなんてとても斬新 つるつるにしか見えなくてこの距離を守っていたい気になってくる 芸人がラジオで話す税関でスノードームを失う話 ふりつもるものが明るくしてくれる皮膚が羨ましいって言った 完璧を諦められた人ですという顔をして座るバス停 プレゼンを褒められていてまた君の実績ひとつ増えて明日へ クッションを四つ届けてくれながらグラデーションを楽しむ真冬 デパートの惣菜売り