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学校の教科書には載っていない 危ない頭痛を見抜くには

私達鍼灸師が頭痛に対する施術を行うときに第一に考えることは、その頭痛が脳の血管の病変や、脳腫瘍などに由来するような一次性頭痛といわれる「危ない頭痛」ではないかどうか、ということです。

実は、患者さんのお話を伺うことにより、ほとんどのケースでそのような危ない頭痛かどうかを判断することが可能です。

キーワードは「突然の頭痛」「増悪する頭痛」「人生最悪の頭痛」ですが、これらのキーワードが具体的に意味することへの理解が重要です。


その時何をしていたか・・・「突然」の意味すること

突然症状が発生するということは、体を作っている組織が詰まったり、破けたり、裂けたり、よじれたりすることを意味します。

頭痛の場合でいうと、脳組織に関係する血管がそのような状態になっていることを表していると考えます。

しかしながら、強い痛みが生じたら、誰でも突然発症した、と言いたくなりますよね?

ポイントは、突然とはどのようなことを指すのか、ということです。

誰でもびっくりしたときや強い印象を抱く出来事が起こったときは、その瞬間のことは覚えているものです。突然発症を表す重要なエピソードは、その時に何をしていたのか覚えている、ということです。

例えば、テレビをみているときに、あのタレントが発言した瞬間、であるとか、トイレのドアを閉めた瞬間、やスマートフォンで家族にメッセージを送った瞬間、などです。

このように、頭痛が発症したときの瞬間を覚えているような場合は、からだの組織が詰まる、破れる、裂ける、よじれるような状況であることを意味しているので、すぐに医療機関への受診を考える必要があります。

脳そのものは痛みを感じない 増悪する頭痛とは脳がだんだんとむくんでいくこと

危ない頭痛のなかでも、だんだんと症状が強くなっていく「増悪する頭痛」が意味することは、脳の血管が破けて出血することよって、あるいは脳に腫瘍ができていることなどによって、だんだんと脳組織がむくみ、脳を包む髄膜が圧迫されていることを表しています。

脳というのは神経細胞の塊なのですが、実は脳細胞そのものは痛みを感じません。脳は固い頭蓋骨の中に、髄膜に包まれて保護されているのですが、脳血管が出血したり、脳の中に腫瘍ができると、脳内に増えた圧力の逃げ場がなく、周りの髄膜が圧迫されてしまいます痛みを感じるのはこの髄膜部分なのです。

症状が強くなくても、2週間以上持続する痛みがある場合も医療機関への受診を考える必要があります。

人生最悪の頭痛とは誰も言わない いつもと違う頭痛

くも膜下出血を意味するエピソードとしてよく使われる表現で、突然バットで殴られたような痛み、など言われますが、全員がそのように強い痛みを感じるわけではありません。

ポイントになるのは、その痛みが、過去に経験したことがあるかどうか、ということです。

よくある頭痛である、片頭痛や緊張型頭痛の場合は、過去に何度か経験したことがほとんどです。そのような頭痛ではなく、いつもと違う経験したことがない痛みの頭痛、である場合は、バットで殴られたような痛みでなくても、十分に注意が必要です。

いかがでしたでしょうか。危ない頭痛の見分け方というのは、確かに冒頭で提示したように、「突然の頭痛」「増悪する頭痛」「人生最悪の頭痛」という問診情報が頼りですし、学校でもそのように教わります。しかしながら、具体的にどのようなことなのか、という理解が、実際に人を診るためには必要であるのと、そのようなエピソードがないかどうかを聞き出す技術が必要です。普段の問診にぜひ活かしてください!

この記事の執筆者

萱間洋平 かやまようへい 1980年浦和生まれ
神奈川県立横浜緑ヶ丘高校卒業→慶應義塾大学理工学部物理学科卒業→製薬会社勤務→鍼灸あん摩マッサージ指圧師免許取得→鍼灸学校教員免許取得→慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程修了→慶應義塾大学医学部漢方医学センター非常勤講師(鍼灸外来)→ヘルスケアデザインラボ代表
ランニングと料理とサウナが好き


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