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2021.1月17日 短編・31『第八の事件 ディオメーデスの馬』 & 桃色の星型モチーフ

名探偵ポアロシリーズ読書記録、短篇集『ヘラクレスの冒険』より、本日は『第八の事件 ディオメーデスの馬』をご紹介します。

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この短編も、あまり心地よさや爽快さを感じる小説とは言い難いですね。何とも言えない、苦さを感じてしまいます。

この作品を読むと、クリスティ氏はとことん、コカイン常用や麻薬パーティーなどというものを憎み、否定していらした方なのだという事が、よく解ります。

長編小説の『第三の女』を読んだ時もそう感じましたが。一部の芸術家と称する人間たちが、コカインや麻薬、覚醒剤といった特殊な薬物を肯定的に捉え、人生を謳歌する為やストレスを発散する為に必要なものと認識し、常用することを。アガサ・クリスティさんは、忌み嫌っていたのでしょう。

クリスティ氏が産み出した名探偵エルキュール・ポアロ氏も、勿論そういった忌まわしい薬物には、徹底的に否定的な立場をとっておられますね。

その点は、シャーロック・ホームズ氏とは大きく異なっています。ホームズ氏が活躍した時代のイギリスでは、コカインは合法だったようなのです。ただ、親友の医師ワトソン氏は、シャーロック・ホームズのコカイン常用を止めさせそうと尽力なさっていますよね。

独り密かに、コカインや麻薬を嗜むのも良くないことなのですが。他者に勧めたり、麻薬パーティーを開いて集団で摂取や吸引なんてのは、本当に最悪なこと。

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この短編の中でポアロ氏が語っている台詞を、引用します。

「ストラード先生の説明でよくおわかりだと思うが、麻薬は人を生ける屍にしてしまうものですよ。あっというまに中毒になってしまって── いったんなったら、薬を絶つのは至難の業だ。そんなふうに、他人を堕落させ、悲惨な状態にすることでボロ儲けしているやつは、人の生き血を吸う吸血鬼だ」

読後感でいえば、決して良くはない作品ではありますが。この台詞に出逢えたことで、この小説を読んで本当に良かったなと、思えました。

願わくば。1人でも多くの若者に、このポアロ氏の言葉が届きますように。

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本日の編み物作品《ミニミニシリーズ 第八のモチーフ》は、桃色の星型モチーフです。

星に願いを☆

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