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『習得への情熱―チェスから武術へ―:上達するための、僕の意識的学習法』

書籍情報

かつてチェスの“神童"と呼ばれ、長じて卓越した武術家(太極拳推手の世界選手権覇者にして、黒帯の柔術家)となった著者が、トップクラスの競技者になるためのart of learning(習得の技法)を語る。技能を倦まず開墾し続け、競技者としては千人に一人、あるいはそれ以上の領域を目指す、「超」能動的な学習術である。

優れた競技者になるための内的技法は競技の種類によらず驚くほど共通していると著者は言う。「インスピレーションを得るための公式や型紙は存在しない。だけど、それを得る自分なりの方法を発見するために辿るべきプロセスならある」(第18章)という表現に象徴されるように、鍵となるプロセスを意識的に辿ることが、より高い集中力、より高いパフォーマンスレベルでの学習につながっていく。チェスを武術に、武術をチェスに翻訳できるこの著者ならではの離れ業を用いて、「数を忘れるための数」「より小さな円を描く」「引き金を構築する」といった上達の足掛かりとなるプロセスが、印象深く描出されている。

著者が他ジャンルのトップアスリートやそのメンタル・トレーナーから授けられた洞察も、ここには注がれている。本書が提示する学びへの開かれたアプローチ、学ぶ喜びについての衒いのない、ひたむきな語りは、読む者に自らの可能性を顧みさせる力をもっている。

上記リンク先より

なぜ読んだか

もともとこの本の存在は知っていて、ずっと読んでみたいと思っていたのでこのタイミングで買って読んでみることにした。

記憶に残ったこと

著者の言語化力

著者はもともとチェスの王者であり、そこから太極拳でも世界王者になる。そして、通常言語化が難しい心理的な動き、身体的な感覚の変化といったようなものの言語化を試みている。そしてそれは実際にかなり洗練された形で文章に落とし込まれている。著者のこの言語化から逃げずに落とし込んでいくことで、原理原則を確立し再現性を作ろうとしていることがわかる。

単純にアスリートの本としても面白い

後半になるとだんだんチェスよりもより太極拳の試合のシーンの描写が増える。これもまた面白い。少し『怪物に出会った日』で読んだものと似ている。通常、試合をしている本人でしか感じ得ないようなものを言葉で表現をすることにトライしていて、私たちはその一部を擬似的に得ることができる。

仙人のような観点

著者の幼少期からの執筆当時までの様子が描かれる。その中で著者の精神的な成長が凄まじく、もはや仙人のようにも思われる。怒りや怖れといったものから隠れたり、それを隠そうとするのではなく、それをうけとめて逆手にとって自分のチャンスとして捉える。またはカウンターのチャンスとして捉える。言うは易く行うは難し。
なんかこれは『反脆弱性』の概念だなと思った。

所感

本自体は面白かった。
ただ、今自分がそのレベルで物事を突き詰めている局面ではなく、どこか自分事化しきれなかった。これは読むタイミングによって、得られる学びは全然違う気がする。また何かを極めることがこの先あれば、ぜひ読み返してみたい。

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