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連作短歌

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ふだんの短歌です
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2020年11月の記事一覧

連作短歌「電池交換」

生活を続けることで擦り減ってゆくものを箇条書きにしてみる 並べれば比べてしまう切れたままだった電池をきょう替えてみた 説得をするのはあなた納得をするのはわたしパン屋のにおい

連作短歌「好き勝手」

凡庸な比喩になるけど出口のない迷路みたいな恋になりそう 水筒にコーヒー入れているけれど水ですよって噓ついちゃった この距離で気づく私もやばいけど県境ってたぶんまぼろし

連作短歌「旅中旅」

あくまでも一般論ね、と言うきみの忠告がずっとこびりついてる ちょうどよい猫背について語り合うぼくらにちょうどよい純喫茶 長い旅のなかで短い旅に出て戻ってきてもまだ長い旅

連作短歌「二人暮らし」

本棚イン本棚いい感じになった帰ってきたら君に見せよう 適当に本を選んで寝転んで君の栞の続きから読む 夕立がすぐに止むのを知っていて止んだら帰ると目も見ずに言う

連作短歌「再会」

じゃじゃーん実は生きていました音沙汰がないなーとか思ってくれてましたか 適当に入る居酒屋探すのが上手くなってて僕は泣きそう この前はどこまで話しましたっけ横須賀のことは言いましたっけ

連作短歌「キャラメル」

もうなにも作らなくてもよくなってそれから初めて見る歩道橋 「折り合い」というタイトルで良い曲を作ってしまう星野源さん チョコバナナキャラメルチキンパンケーキおいしい 君と死ぬまで暮らす

連作短歌「教室的、韻律的」

首絞める遊びをしてたら落ちちゃった男子に男子が群がる小春 放課後の教室的なけだるさをなんでか君の部屋に感じる 韻律論の講義を受ける元彼も今彼もいる大教室で

連作短歌「K70」

木綿でも絹でもいいよ豆腐なら、くらいの解像度で生きている いま前を通っていった老人は知るはずもない僕の内面 人のいない世界についての妄想を電車の音が裂く曇り空