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連作短歌

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2022年6月の記事一覧

連作短歌「依存」

健康ならあした私と会いましょう不健康ならいま会いましょう 手を取って走ってくれたあの夜に捨てた依存と拾った依存 旅先の短い橋の待ち受けを赤外線で僕にもください

連作短歌「レダ」

ほんとなら一歩も動けないような関係項のなかで踊った 二人乗りみたいなエレベーター昇る予行練習めいた宇宙を 点滅の時間をとめて会いにきた彼の頭をすこし撫でたい

連作短歌「白い道」

松本か長浜だったと思うけど迷子になってそのままたぶん 先生が残業してる サンダルをこどもみたいにパタパタさせて そう持つの!?そう頷くの!?そう笑うの!?そう歩くの!?ありがとうございました

連作短歌「みんしゅしゅぎ」

決めつけはよくないよって教えたら決めつけるのを控えてくれた 九千円が無限に出てくる抽斗にお返しのお団子を入れておく 限界と希望が同時にやってきて希望にすこし帰ってもらう

連作短歌「消えちゃった」

縦向きの動画を横になりながら観ているときの両側の黒 ケーキを一緒にたべてるだけだ明らかにケーキを一緒にたべてるだけだ 妹の隣りでねむっているだけだ爽やかに妹の隣りで

連作短歌「極薄」

会えるっていいですねとしか思えない どんな反戦映画をみても 手書きの手紙というものを書いたことがない 八万円くれたらすべて無いことに出来てしまえる梅雨が終わった

連作短歌「ファン」

本命の人に渡せなかったから下さっていることがばればれ 直前まで考えないようにしようと心に決めた半年前だ 寝ていればよかったものを着替えたり駆け引きしたりエプロンしたり

連作短歌「てのひら」

鍵を閉めている時間を待っている外で 僕はいつも外で たこ焼きを褒め爪を褒めエプロンを褒めるあいだに埋まる三年 どれだけのことが伝わったんだろう咄嗟につかんだそのてのひらで

連作短歌「1000」

気が遠くなりそうなほどそっけない返信なのにスクショしている 何歳になっても噓がうまい人の噓に溺れる呼吸でいたい 気が遠くなるというのはここじゃないどこかを望む人の症状

連作短歌「自滅」

いつか来る気はしてたこの瞬間に自慢話が間に合ってない 知らないだなんてもったいないだとか言ってしまってまた落ち込んで それでいいみたいな感じにしてあげてますけど違いますからね弾

連作短歌「リハビリ」

いろいろと忘れているのが心地よく手ごたえのない散歩 口笛 分が悪い立場に汗を拭い拭い日本語字幕がいますぐ欲しい 恥ずかしがもう致死量を超えている という川柳をあとで詠めそう

連作短歌「不器用」

スピードで何かを示す何一つ本心ではなく笑い泣きたい 会いたさという症状を隠しつつ出勤をして退勤をする さてとても興味津津なのにそれを難なく隠してしまえるあなた

連作短歌「水曜日のオーバーラン」

失礼なことを言うのはむずかしい自意識過剰と思われるから むかしの曲むかしのドラマむかしの本むかしの友達いまの婚約 イメージと違うと言われイメージがどんなだったんかめっちゃ気になる

連作短歌「火曜日の戦略性」

二回だけ続いたあいこのチョキとチョキ五年も前だから忘れてた 仲良くても緊張するねと言い合ったシチュエーションをもういちどだけ 確実に自分のものだと言えるもの数えてみたら怖くなりそう