幹部検察官とマスコミー関係が一線を越える時

検察庁では、ヒラ検事はマスコミと接触しないことになっていて(と言っても接触することもあるが)、マスコミ対応は幹部がやることになっている。地方なら次席検事以上、東京地検なら副部長以上とか。
在京や在阪で、法務省や特捜部勤務歴が長くなれば、マスコミとの付き合いも当然増える。マスコミ嫌いの人もいるが、積極的に接触する人もいる。問題は、後者の中で、えこひいきして接触するタイプだろう。情報を流し流され、相互に便利な面もあるが、注意しないと癒着にもなる。
昔の売春汚職事件では、捜査過程で情報が読売新聞に抜けてどうしようもないということで、特捜部内の一部勢力が法務省にガセネタを流したところ、読売新聞がスクープで書いてしまい、記者が名誉毀損で逮捕された。ネタ元は法務省刑事局刑事課長だった河井信太郎で、特捜のエースだったから、読売の記者がかなり食い込んでいたのだろう。癒着が生んだ悲劇で、その記者はエース記者から閑職に飛ばされ、酒に溺れて死んだ。
黒川氏の一件も、癒着が裏目に出たと言えるだろう。麻雀好きが、癒着したマスコミに声をかければ、場所が設定され、ハイヤーで送り迎えしてもらえば楽に遊べる。麻雀しながら、適当にポロポロと差し支えないネタを与えてやれば、マスコミにもメリットがある。が、そういう、歪んだいびつな関係が、こういう破局につながった。
人との付き合いは、特に地位が高くなればなるほど、歪みやいびつさを排除して、節度を持ったものにしないと、こうして思わぬところで足をすくわれかねないということだろう。文春の記事では、ネタ元が産経の関係者となっている。こういう癒着でスクープをものにすれば、同じ社内でもやっかむ者が出る。そういうことに思いが及んでいなかった黒川氏の脇が甘かったということにもなるだろう。
検事長のような認証官までなると、公証人の口は紹介してもらえない。昔は、大蔵当局が、そういう退官する認証官に顧問先を5件くらい紹介してくれて、銀座あたりで事務所開いて、その経費と最低限の生活費くらいは出たのが、1990年代後半の大蔵接待汚職を機に、それはなくなったと言われている。
黒川氏の場合、ダーティーなイメージが強くなりすぎて、弁護士になった後(登録の際になんだかんだと言われそうな気もするが登録はできるだろう)、大会社とかは、顧問とか社外役員頼むのに尻込みしそうな気はする。菅官房長官がなんとかしてくれるのかもしれないが、一介の弁護士になり、大物検察OBにも不興をかっている黒川氏の面倒を、どこまで見てくれるだろうか。結構、厳しいものがあるように思う。
2月に定年で辞めていればこんなことにはならなかった、と言えばそれまでだが、ただ、自分の経験に照らしても、人は時に思い切って何かやってみたいと思うことがある。黒川氏の場合、官邸サイドの誘いに乗って定年延長、検事総長へと思い切ったのだろうけど、無理が裏目に出てしまった。自分とは全くテイストが異なる党から出馬しようとして頓挫した自分もあまり他人のことは言えないが。

                              以上

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落合洋司
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