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【僕ヤバ感想】Karte.91 僕らはゴールした

 タイトルは何重の意味なんだろう。バスケットのゴール。学年終了というゴール。そして二人の関係。
  
 クラス替え。当事者だった生徒の頃は「誰と一緒になるかなー?担任の先生誰になるかなー?」みたいに、あくまで自分中心でドキドキしてたけど、そんな時代からはるか遠くに来た今、落ち着いて考えると、「どうしたら学年運営がうまくいくか」に先生たちは主眼をおいてクラス分けしてたんだろうな、と思う。当たり前だ。
 仲が良いグループと一言で言っても、「この子達を一緒にしておけば、学校が好きそうでない○○も登校しやすいだろう」というグループもあるだろうし、「この子達を一緒にしたら騒がしくてクラスが落ち着かなくなる」というグループもあって、事情はそれぞれだろうしね。
 だからおとなになった今、ばやしこの行動は先生には意図もバレバレでお見通しなのだろうと思う。思うけどばやしこやりすぎ。ちょっと精神的に稚すぎないか。お芝居とわかってても傷ついてしまう山田が素直で可愛い。可愛いけど女優として大丈夫かな。

 足立くんや神崎くんが市川とライン交換している風景がいいね。前田先生も嬉しいだろう。市川からは言い出せないというのがリアル。2年生が終わっても、クラスが解散になっても、まだ中学校生活は続いていくし、つながりを保とうと思えば保てるのだ。

 市川の矩形の吹き出し「僕らは狭い世界に行きている」。狭い世界、と自嘲気味でも、その世界を愛おしんでいたことがわかる。そしてそんな気持ちは、友達とも離れて一人残っていた山田も持っていて、市川の気持ちも見透かしたのだろう。
 だって修了式の日、もし市川の存在がなかったら、山田はばやしこ達と打ち上げしそうだもん。それをやらないで一人体育館に残って市川に声をかけるのは、山田なりの、2年生最後の区切りをつけたかったのかな。

 学年最後の日、図書室じゃなくて体育館で待ち合わせるのね。図書室だと勝負できないからかな。個人的には最近描かれない図書室の二人の風景が恋しい。見たいな。

 でも考えてみれば、(二人が気づいているかはともかく)バスケットボールって二人の関係の変化に大きな役割を持っている。
 バスケットボールで怪我をしたときに市川は自分の気持ちを自覚し、その怪我のフォローで山田は市川に心の焦点を完全にあてたし(←完全に私の解釈。このバスケットボール事件?前にも山田は市川をぼんやりとは認識していたけれど、ティッシュをさり気なくおいてくれることで完全にフォーカスを絞った印象。で、多分山田はこのとき、市川を好きになっていたのだろうけど、自分では気づいてない。どころか「市川は私のこと好きなんだろうな」ぐらいの、他人事のように思っていたフシがある)。

 あれ?中学校のときのバスケットゴールって普通より低いんだっけ?(記憶が定かでない)運動神経なさそうな山田がジャンプしてゴールリングにリーチしそうだよ。そして山田は「私はディフェンス」と言い張ってるけど、バスケットボールって全員オフェンスにもディフェンスにも参加するイメージだけど違うのか?
 それにしても市川も割ときれいなシュートフォームに見える。実は体力ないだけで運動神経がいいのかもしれない。

 山田はどうしても市川に勝ちたかったのか。市川のほうが覚悟が決まっていた感じだけど、山田も市川の心を読めるわけでもなく、読者としてはちょっともったいない気持ち。
 しかし呼び方を変える、って付き合っている空気感だけど、告白飛ばして呼び方を変えてくるのか。山田にとっては勇気を振り絞ったのでは。
 おねえが「京ちゃん」と呼ぶから、山田は自分だけの呼び方を探していたのか。あるいはLINEの名前欄を見ながらどきどきしていたのか。かわいいな。
 でも足立や神埼のLINEの友達欄にも市川は「きょう」って表示されるんだぞ。足立たちが市川を「きょう」って呼び出したらどうしよう。

 前田先生に学校から追い立てられる?二人。焦ったのかバラバラに帰ってしまうけど、そこから山田は市川の深読みできる言い訳を聞けたから嬉しく帰るのか。それともどこかで合流してごはんたべるのか。市川おごるのもやぶさかではなさそうだったし(山田の食べる量を中学生のお小遣いでカバーできるかな)。前田先生もお疲れさまでした。

 これから春休みになるのだろう。山田はロケに行くのだろうし、市川は多分塾の春期講習。もしかしたら今回のタイトル、二人の関係が一つの区切りを見せて、この後道が違っていくだろう二人の、新しい関係を模索していくことになることを意味しているのかもしれない。なにかにゴールしたら、それは新しいスタートってことはよくある、人生。

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