ソーラーパネルが産業廃棄物になる日
こんばんは、いづつです。環境関連、3投稿目です。
親戚に発電や送電関連の仕事をしている人がいまして、話をしていたら太陽光発電のブームに大いに不満があるという話題に。昔エネルギー変換の勉強をしていた私の感覚ともだいぶ近かったので、その話を書きます。
■環境のことなんか誰も考えていない
太陽光発電だってビジネスなので当たり前ではあるのですが、これをやるかどうかは所詮儲かるかどうかが判断基準であって、地球のために何かしたいなんて人は皆無です。これについて今更残念がることはありません。以前の記事にも書いた通り、ソーラーパネルを発注した時点でCO2は前払いされており、トータルで見て非エコが確定しています。
本当に残念なのは、無責任な発電事業者が乱立すること。ソーラーパネルの設置場所として森林や田畑を切り崩しまくったおかげで、生態系が崩れたり、自然災害に発展したり、景観が損なわれたと近隣住民に叱られたりと、前兆含めすでにいろいろと問題になっているニュースをちらほら見るようになりました。最近読んだのはこの話。
植物を含む地表に大きな加工を加える行動は、巡り巡って「何が」起こるか予想が難しいにしても、「何か」起こることは容易に予想できるもので、その何かに誠実に応じる気がない人は即刻地球上からご退場を願いたいところです。太陽光ビジネスの事業保険はこのへんカバーしているのでしょうか。
■FIT開始から10年、順調ですか
すでにニュースになっている件はいいとして、私はまだ表面化していない問題について懸念していることを書いておきます。それは特に、ソーラーパネルの寿命を楽観視している方々に対して。
パネルの法定耐用年数は17年ですが、メーカーたちは30年や40年もつとか言って営業します。発電能力をもつならば生きていると解釈すれば正しいのですけど、発電効率は新品を最大にして年々落ちていきますし、パネル1枚ずつ不慮の故障によって機能を失っていきます。なので、20年くらいかけて固定価格買取制度(FIT)も利用して利益を出そうと考えていても、そう簡単にはいかず、FIT開始から10年くらい経ちますが「順調です」と答える人はほぼいない。
■廃棄物の押し付け合い
もともとのソーラー発電計画に、寿命を迎えたソーラーパネルの廃棄費用を考慮していない事業者もいます。当初は考慮していたとしても、ここまで採算が悪くて廃棄費用が捻出できなそうでどうしよう状態になっているところもあるはず。念のため書いておきますが、FITはパネルの廃棄まで考慮した上での買取価格設定ですから、これ以上行政におねだりしてはいけません。あと10年や20年後くらいから廃棄が始まるのでしょうけど、絶対さぼらないでくださいね。
ずる賢い業者は、予測しづらいパネルの寿命や面倒くさい廃棄処理のリスクコストを避けるために、すでに狡猾なやり方を編み出しています。例えば住宅やオフィスビルなどの所有者に、太陽光発電したいから屋上を貸してくれと話を持ちかけます。そこで、20年後はパネルをそのまま無償で差し上げますという条件を提示するのです。建物の所有者はパネルをもらったあと、それで発電したぶんは自分で使うもよし、他所に売るもよしとおいしい話に聞こえますが、当然これは罠。太陽光発電の事業者からしてみれば、パネルが老朽化して効率が悪くなる頃に手放して廃棄の責任も負わないという逃げ切り作戦です。
■ちゃんと廃棄されない場合に起こりうる公害
太陽光を電力に変換するソーラーパネルの中では化学反応が起こっています。あまり正確な表現ではないので私は好きではないのですが、太陽電池という別名どおり電池に似ていて、いろいろな重金属が含まれているものです。みなさんご家庭で電池を捨てる時は不燃ごみではなくそれ専用の分別があって、回収日が少ないから仕方なくスーパーの回収箱に捨てに行きますよね。環境や人体に有害な成分が多数含まれているので、専用の処理方法が必要なのです。
このソーラーパネル、廃棄まで考えて所有している人が少ないとなると、絶対に放ったらかす、あるいは不法投棄する輩が現れます。というか、すでに現れています。すでにここ数年で日本各所が見舞われた大雨に伴う土砂災害で使い物にならなくなったパネルが現れ、これが放置状態。40年持つと営業されただけあってさすがに物理的に損傷していない限りは10年くらいで中の有害物質が流出することはそうそうないですが、言い換えてしまえば「そこにカドミウムを含む薬品のボトルが落ちている。一応封はされているけど」みたいなもの。遅かれ早かれ時間が経てば外装や容器が劣化して穴が開くのは当たり前で、当然カドミウムが流出すれば河川が汚染されてかつてのイタイイタイ病の再現にすらなりかねないのです。
ソーラーパネルは、自然に還りません。私はFIT成立後ずっと「よく未来の産廃を買う気になりますね」と言い続けております。みなさん、自宅の屋根にパネルつけるか考えているなら、どうかご慎重に。
Yoshiyuki Izutsu
https://www.linkedin.com/in/yizutsu/
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