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連作短歌

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2022年2月の記事一覧

連作短歌「生い立ち」

やなひとがやなことを言うのは君がいいことを言うのとおなじこと 現実で会った回数より夢で会った回数のほうが多い 引き続き聞き耳きらり友達を紹介されかけ遠慮する夜

連作短歌「えんとつ」

疲れてないときに地図見て疲れてるときには見ないって逆じゃない? 常識のある人だと思われたいと思う人なんてこの世にいるの? なりたいと思った人になれるなら選んだ道はほんとにこっち?

連作短歌「餞別」

最近の驚いたことを話したらむしろあるあるでは?と言われた マンションの一階にあるスーパーでバイトしようと思えばできる テーラードチェックジャケット雨降れば見たいとこから隠されてゆく

連作短歌「あの雨」

痛くないのに痛いって言ってしまい、そのことばかりで疲れてしまう 過渡期って言葉が好きと言っていたあの人どこの誰だったっけ 肩入れを誰にもしないと決めているうちはけっきょく雨なのだろう

連作短歌「儚げといえば儚げ」

ごみ捨てに行ったきり声も聴いてない不自然なほど細いあの声 左利きなんて全然関係もないことなのにまぶたがゆれる 誰も好きになれないけれど全体としては、とまで言いかけて黙った

連作短歌「それなり」

まばたきの少ない人が勝っている勝負でなければ生活と呼ぶ それなりをやるのがだるい 何もない人と思われると心地よい そうだろう肘がくすんでいるだろう映画のなかで描かれるテロ

連作短歌「分別」

嫌われるように描かれてる人を観るくらいなら何も観たくない 低すぎる椅子が落ち着く我々は毎日首が凝っているのだ 雑音を生み出すために駆り出され小雨のなかを帰る夜道か

連作短歌「昨日」

びびるほど誰とも会わなかった今日みたいな日々を記録してみる 何気ないこういう夜に地震とか来そうと思ってたら寝てた昨日 遠くにいて私のことを想ってるひとが存在していても無駄

連作短歌「光にさらす」

傘立てに腰掛けながら中庭を暖めている西日を撮った はやくひとりになりたいけれどあの春の雨の夜の傘一本きりで シンプルな棒と棒との組み合わせ、あるいはさみしい夜の具現化

連作短歌「音」

河原町OPAにひとり行ったこと こども切符のときだけの音 気にしすぎだよって助言はあまり人に言ってあげないほうがいいらしい 終わるならフェードアウトで。、。点滅がリアルに見えた刺繍の星の

連作短歌「ドッペルゲンガー」

三年前の自分の心を克明に追憶できる白物家電 アクリル板を挟んで少し戦争の話をしたがよくきこえない 正月に歩いていたコレットマーレ会釈してきたドッペルゲンガー

連作短歌「螺旋階段」

また夏が来るよな、たぶんあの頃の自分らしさをたまに言われる 前を行く靴下をよく憶えてる螺旋階段、見える手触り 憶えてるとおりの物が入ってたタイムカプセルまだまだやれる

連作短歌「複数記憶」

休日が増えることより平日が減るのがいいね、三連休は。 すぐに泣く奴が多いが助手席をふかふかにして着くまでねむる 死にたくはないけど死んでしまえたら交わる湖岸のマルチメモリー。

連作短歌「価値」

創作がなんぼのもんじゃの樹の下で辛子たっぷり玉子サンドを わかるわかる落ち込むよねってほんとうにわかられてるから二十二世紀 速すぎてハートを書けないオムライス 告発文は逗子へ届けて