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【#10品川区3/16】新規事業創出を全力アシスト! しながわ新規事業創出プログラム

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しながわ新規事業創出プログラム2022とは

このプログラムは、品川区に所在する4つの企業(永楽電気、勝亦電機製作所、伸光製作所、吉村株式会社)の製造技術や多様な経営資源と、国内のスタートアップが持つ革新的なアイデアや新技術を活用し、新ビジネスの開発や既存事業のイノベーションを促進することを目指すというもの。

品川区は、五反田・大崎エリアにITスタートアップが集まっており、「五反田バレー」と称されている。このプログラムは、地域の主要な産業である中小製造業の成長と支援を目的とし、品川区内の製造業者と五反田バレーや他の国内スタートアップとのオープンイノベーションを促進することで、地域産業の活性化に貢献することを目指す。

支援内容

(1)伴走型支援
プロジェクトチーム組成、事業課題の整理、事業開発テーマの選定、事業計画のブラッシュアップ等、事業共創支援の専門スタッフによる伴走支援を受けることが可能。
(2)実証実験実施支援
スタートアップ企業と実験的に事業アイデアや技術の検証を行う際の実証験の費用などについて一部サポートを受けることが可能。

採択企業4社の実施報告レポート

永楽電気株式会社

●会社概要

1950年(昭和25年)創業。鉄道関係の発変電機器・情報通信機器の設計・製作・工事を担っている。「実直でユニーク」「アイデアをかたちに」した製品・サービスで鉄道インフラに貢献。

●参加目的

鉄道の放送・通信設備の進化による鉄道利用体験の向上、新たな事業可能性の模索、自社業務のDX化に挑戦するため。

●実証実験概要・成果

①協業先:MAIキャピタル株式会社

動画を用いた金具測定手法およびその精度の検証を行った。今後は、遅延時間の実証確認を通じて、システムの効果的な運用方法を明らかにすることを目指す。

②協業先:Hmcomm株式会社

変電所内で発生する音をAIによる異音検知技術を利用して異常を検出する手法の実現性を確認した。
今後は変電所保守作業の自動化と予防保全の実現を目指す。

③協業先:ユニロボット株式会社

駅ホームにおける情報発信の多様化を図るため、放送内容をスマートフォンに表示する際の変換精度および遅延時間の実証確認を行なった。
今後はこれらの技術を使用し、旅客の利便性向上や情報提供の効率化に資することを目指す。

xGメディア事務局コメント
永楽電気株式会社は鉄道インフラにおける発変電機器・情報通信機器の分野での実績があります。今後、都市化が進むことやインフラの整備が求められる地域が増えることを考慮すると、市場規模は拡大する可能性があると感じました。また、自社業務のDX化や協業先との共同研究を通じて、新たな事業領域も開拓できるでしょう。特に鉄道放送・通信設備の進化や変電所保守作業の自動化、旅客の利便性向上など、現代社会のニーズに応える技術開発に取り組むことで、市場規模の拡大が期待できると考えられます。そのため、プログラム参加は合理的であると感じました。

株式会社勝亦電機製作所

●会社概要

配電盤・制御盤・分電盤・監視盤とそれらの組込ソフトの設計・製造・現地調整・据付工事・改造工事・保守点検を行う「受配電・監視・制御の総合配電盤メーカー」

●参加目的

「配電盤類」×「テクノロジー」で、新しい企業価値を創るため

●実証実験概要・成果

①協業先:AItoAir株式会社

配電盤類の異常(故障)が停電や火災を引き起こす可能性があるという問題を解決するために、「盤の状態監視・異常予測」をテーマに取り組んだ。現行の警報監視システムでは、異常が発生した後での通知が主であり、事前の予測や対策が困難である。そこで、AI技術を活用して、異常発生前の予測が可能な手法を開発することを目指した。

本研究の実証実験では、配電盤の異常(散障)の原因の1つとして、「結露」をテーマとした。結露は、配電盤内の機器や接続部に悪影響を与える可能性があるため、この要因を取り上げることは重要である。実験では、AIによる結露の検出および予測を試みたが、現状の技術では精度が不十分であり、実用化には至らない結果となった。

今後の展望として、長期間をかけて最適なアルゴリズムの開発を行い、配電盤の異常予測技術を市販化することを目指す。新たなアルゴリズムを開発することにより、事前に配電盤の異常を検知・予測することができれば、停電や火災のリスクを低減し、安全性を向上させることを目指す。

