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連作短歌

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2022年10月の記事一覧

連作短歌「整理番号」

旅先でポストカードを見ていたら思い出したと言われてみたい ひらめいてしまってからはもうなにも聴こえていない二時間だった 家に来る気配のことを夕立と呼んでふたりで愉しんでいる

連作短歌「シークレット」

成就してほしいと思う目標を抱えて君は遠くに行った いつまでもあちらがボールを持っているなんて思っているうちに雪 まだ二十三時と思って喜んだのはスクリーンショットであった

連作短歌「やりなおし」

見逃したドラマのなかで観覧車まわってたって教えてくれた 関心が無いって顔をされている。無関心ハートフル無関心 中学に金木犀が植わってた気がするんだけど植わってたよね?

連作短歌「帰路」

引き返すのが楽しくて迷ってるきみの後ろを黙って歩く 覚えてるのは最後だしもう一周しようと言ったのは俺なこと ほらまただ、何か違うと思われてそれが何かは訊けない夜だ

連作短歌「手首」

いい人と思われなくていいやって思えて生きれているこの人は 笑わせてくれるところが好きだった話をまじめに聴いてあげてた あの日々に教えてくれた感情が身に染みているひとりの国で

連作短歌「転々」

溺れてる彼の写真を撮ってみたのは憧れの表情だから 昨日まで狭くて暗い喫煙所だったとは思えない緑色 東京の詩を読んでいる東京で生まれた人が帰ったあとで

連作短歌「ダークデイズ」

駐輪場のなかを通って地上から地下へと降りてゆく雨の夜 座布団の下で何かの声がしてそのままにして乗る千代田線 崖だったところに家が建っていくのを数えてたホームのベンチ

連作短歌「チャレンジ」

長年の努力が水の泡になる瞬間が来てぶちあがる恋 目に入り買ってしまったブルボンのお菓子でちょうど満ちる朝食 ただ川の近くに居たい友だちが集まる夜に降る雪の白

連作短歌「はなしてほしい」

お見合いでおすすめされた爆発で終わる映画のコールドオープン 奥さんの漫画を配っているひとが幸せそうで幸せそうで 二年前には考えもしなかった日記の内容と形式だ

連作短歌「モクテル」

不可欠になりたい 雪が積もってた頃の写真がめっちゃ明るいね 話したいことはとっくになくなって秋の花粉もすこし恋しい 象徴にされないように気をつけて気をつけて君が言うさようなら

連作短歌「いまのうち」

誰も見ていない個室のすみっこでちいさい秘密を見せあった滋賀 知っている人もいたのに相談を持ちかけなくて気づかずにいた プライバシーを破壊しあっているような行為のあとで秋を見にいく

連作短歌「クールダウン」

共感を求めていない楽曲が自動で薄く流れ続ける 噂には聞いていたけど実践としては初めて見た諫め方 わかったら終わってしまう感情は褒められてまた終わってしまう

連作短歌「やっかい」

それでもうさわれなくなることがもう決まっててもう待ってられない 根底に怒りの気持ちがあるという雑談をして甲板に出る 叶えてるみたいに見えるカウンター席で目を見ず時計を見てる

連作短歌「みやこわすれ」

いま知ったんですけど泣くと疲れます それはそれとして鏡の夢だ 安直なひとと思われ体操を作って憶えて忘れてました シュウマツが始まりました いままででいちばん長く感じています