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連作短歌

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2020年9月の記事一覧

連作短歌「静かな日」

髪の毛が緑色なのきれいだね、ところで一つ悩みがあるの 朝ごはんしっかり食べた 静かな日 スカイツリーがくっきり見える 声がして振り向いたけど みんないて 満たされたならまた歩き出す

連作短歌「明るい死」

十年ぶりに触った肌がなめらかでそこからはもう覚えていない

連作短歌「文章力」

足がないと会いにいけない手がないと静かになぐさめてあげられない。 深夜に急に散歩に呼べるともだちが欲しいだなんてどうしたの俺。 カラオケが閉店しても光ってる。蒲田駅から歩いて帰る。

連作短歌「酔い」

もよもよと水に溶けてくウイスキー、花見の季節、終わってゆくね バリバリと音を鳴らして壊れてく黒いラジオが羨ましいな ほら君がいちばんいいよ ほろよいでなんでも言える夜もたまには

連作短歌「逃避行」

ポケットのなかでこっそり繫いだらキーンと冷えたバニラの味だ あいている窓から入ってくる風が私をこんな気持ちにさせる イヤホンで直接ふるわす鼓膜って一人で暮らす田舎みたいだ

連作短歌「走るのに適した靴が一足もない」

へんてこな虚勢を張っているきみを笑ってあげる 笑ってあげる シャラララと歌ってみても走るのに適した靴が一足もない 笑い話になってからしか私には教えてくれないきみの毎日

連作短歌「ジャスミンティー」

休日の電話無視して水筒にジャスミンティーを入れて出掛ける 真実はそうじゃないのかもしれなくて何も買わないナチュラルローソン あいづちをうってばかりで自分から言いたいことが何もなかった

連作短歌「あれよあれよあれよ」

単色だと思い込んでた! ひさしぶりに見たらめちゃグラデーションじゃんか ハイボール作って飲んでることとかは言わないけれどいちおう知ってて ベランダに椅子置きたいが雨の日にいちいち片付けるのはだるそう

連作短歌「体を畳むように眠って」

なんでもいいからおんなじやつにしただけで深い意味などないのだけれど 連休の真ん中の夜 誰もいない道だから歌いながら帰る 興味ねえことでみんなが怒ってる 体を畳むように眠って

連作短歌「秋の叶わない」

空調の効いた小部屋で機械的に十首つくってからねむる俺 あめのおと 濡れる右肘 コンビニに二回行ったらもう終わる今日 すれ違う人の視界に映る俺 歩く瞑想みたいな初秋

連作短歌「やだね」

ここのナンふわふわしてておいしいね 聞き上手って言われてみたい 歩きやすい靴を履いてきてよかった 爪のかたちがちょっと似ている 泣きそうな顔を見てよく可愛いと言われるらしい 興味ないけど

連作短歌「どうしたの」

ぼくはいつも置いてかないでって言いかけてそれを色々に言い換えている たまに来るぶんには丁度いいけれど住むには疲れそうな駅前 どうしたのこんな夜中に春に会う約束をして電話を切るの?

連作短歌「どうだろう」

どうだろう 毎週日曜十二時に喫茶やよいで会うってゆーのは めんどくさい 月一がいいときもあり週四がいいときもあるので 淋しいとき淋しいって言うのが苦手 だからって一緒に住むのはどうだろう

連作短歌「冷蔵庫」

みんな用のコーラ1.5L 一番下の野菜室のなか ごまぽんのほかには何も入ってない絶望的な日曜の朝 泣きそうな夜は閉まっているときの冷蔵庫の暗さを考える