800字

私にとって、「800字」はとても苦しい字数だ。

高校3年生の夏休み、現代文の先生に小論文の対策と論述の対策をお願いしたとき、はじめて渡された問題が「相田みつを氏の『一生感動一生青春』の文章を読んで「本当の愛情」についてあなたの考えを800字以内で述べなさい」というものであった。

何もわからずに書いた800字は、「B」という1字で返された。

「800字でこのテーマなら、2つのことが言えたのではないか」という評価をされたが、全く理解ができなかった。

「本当の愛情」ってなんだ? それがまず、自分の中で纏まらなかった。考えさえもまとまっていないのに、まとまった文章が書けるはずがない。「文章らしきもの」がでたらめに並んだ出来合いの800字を、先生は見抜いていたのだろうと思う。

文章の書き方すらまともにわからないのに、どう書けばいいのかわかるはずがない、この先大丈夫なのだろうか。半泣きになりながら焦ったのを覚えている。

11月の願書提出が近づくにつれて、今度は800字で志望理由書を書かなければならなくなった。志望理由書なんて書いたことがないけれど、今度は、行きたい理由が明確にあった。 すべて詰め込んだ。 酷評された。

最初に書いた「志望理由書」はもはや詩的ですらである。散文的で、装飾が多くて、いかにも「私が好みそう」な文章。今見返すと、理解はできるし今でも変わってはいないけれど、これは違うんだろうなとわかる。それでも、当時の私が必死になって書いてみた文章だったのだ。

未だに800字の正解が分からない。文章がうまくなれたとも思わない。ただただ必死に言葉を紡いで、小論文や論述試験をやり過ごしただけだったようにも思える。

いま、また「800字」が必要になってきているみたいだ。今度は、今までより難しい。「正解」も「型」もない800字らしい。

思ったことや言いたいことをきちんと言葉にすること、まとめることは改めてやろうとすると難しい。どこまで文章を崩していいのか、とか誰が読むのか、とか。

今の文章が「何が言いたいのかよくわからない文章」であっても、書き続けるうちに「なんとなく言いたいことが分かる文章」になってくれればいい。そうでなくとも、何かしら引っかかるものがある文章を書けるようになりたい。

800字に収まりきらない思考を、800字でいかに伝えられるか。

800字の何倍も文章を書いて、たった1つでも自分が納得できる言葉ができたら万々歳だ。

未来の自分がどんなことを考えて、どんな文章を書くのか、楽しみだ。

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