フリーきっぷで乗る乗り入れ列車
近鉄フリーきっぷを使いつつ、関西では他社から近鉄に直通する電車にも乗ってみたりした。
近鉄×メトロ
信貴山にお参りし、大阪側から山を降りて大阪中河内をぐるりと回って生駒へ。そこからけいはんな線に乗り換える。
白にオレンジとブルーの帯を巻いた他線とは異彩を放つスタイル。ドアチャイムは大阪メトロと同じ音で「扉が閉まります。ご注意ください」の女声アナウンスの声の主も大阪メトロ。さらには架線やパンタグラフがない代わりに御堂筋線や銀座線などで見られる「第三軌条」というレールから電気を取り込む方式も近鉄らしからぬ。「KINTETSU」のロゴマークが辛うじて真っ赤なのと仲間であると分かるが全然別会社のような雰囲気。
直前に来ていた生駒止まりの電車は“緑のメトロ”中央線。乗り入れ車両も頻繁に来る。最早、近鉄というよりも中央線のバーター感が強い。
まずは学研奈良登美ヶ丘行きに乗る。生駒発車直後の長いトンネルでは駅間の長さも相まって高速で飛ばす。比較的新しい路線で白庭台や学研北生駒ではニュータウンが点在している。
終点学研奈良登美ヶ丘に到着。ギリッギリ県庁所在地で京都府境もすぐそこ。ここから京都府内に延伸する構想もあって、けいはんなは「京阪奈」を由来としている。イオンを中心に、マンションなど開通でかなり大整備されたような印象。近未来感を感じさせる。
ここから、生駒方面へ折り返すが、今度は左の大阪メトロの電車で向かう。乗ったのは20系という大ベテラン。夢洲進出と万博の影で引退のカウントダウンが迫る今乗っておきたい電車だ。
大阪メトロで見慣れた広告や「田の字」形の昔ながらの窓、見慣れた白い壁と扉、サイン類。推しの鉄道の1つだからこれだけでもテンションは上がる。
来た道を戻っていくが、MAX90㎞/hで生駒の山々を駆け抜ける姿は大阪市内ではなかなか味わえない。「yonige」「ヨルシカ」などBPM高めの音楽を聴いていても楽しい気分だ。
生駒を越えてやってきたのは長田駅(東大阪市)。大阪メトロとの境界駅でこの駅で乗務員が交代したり、自動放送の声の主が変わったりする。大阪メトロ仕様の駅サイン、放送で改札にいるのはメトロの駅員さん。ただ、「近鉄全線フリーきっぷ」では有人改札で提示すれば降りることができるし、駅の看板はダブルネームになっている。とは言っても、早朝深夜以外の大方はコスモスクエアから学研奈良登美ヶ丘or生駒まで通しで運転されているし、両者とも分け隔てなく運用されているからそういう感じは無かったりもする。
ちょっと街をぶらつく。近畿自動車道と阪神高速13号東大阪線が交わる「道路の要衝」。下道もトラックが行き交うなど交通量が多い。
近鉄奈良線×阪神
生駒へ戻って今度は大和西大寺へ向かう。ここでもちょうど他社車両が来ることが分かって1本やり過ごした。
その後やってきたのは阪神1000系による大和西大寺行き区間準急。主に神戸三宮と奈良を繋ぐ快速急行をメインに、尼崎を発着して近鉄奈良線へ直通する普通、準急、その他難波発着で近鉄線だけで完結する急行などに用いられる。もちろん阪神の車両故に山陽電車にも乗り入れできる一番マルチな電車。
この電車を狙って乗ることができたのはこの表示。扉の数が異なるため、「△」が阪神3扉、「○」が近鉄4扉という風に分けられていて、アプリの列車位置情報でもこういう情報も併記されている。ちなみに名古屋線でも同様。
車内の広告は兵庫県阪神地域のがほとんどで、扉の開け閉めの際には「プー」とブザーが鳴る。奈良にいるようで神戸にいるようなもんだ。
「ビスタEX」で大和西大寺を通りかかって阪神電車に遭遇したときは台湾の地下鉄「桃園メトロ」とのコラボラッピングが施されていた。その他、阪急阪神HDと東急電鉄が共同でやっている「SDGsプロジェクト」や「沢の鶴」「大関」を始めとする酒どころとして名高い神戸「灘五郷」のPR、「タイガース」「平清盛」などなんば線電車の行動範囲の広さを生かしたラッピング電車が数多い。楽しくて、絶好の広告塔なわけだ。
最初と〆は…
様々な電車に乗ってきた「近鉄全線フリーきっぷ」の旅。三重県内以外はただただこのきっぷで乗り回してきたが、実は最初と大トリに乗った電車は図らずも近鉄ではない他局車両だった。
京都市営地下鉄(京都市交通局)烏丸線の電車。国際会館駅から新田辺駅を結ぶ普通の他、昼間のみ奈良駅まで急行としても乗り入れる。関西の地下鉄で通過運転するのはここだけという貴重な存在だ。
緑とシルバーという異彩を放つカラーリング。ご近所で超お世話になっているし、アーバンな地下鉄と山城の田園という良い違和感は大好きだ。
このうち〆に聴いた『嘘月』。ちょうど「ブルーアワー」のいいときに聴いて素晴らしい旅のフィナーレになった。
そんなこんなで「近鉄全線フリーきっぷ」を使いながら乗った他社局車両に乗ったときのことを綴ってきました。関東とは異なってなかなか他社局との直通運転が少ない関西ですが、こういう異彩放つ電車はファン的にはテンション上がるもんですし、そうでなくても「ええことあったな」と思えるものかもしれません。
ストリートミュージシャンの投げ銭のような感覚でお気軽にどうぞ。