記事まとめ ~ 銀行の「次世代金融サービス」の現在地
出典
<https://www.sbbit.jp/article/fj/54205>
背景
・デジタルバンキングとは、金融デジタル技術(フィンテック)により、365日24時間、企業システムやモバイルアプリなどで振込や送金などの銀行業務操作を行う銀行業務処理のことで、銀行以外の事業者も業務を行う点が従来と異なる
・デジタルバンキングを提供する事業者は「デジタルバンク」と呼ばれる。ネオバンクやチャレンジャー・バンクといった新たなスタイルの事業者が登場している
※ ネオバンクとは「銀行業務ライセンスを取得せず、既存の銀行と提携することでオンライン上でさまざまな金融サービスを提供するスタートアップのフィンテック企業」のこと
※ チャレンジャー・バンクとは「銀行業務ライセンスを取得し、デジタル基盤の上でスマホアプリやBaaSを中心に金融サービスを展開する新しい事業者」のことを指す
・現在では、365日24時間のリアルタイムで取引可能な「ネット経済」のバリューチェーンに対応した金融サービスが求められている
これに従来タイプの伝統的な銀行が対応するための手法とは何か?
→ それは、パラダイムシフトによって喪失する「3点」、具体的には支店への来店がメインだった「顧客接点」、手数料無料の圧力を受ける「役務収益」、ネット展開による「地域概念」の喪失をデジタルバンキングへの変貌によって克服することが求められているのである
・まずシステム面では「デジタル基盤の導入」が必須となる
・このデジタル化には「基本的なデジタル化」と「戦略的なデジタル化」の2種類を意識する必要がある
・「基本的なデジタル化」とは支店網やコンタクトセンターなどにおいてデジタル技術を活用することと、RPAなども活用して顧客に対する業務や作業手順を「デジタル・ヒューマン化」すること
・「戦略的なデジタル化」とは顧客接点を確保・強化するDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進することと、自行のAPIによる戦略的エコシステムを構築して他行差別化できる役務利益を創出すること、地域概念を再構築するデジタルイノベーションの実現を目指すこと
デジタルバンキングのプレイヤーたち
・デジタルバンキングを提供するプレイヤーには、ネオバンク、チャレンジャー・バンク、そして従来タイプの銀行(伝統的な金融機関)がある
・GAFAは自ら銀行免許を取得しないものの、着々とデジタルバンキングへの布石を打っている
・グーグル(Googleは)新しいGoogle PayとしてPlex accountを発表。すでに米国でCitiグループを中心に11行とデジタルバンキング・サービスを開始し始めた
・ゴールドマン・サックスはMarcusを利用してアップル(Apple)にクレジットカード決済・無担保ローンを、アマゾン(Amazon)に出店社への限度額100万ドルまでの融資提供を行っている
・フェイスブック(Facebook)は問題を引き起こしたLibraを改訂しDiemによってNovi Financialによるデジタル・ウォレットを使ったチャット・バンキングを世界展開しようとしている。
※ 米国のゴールドマンサックスのMarcusは、BaaS事業者に該当
※ BaaSは「Banking as a Service(サービスとしての銀行業務)」の意味であり、為替、預金、融資などの銀行業務をサービスとして提供する (日本では住信SBIネット銀行のNEOBANK、新生銀行のBANKITなどが例)
※ BaaSを利用することで、銀行業務ライセンスを持たない事業者でも自社のブランドで金融サービスを展開できる。実際に、BaaSを利用しているネオバンクも多い。また、自社のアプリにBaaSで金融サービス機能を追加して「スーパーアプリ」を提供することも可能 (例 - Affirm?)
※ 福岡銀行がネオバンク「iBankマーケティング(Wallet+)」とチャレンジャー・バンク「みんなの銀行」の双方を設立している。このように、従来のタイプの銀行がデジタルバンク化する流れも起きている
国内外のデジタルバンキング事例
【北國銀行(デジタルバンク化)】
・すべてのシステムのデジタル基盤化によるクラウド移行(MS Azure)を進めている
・サブシステムの統合や内製開発体制を構築するなどの組織変革によって、銀行そのものをデジタルで根本的に変えようとしている
・これにより大幅なコスト削減と、インターネットバンキング利用者の大幅な増加を実現している
・最終的には地域を巻き込んだデータ連携のエコシステムの構築や、構築したシステムをBaaSとして提供することも視野に入れているという
【りそなホールディングス(デジタルバンク化)】
・同グループのリテールバンキンググループでは、実店舗に来店しない顧客に対し、デジタルチャネルとしてスマートフォン向けのバンキングアプリを開発した
・アプリの提供で顧客接点を増やすとともに、さまざまな銀行取引をカスタマイズ可能な機能として提供することで、20~30代のユーザーを新たに取り込むことに成功している
・収益効果は1年半ほどで平均約2倍となり、特にデビットカードの利用額は3倍に達した
・さらにホームページやコンタクトセンターも改革し、データ分析による新たなビジネスチャンスの創出にも挑戦している
【インフキュリオン・グループ(BaaS)】
・2020年3月から、ウォレットASPシステム「ウォレットステーション」を通じて、認証や決済処理等を管理するAPI基盤をBaaSとして提供している
・りそな銀行のスマホアプリとして「ウォレットステーション」を提供(UI/UXはチームラボ)すると共に、2020年3月から新生銀行のネオバンク・プラットフォームBANKITへの「ウォレットステーション」提供も行っている
・NTTデータもBaaS構想の中でインフキュリオンとの提携を発表している
「デジタルバンキング」化への課題
・システム人材の調達 - たとえば米国の銀行では、行員の約30%をシステム人材が占めている。一方、日本の銀行は約4%に過ぎない
・ベンダー対応 - 従来のホストベンダーや通信回線事業者との付き合いをクラウド事業者に変更していく必要がある
・データ・サイエンティストを確保すること
・エコシステムを構築できるかどうか
・フィンテック企業との連携
・テラー(銀行窓口係)の全面廃止や、後方事務の集約化、店舗の小売店化といった「人件費・物件費の抜本的な変革」
・SNSやチャット利用の経験のない経営者に対して、デジタル化のパラダイムシフトを理解させること
デジタルバンキングの展望
・海外ではデジタル基盤構築がパッケージとして提供され始めている
・NTTデータは、AmazonのAWS上で動作するドイツMambuのクラウド勘定系システムを日本展開に向けて取り組んでいる
・PaaSやSaaSでの展開としては、nCinoやBackBaseなどの銀行機能を提供するソフトウェアベンダーが、現在のホストコンピュータ上にAPIを活用してデジタル基盤を構築できるパッケージ提供をしている
・あるいは、「セカンダリーデジタルブランド」を立ち上げる方法もある。例、福岡銀行が立ち上げた「みんなの銀行」や、きらぼし銀行の「きらぼしデジタルバンク」
・「みんなの銀行」は独自にGCP(Googleクラウドプラットフォーム)上にコア・バンキングシステムを構築しているが、「きらぼしデジタルバンク」は韓国の新韓銀行のシステム(オンプレ + 一部AWS化)を導入する予定である
・これらデジタルバンクの狙いは、やはり今後さらに需要が高まると考えられるBaaSである
近い将来は「BaaS基盤の主権争い」に
・日本ではすでに、GMOあおぞらネット銀行や住信SBIネット銀行、ソニー銀行、新生銀行などがBaaS基盤を一般企業向けに提供している (GMOあおぞらネット銀行は、2021年3月API接続先が100社を超えたと発表している)
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