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連作短歌

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ふだんの短歌です
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2020年5月の記事一覧

連作短歌「ポニーテール」

はつなつをレゲエ聴きつつ闊歩してこれでもかってなびかせている 遠すぎてポニーテールが届かない わたしの必殺ポニーテールが 閉店後のふたりの店でささやかに祝い合いたい結婚記念日

連作短歌「岬」

岬と名のつく場所に行ったことなくて教えてほしいおすすめの岬 予約してないんですけど借りられたレンタカーどうせなら真っ赤な ひとつだけ理由があればそれでいい反対意見がいくつあろうと

連作短歌「俺にも夏」

不在などと名づけたところで変わらない スイカきらいって知らなかった 俺にも夏 はじめてできた友達と食べたかき氷の色占い 運命と言えば運命あの日なぜ傘を二本も持ってたんだっけ

連作短歌「あべこべ」

冬だったのにわらび餅たべながら二十代での恋愛は無駄 あべこべなことを言ってはいるけれど悪い人ではなさそうな耳 シーソーのおんなじ側に座ったまま素朴なことをしゃべった小春

連作短歌「ほやほや」

大学も卒業したしこれからは夏じゃなくても自由研究 できたてのイオンモールの屋上からここにしかない景色が撮れる できたてにほやほやをつけるテンションでまいにち生きていたいじゃないか

連作短歌「歩き方」

変なこと言うようだけど君の傘さしてるときの歩き方が好き 恋敵が早生まれだって聞いたときたぶん勝てないなって思った 不思議っぽいことを言ってりゃいいというものではない 茹ですぎたパスタ

連作短歌「このままどこか」

研究者のあいだでも意見の異なるファーストアルバムだけを残して お気に入りのお菓子を一人一つずつ持ち寄ってつくるバラエティパック 土曜って逆に早く起きてしまう!『ムーンライズ・キングダム』観よう

連作短歌「瞬間」

あっ、指が まぶたの裏に森がありとてもきれいな花が咲いてる 気を許してくれてるということにして許せる時期も過ぎてしまって 小学校に無口な同級生がいてそいつはサッカーが上手かった

連作短歌「そうじゃない」

友達は友達恋人は恋人って言い切ったあいつかっこよかった いまはもう更新されていないけどたまに夜中に眺めるブログ もともとそんなことしたことないけど、みんなで一つのカレー食べたい

連作短歌「悲しさしさしさ」

歩きでは行けない場所もたしかにある もんやりとした悲しさしさしさ 人間がいない小雨の河川敷 呼んでも来ない犬が一匹 君がいたらすっぽり隠れてしまいそうなセイタカアワダチソウの悲しさ

連作短歌「たぶんなのですが」

僕はいまカレーを食べているけれどカレーを食べてないかもしれない 漫画のなかで漫画を読んでるやつがいてそれが実在する漫画だった たぶんなのですがあなたのお隣りに座ってねむってみたい気分です

連作短歌「二重生活」

煙が立ち上がってくる 足を組んでいる黒い男が叫んだ みじめな思いをすることもあるだろう だが惑わされてはいけない ここに地下室がある 愛と生と死 知っているのは俺とお前だけだ

連作短歌「各停」

ぷっつりと立入禁止になっている柵の向こうに何があるのか 人生がここで大きく変わるぞというとき怖気づいてしまいます あけすけな会話をしてる学生がひとりずつ降りてゆく各停

連作短歌「夏のロンリナイ」

君がいるからとかじゃなく先輩に頼まれて買いにきたんだ そっか 不規則な風をつかまえ飛ぶ鳥の飛ぶ鳥の羽ばたきの少なさ ひとりきりだったとしてもこの夢は見ちゃうと思う 君のまつげの