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本当にさようなら

2019年秋の運転を最後にコロナや老朽化で正式に廃止となった「SL北びわこ号」。この知らせを聞いたときはバンドの解散にも劣らない衝撃で、地元滋賀湖北のスター列車だっただけになんとも消化不良な結末となってしまったのは記憶に新しいところ。

そんな衝撃的な結末から3ヶ月ちょっと。なんと京都鉄道博物館が「本当のラストラン」として館内を走る「スチーム号」の客車を「北びわこ号」の車両に変更して運転することに!!!
「もう見れんのかぁ」と打ちひしがれていた僕にとってはまたとない朗報と大チャンス!10月1日に行ってきた。

初代牽引機C56形160号機を先頭に青い客車が2両。日替わりのヘッドマークは青い夏仕様。現役当時とは若干異なるものの、栄光のあの頃が再現された。
ちなみに現役時代、写真、動画は何度も撮っていたが、実際乗ったのは小学校低学年頃の一度だけ。実に10数年ぶりにして、京の都の地で最後の乗車だ。

「スチーム号」は平日11時から16時の30分おきその初発便のきっぷを買った。

出発15分前、改札が開いて乗車。

レトロなボックスシートは、以前乗ったときよりかは白と青をまとった北陸線の国鉄製普通電車を思い出す。さらに、今ではなかなかお目にかかれないビン飲み物の栓抜きもそのまんま。左下の五角形にピン留めされた部分にはかつて灰皿があった跡。タバコに寛容だった時代の名残を窺える。

写真右に注目すると、JR西日本所属全車に施された「抗ウイルス抗菌処置済」のステッカーが例外なく貼られていた。このためだけなのか、それともコロナ収束後の復活のためにあらかじめやっていたのかは分からない。でも、安心材料はちゃんとしていた。

11時ちょうど、ファンファーレの如く、汽笛を一発鳴らしてゆっくり後ろ向きに発車。車内放送では寝台特急など国鉄の客車でお馴染みだった「ハイケンスのセレナーデ」のチャイムが使用された。生音は人生で初めてでブルートレインを経験できなかった僕にとってはまたとない機会で、嬉しかった。
だいたい自転車ぐらいのスロースピードで、車窓には京都の街並みとたくさんの線路、新幹線、新快速、特急、貨物など多ジャンルの列車が追い抜かしていく。
梅小路公園に差し掛かるとたくさんの撮り鉄や親子連れ、幼稚園か保育園の遠足の子たちと先生が撮ったり手を振ってくれていた。現役時代に僕は撮ってるそばで中から手を振ってくれている乗客に振り返していた。真逆ではあるが、そんな楽しいひとときを思い出した。

500m進んだ折り返し地点からはSLが先頭になる。少し速くはなるが、それでものんびり走ってく。ブレーキのときは「ガクン」となって、普段の電車とはまるで違うクセの強さを体感したところで元の場所に帰ってきた。

10分という短くて、夢を見ているようなノスタルジックな旅。打ちひしがれていた3ヶ月前にはまさかこんな展開があるなんて思いもしなかった。それだけにこのイベントをご近所である京都梅小路でやってくれたのは、神様がチャンスを与えてくれたような感覚だった。もうこれでさよならできるのなら僕はもう思い残すことなど何もなくて本当の意味で「ありがとう、お疲れ様でした」と心の底から思うひととき。たくさんの夢と誇り、湖北地方に希望と観光客をもたらしてくれた「北びわこ号」。
本当にあばよ!!!!いい夢見させてもらったよ!!!!

ストリートミュージシャンの投げ銭のような感覚でお気軽にどうぞ。