②協業先:ソナス株式会社

近年、配電盤から監視情報を得る場合において、通線工事が必要となり、敷設ルートが無い場合や通線工事期間が取れない場合など、様々な問題が生じている。これらの課題を無線技術を用いた通信で解決することが求められており、それらの課題解決のために実証実験を行なった。

本実験は監視・制御の信号線を無線化することにより、配電盤からの監視情報を監視所で得る際のコスト削減や導入の敷居を下げる効果を検証することを目的としている。そのため、一般的な機器の状態計測監視などを対象として無線技術の適用可能性を調査した。

実験結果は、無線技術の導入により電気工事を減らすことができるため、監視システムの導入コスト削減や導入するための敷居を下げる効果が見込めることが確認できた。さらに、各種盤の移設や変更が発生した際の更新コストや作業量の削減も期待できることが明らかになった。

xGメディア事務局コメント
株式会社勝亦電機製作所の取り組みは、エネルギーインフラの安全性向上や効率化に寄与する可能性があり、将来的な市場成長が期待できると感じました。ただ、技術開発の進捗状況や実用化に向けた課題が明確になっているため、技術の成熟度や市場投入時期を考える必要があると感じました。また、参加者間での情報共有やノウハウの蓄積が、今後の技術開発や市場展開において重要な要素となると考えられます。

株式会社伸光製作所

●会社概要

樹脂精密切削加工を半世紀以上行っている。各種コネクタ・電気通信機の絶縁部品製造・医療機器部品・半導体機器部品等を少数から量産まで加工が出可能。超微細切削加工得意を得意とする。

●参加目的

製造工程の自動化と樹脂部品を使ったハードウェアの開発支援に挑戦するため。

●実証実験概要・成果

①協業先:株式会社piland

技術継承の現状と課題において、各部門においてプロフェッショナルの人員不足が問題となっている。この問題に対処するために、ARアプリを用いた技術継承方法を提案する。本研究では、新人や未経験者がARマニュアルを利用することで、経験者と同等の作業ができるかどうかを検証するための実験を行った。また、紙のマニュアルとの比較や、年代別の対応力と適応能力に関する調査も実施した。

実験結果から、AR内に動画を配置し、その動画に基づいて操作させる方法が有望であることが示された。特に、「Dive」というARマニュアルは、扱いやすさや独特の構想性を持ち、使用者が楽しみながら作業を行えることが判明した。しかしながら、動画の再生速度や視認性に関する課題が残っている。

今後の展望として、ARの利点を最大限に活かすために新しい実験ケースを模索するとともに、動画ビューワー機能の改善に取り組む予定である。さらに、iPadからARグラスへのデバイス変更を検討し、「両手を使う」マニュアル作りに努めることが望まれる。また、空間認識能力を活かした実験シナリオの開発を通じて、技術継承におけるARアプリの効果的な活用方法をさらに追求していく予定である。

②協業先:エピソテック株式会社

従来の見積もり業務では、複数の部署で情報を回す必要があり、業務中に手を止めることが多く、効率的でない状況が問題となっていた。現行の見積もり業務における課題を解決するために、AIのOCR技術を用いた自動見積りシステムの開発に取り組んだ。

実験内容として、図面上の文字認識技術を活用し、一般的な図面から特徴的な図面までを選定し、OCRの精度を検証した。その検証結果をもとに、課題を抽出し分析を行った。実験の結果、手書きを含めた文字の認識は十分であることが確認できた。ただし、画質が極端に低いものやサイズが小さいもの、さらには文字以外の記号などが認識されにくい傾向が見られた。

この結果から、文字以外の記号等の意味を理解させ、情報を整理する機能が必要であることが明らかになった。今後の展望として、一般的な図面に用いられる記号を学習・識別させ、システム化を目指すことで、AIと自動見積りシステムの親和性を深掘りし、社内での実装を検討していくことが考えられる。この取り組みにより、見積もり業務の効率化が期待され、業務プロセスの改善に貢献することを目指す。

xGメディア事務局コメント
具体的な実験結果や課題分析が示され、非常に有益な内容であったと感じました。特に、AR技術を活用した技術継承やAI技術を用いた自動見積もりシステムは、今後の製造業界において大きなインパクトを与えると考えられます。ただし、実際のシステム導入に向けては、機能改善や信頼性向上が重要であることから、今後の研究開発に期待が寄せられます。
また、報告会では具体的な実験内容や結果が詳細に紹介されていたため、各自の業界や企業に応用可能な知識やヒントを得ることができました。今後の報告会では、さらに多様な業界や企業に対応できるような取り組みやアイデアを提案し、来年のプログラム参加者にもインスピレーションを与えられるような内容にしていくことが重要だと感じました。

