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Lucky -ハリー・ディーン・スタントンの遺作-

Lucky

監督:ジョン・キャロル・リンチ
脚本: ローガン・スパークス ドラゴ・スモンジャ
出演:ハリー・ディーン・スタントン/デヴィッド・リンチ

https://uplink.co.jp/lucky/#intro

 ハリー・ディーン・スタントンの遺作になった作品ですが、なんとデヴィッド・リンチが出ていることに驚き。リンチ先生が出演されているので、さぞ気分の悪い(いい意味)映画化と思いきや、めちゃめちゃ美しいお話だったので感想を。

●あらすじ

 ハリー・ディーン・スタントンは、あー言えばこう言う、周囲の意見を聞かない偏屈なじいさんの主人公、Luckyを演じている。
 

 映画は、そのじいさんの日課から始まる。朝起きると、タンクトップのまま、ストレッチ・筋トレ、歯磨きをし、着替えて、テンガロンハットを被り、出かける。近所の行きつけのカフェに行き、店長に対して、「おはよう、Nothing(ろくでなし)」とあいさつ。

 そこで彼はミルク9、コーヒー1、砂糖大量のコーヒー牛乳的な飲み物を飲み、一人クロスワードパズルを解く。
 

 家に帰る途中には、大きな声で庭に向かってCuntと叫び、LGBTの若者には怪訝な顔をし、周りたばこをやめろと言われてもやめる気ゼロ。そんな感じで、周囲もこんな人というまなざしの元、ある勝手な感じで健康的に生きている。

 その彼が突然、倒れる。

 なんとか自ら医者に出向くと、原因は不明。体は健康的だ、たばこも逆にやめる必要はない。老化で倒れたんだよ。と言われる。すると、Luckyは突然、自らの死を意識することになり、周囲に対して、感情をぶつけることになる。

 ●感想

 この映画、死とどうやって向き合うのか。生きることがなんのか。という主題がある。


 そして、“Nothing”という言葉がささる。【ろくでなし】というような言葉の使われ方をしていた冒頭から、倒れたLuckyは、自らの死を意識することで、恐怖を感じ、人生をNothing【からっぽ/何もない】という言葉で諦めていくようになる。
 例えば、死を意識したLuckyがカフェで店長に、12・13の頃に突然不安になり、暗闇以外、Nothingに感じて恐ろしくなったことを思い出したと語る。

 

 死に対する恐怖はだれでもあるが、もともと人生はからっぽである。人は生まれて誰もが死を迎え、その個人は死を迎える際には何も得ることはない。結局はNothingである。

 けれども、意味がないわけではない。

 周りに対しては何かできる。未来に対しては何かができる。Luckyはそう感じていったのだろう。

 偏屈なじいさんは、不器用に周囲と溶け込み、おそらく自らが嫌ってきただろう、非白人の人種と触れ合う。そして終盤。彼は、この映画で初めて周りを笑顔にさせ、喝采を浴び、そして喜びを感じる。そのシーンは、Nothingだけど意味がある瞬間が確実にそこにあり、とっても美しい。

 ラストに、Luckyはハワード(リンチ先生)含めて、Nothingに対してどう接するか問われる。彼はこう答える。“Smile”と

【人生はNothingである、でもSmileをする。】

 Laughじゃなく、Smile。微笑みかけるのだ。


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