出産当日まで ~出産事故と向き合った10年間の記録~


2011年7月初旬
出産が近くなってきた。
妊娠経過は特に指摘事項もなく、妻は赤ちゃんの事を考えて食事やサプリメントを飲んで気を使って生活していた。
一度不正出血もあったが、その後は順調に経過していた。

予定日を過ぎても陣痛が来る気配のない日が何日か続いた。
妻はむし暑い中で「赤ちゃんが早く下に降りてくるように」と、マンションの階段を登り降りしていたことを印象深く覚えている。
引っ越したばかりの新居にはまだ全ての家具が揃っておらず、床に座って食事をしながら、サッカーワールドカップ女子日本代表戦を見ていた。

日本が延長、PKの末の優勝。

女の子にサッカーをやらせてみるのもいいな、と思った。
今から振り返れば、幸せというのは、こういう何でもない日常だと思う。

それから数日経った日の夜、陣痛がきた。

自分は初めての事でかなりソワソワし、なぜか緊張していた。
ようやく赤ちゃんに会えると思う気持ちとあれだけ陣痛がくるのを待ち望んでいたはずなのに、本当に大丈夫なのかな、心配はないのかな、という不安の気持ちだったと思う。
この時は、赤ちゃんが出てくるまで何が起こるか分からない、なんて事は微塵にも思っていなかった。
無事に生まれるのが当たり前だと思っていた。

陣痛の頻度が短くなってきて、病院に言われた通りの時間間隔になってきたので、夜中になり妻とお腹の子と一緒に家の玄関から出発した。

#医療事故 #医療訴訟 #医療過誤 #脳死

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