株式会社吉村

●会社概要

食品包装資材の企画、製造、販売(グラビア印刷・軟包装デジタル印刷・ラミネート加工・スリット加工・製袋加工・刷込後加工)及び茶器・食品等の企画・仕入れ・製造・販売行う。

●参加目的

包装資材の新たな可能性の模索および資源活用、お茶をテーマとした新事業開発、自社&顧客のDX化に挑戦するため。

●実証実験概要・成果

①協業先:MAIキャピタル株式会社

お茶を通じて地域社会や人々の幸せに貢献し、自社と顧客のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進することを目標としている。

実験においては、シルバー人材センター、介護マーケット、精神病院マーケットにおけるフィールドスタディが行った。精神病院においては、居住患者が多く時間とお金があるケースが多いため、リーフティーカップの新しいユースケースの特定が可能であると判断された。

実験結果として、販売先などの紹介を受けたが、期間中に課題の抽出から商品開発までを行うことはできなかった。

今後のは、より時間をかけて課題の抽出から商品開発までを進めることが計画している。これにより、包装資材のポテンシャルを最大限に活かした環境に配慮した商品開発を実現し、お茶を通じて地域社会への貢献を目指す。さらに、自社と顧客のデジタル化を進めることによって、業務効率化と市場拡大を目指す。

②協業先:TZEN株式会社

包装資材の持つポテンシャルを最大限に活用し、地球環境に優しい包装資材の生産・利用サイクルを実現することが現状の課題である。
この課題に対処するために、アルミのスティック型ティーバッグである「グリーンティースティック」を開発し、簡単に美味しい日本茶を楽しむことができる新たな楽しみ方として、「モバイル緑茶」と「スマート緑茶」を提案した。しかし、実験の結果、グリーンティースティックの製造が困難であることが明らかとなった。具体的には、製造した実績を確認できなかったことや、弊社の小ロットでは生産が難しいことが判明した。また、材料の剪定を行っている間にプログラムの期間が終わってしまった。

プロジェクト期間は終了したが今後も取り組みは継続していく予定。時間をかけて他の補助金制度などを利用しながら、開発を進めていきたい。

xGメディア事務局コメント
同社が取り組んだ包装資材の新たな可能性の模索や資源活用、お茶をテーマとした新事業開発、自社&顧客のDX化への挑戦は、
大変面白い取り組みでした。
特に、MAIキャピタル株式会社との協業による地域社会や人々の幸せへの貢献やデジタルトランスフォーメーションの推進は、将来の市場展開や業務効率化に対する意義が大きいと感じました。また、精神病院やシルバー人材センターなどでのフィールドスタディを通じて、リーフティーカップの新しいユースケースの特定に挑戦した点も、新たな市場ニーズを捉える視点として有益です。
一方、TZEN株式会社との協業では、地球環境に優しい包装資材の生産・利用サイクル実現に向けて、「グリーンティースティック」の開発に取り組んだものの、製造上の困難や時間的制約により、開発が難航した経験も貴重な情報となります。こうした課題に対処しながら、プロジェクトを進める柔軟性と継続的な取り組みが重要であることを感じさせられました。

xGメディアまとめ

しながわ新規事業創出プログラムは、五反田・大崎地区に集まるITスタートアップという強力なリソースを活用し、品川区内の産業活性化に貢献する点も素晴らしいと感じました。これにより、品川区のものづくり産業とITスタートアップが協力して新たな産業創造につながるのではと思います。

ただ、今回の報告会では技術開発の成果と課題が詳しく述べられましたが、ビジネスモデルや収益化戦略については不十分でした。来年のプログラムでは、技術開発だけでなく事業戦略や市場戦略、収益化方法についても議論することが重要です。Q&Aやディスカッションを通じて多様な視点を取り入れることで、より良いアイデアや改善策が生まれると考えられます。次年度は、参加者同士の交流が活発に行われ、互いに学び合いながら技術開発やビジネスが進化すると尚良いプログラムになるのではないでしょうか。

全体的に見て、『しながわ新規事業創出(事業共創)プログラム2022』は、地域企業とスタートアップが協力して新規事業を創出するという点で、非常に魅力的なイベントだと感じました。次年度も開催されるとのことで興味のある方は参加してみてはいかがでしょうか。


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